第3話 あなたが、良き自動手記人形になりますように
"May You Be an Exemplary Auto Memory Doll"
ルクリア 「すみません…!」
ローダンセ 「遅刻は二度で欠席扱いですよ」
ルクリア 「はい…」
ローダンセ 「大戦が終わり、ドールへの需要は高まる一方です」
ローダンセ 「勿論、本校へ通わずともドールになることは可能ですが、我々の目的はただのドールではなく、良きドールを育成することです」
ローダンセ 「本校卒業の証は一流の証明」
ローダンセ 「しかし、私が良きドールと認めない限りこの証は決して与えられません。覚悟は良いですか?」
ヴァイオレット 「了解しました」
ルクリア 「(ヴァイオレット・エヴァーガーデン)」
ヴァイオレット 「速度の指定がありません」
ヴァイオレット「打ちます」
ローダンセ「文法や語彙、それに多種多様な手紙の形式も含まれるのです」
ローダンセ 「ここまで。では本日の成績を発表します」
ローダンセ 「文法の成績、満点。ヴァイオレット・エヴァーガーデン。次、語彙の成績、満点。ヴァイオレット・エヴァーガーデン」
クラウディア 「お帰りヴァイオレットちゃん」
ヴァイオレット 「社長、本日の評価をローダンセ教官より預かっております」
ローダンセ 「ここまで。では本日の成績を発表します」
ローダンセ 「文法の成績、満点。ヴァイオレット・エヴァーガーデン。次、語彙の成績、満点。ヴァイオレット・エヴァーガーデン」
クラウディア 「お帰りヴァイオレットちゃん」
ヴァイオレット 「社長、本日の評価をローダンセ教官より預かっております」
クラウディア 「うん。どれどれ…?お!初日の評価は優秀だねー!」
エリカ 「社長、ホントよくあれで一緒にこの会社創立できましたね」
ローダンセ 「本日の授業は実際に手紙を代筆する訓練を行います」
ローダンセ 「貴女が気持ちを伝えたい身近な人にすれば良いのです」
カトレア 「なによ!男のクセにいつまでも!」
ベネディクト 「んだよそっちこそいつまでも!」
ヴァイオレット 「なにをしているのでしょう?」
エリカ 「あの二人、いつもあんな風に喧嘩ばかりしてるの」
エリカ 「社長、ホントよくあれで一緒にこの会社創立できましたね」
ローダンセ 「本日の授業は実際に手紙を代筆する訓練を行います」
ルクリア 「よろしくね」
ルクリア 「ね、誰宛ての手紙にする?」
ヴァイオレット 「私が手紙を書きたい相手…」
ローダンセ 「貴女が気持ちを伝えたい身近な人にすれば良いのです」
ヴァイオレット 「身近な人…宛先はクラウディア・ホッジンズ様に」
ルクリア 「クラウディア…お友達?ご家族?」
ヴァイオレット 「社長です」
ヴァイオレット 「では、"少佐よりの新たな命令はまだ届きませんでしょうか?"と付け加えて下さい」
ヴァイオレット 「社長です」
ヴァイオレット 「以上、報告終了します。ヴァイオレット・エヴァーガーデン」
ルクリア 「これで終わり?」
ヴァイオレット 「では、"少佐よりの新たな命令はまだ届きませんでしょうか?"と付け加えて下さい」
ルクリア 「あ、うん…えーっと、おに..ううん、両親宛てにするわ」
ヴァイオレット 「了解しました」
ルクリア 「えっと…お父さんお母さんに今までの事のお礼をちゃんと言えてなくて…うーん…いざ手紙にするとなるとなんか言いたい事が上手く出て来ないのね...あっ、あと一緒に行った場所のこと、行きたかった場所のこと…たくさんあり過ぎて伝え切れないね。それじゃあまた…心配しないでね。ルクリアより」
ローダンセ 「ヴァイオレット、読んでみなさい」
ヴァイオレット 「拝啓父上様、母上様。久々の手紙ですが伝達事項はありません。以前からの件に感謝を伝えていないことを懸念しております。一緒に行った場所、行きたかった場所に関して、伝えるべき情報は無し。当方は現在、鋭意努力中。状況は健康無事。問題は起きておりません。以上くれぐれも憂慮無きよう。ルクリア」
ルクリア 「あ、あの…もしかしたら私の話が抽象的過ぎたのかも…」
ローダンセ 「そういう問題ではありません」
ローダンセ 「手紙とはそもそも人の心を伝えるもの。良きドールとは人が話している言葉の中から伝えたい本当の心を掬い上げるものです」
ローダンセ 「ヴァイオレット、貴女は学科の成績も良くてタイプもとても速くて正確です。けれど貴女の代筆したものは手紙とは呼べません」
ヴァイオレット 「手紙とは…呼べない」
ルクリア 「あの!もう一度…」
ローダンセ 「今日はここまでです」
ローダンセ 「ではこの手紙はお互いの相手に必ず渡して下さい」
ルクリア 「今日は…調子が悪かっただけよ」
ヴァイオレット 「以前も同じような事を言われた事があります」
ルクリア 「そう...ねえ、この街で一番素敵な景色、教えてあげる!」
ルクリア 「ここよ」
ルクリア 「急だから気を付けて」
ルクリア 「素敵でしょ?」
ルクリア 「私は子どもの頃からずっと…この眺めが大好きなの」
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ルクリア 「じゃあ私、こっちだから、またね」
ルクリア 「ルクリアで良いわヴァイオレット」
ルクリア 「お兄ちゃん!また飲んでたの?」
スペンサー 「あ?飲んでねえ!」
「おかえり!」
スペンサー 「こいつが飲ませねえから飲んでね」
ルクリア 「お兄ちゃん!大丈夫…?」
スペンサー 「クソ…!」
ヴァイオレット 「ルクリア…」
ルクリア 「ありがとう」
クラウディア 「ヴァイオレットちゃん、手紙をくれるのは嬉しいんだけど…」
クラウディア 「なんだか報告書みたいだね」
ヴァイオレット 「教官にも…私の代筆したものは手紙とは呼べないと指摘されました...私は…良きドールになれるのでしょうか」
ルクリア 「ただいま!すぐご飯作るから…」
ルクリア 「お父さん…お母さん…」
ローダンセ 「ルクリア・モールバラ」
ルクリア 「あ…はい!」
ローダンセ 「では以上9名を今回の卒業者とします。皆さんが良きドールになりますように」
クラウディア 「そうか…残念だったね」
ヴァイオレット 「申し訳ございません…」
クラウディア 「大丈夫…卒業できなくてもドールになれない訳じゃないし」
ヴァイオレット 「ですが…それではなんの為に学校に通ったのでしょうか?」
ヴァイオレット 「確かに卒業が全てではありませんが、人が話している言葉の中から伝えたい心を掬い上げられないのではドールの意味が…ありません」
ルクリア 「やっぱりここに来ると思った」
ルクリア 「うーん、ここに来ればまた貴女に会えるかなって思って」
ルクリア 「ねえヴァイオレット、少佐って誰?貴女、毎回手紙の最後に“少佐からの手紙はまだですか?”って付けてるじゃない?本当に手紙を書きたい相手はその人じゃないの?」
ルクリア 「ねえヴァイオレット、少佐って誰?貴女、毎回手紙の最後に“少佐からの手紙はまだですか?”って付けてるじゃない?本当に手紙を書きたい相手はその人じゃないの?」
ヴァイオレット 「私はまだ、あの方が言って下さった言葉の意味さえも…理解していないのですから」
ルクリア 「実はね、私の両親死んじゃったの。残った家族はお兄ちゃんだけ…」
ルクリア 「私、お兄ちゃんになにを言えば良いか…分からないの」
ルクリア 「戦争が始まって、お兄ちゃんは兵士として戦いに出たわ。でも、配備された西部戦線は殆ど戦闘がない所だった」
ルクリア 「戦いはいつもどこか離れた場所で起きていて…私たちはずっと他人事の様に戦争を感じていたの」
ルクリア 「私、お兄ちゃんになにを言えば良いか…分からないの」
ルクリア 「戦争が始まって、お兄ちゃんは兵士として戦いに出たわ。でも、配備された西部戦線は殆ど戦闘がない所だった」
ルクリア 「戦いはいつもどこか離れた場所で起きていて…私たちはずっと他人事の様に戦争を感じていたの」
ルクリア 「でも、お父さんとお母さんが…貿易の仕事でヘルネに行った時」
ヴァイオレット 「西部戦線が突破されたのですね」
ルクリア 「…お父さんもお母さんも、遺品すら見付からなかった。そして戦争が終わったわ…」
ルクリア 「お兄ちゃんは無事に帰ってきた。私はお兄ちゃんだけでも生きてくれた事を喜びたかった…」
ルクリア「本当は...本当はただ…生きててくれるだけで嬉しいの」
ヴァイオレット「貴女の伝えたい気持ちを手紙にしましょう」
ルクリア「でも…お兄ちゃんに伝えようって考えるとダメなの」
ヴァイオレット 「良きドールとは」
ヴァイオレット 「任務…いえ、課題です」
ヴァイオレット 「ルクリアから…」
スペンサー 「お兄ちゃん」
スペンサー 「生きて…来てくれて」
スペンサー 「嬉しいの…」
スペンサー 「…ありがとう」
ルクリア 「ヴァイオレット!」
ヴァイオレット 「ルクリア…どうしたのですか?」
スペンサー 「生きて…来てくれて」
スペンサー 「嬉しいの…」
スペンサー 「…ありがとう」
ルクリア 「ヴァイオレット!」
ヴァイオレット 「ルクリア…どうしたのですか?」
ヴァイオレット 「教官…学校は終わったはずでは」
ルクリア 「ゴメンね、私が勝手にお願いしたの」
ルクリア 「ずっと言えなかったお兄ちゃんへの想い…ヴァイオレット、貴女が届けてくれたのよ」
ローダンセ 「良きドールとは人が話している言葉の中から伝えたい本当の心を掬い上げるもの」
ローダンセ 「貴女は今、その一歩を踏み出したのです」
ローダンセ 「ヴァイオレット、貴女が良きドールになりますように」
ルクリア 「(時に手紙は…たくさんの美しい言葉を並べるより、一言だけで大切な気持ちを伝えることが出来るのです)」
ルクリア 「(私はドールにとって一番大切なことを…)」
ルクリア 「(彼女に教わった気がします)」
ルクリア 「(彼女はお人形の様な服装で…ちょっと軍人さんみたいで…)」
ルクリア 「(私はドールにとって一番大切なことを…)」
ルクリア 「(彼女に教わった気がします)」
ルクリア 「(彼女はお人形の様な服装で…ちょっと軍人さんみたいで…)」