嘴平伊之助「お前!腹大丈夫か?」
竈門炭治郎「あぁ…伊之助…乗客を守って…」
竈門炭治郎「(死ねない)」
竈門炭治郎「(俺が死んだらあの人が人殺しになってしまう)」
竈門炭治郎「(死ねない、誰も死なせたくない!)」
嘴平伊之助「大丈夫か!三太郎!」
嘴平伊之助「腹は大丈夫か、刺された腹は!!?」
竈門炭治郎「大…丈夫だ…伊之助は?」
嘴平伊之助「元気いっぱいだ!風邪も引いてねぇ!」
竈門炭治郎「すぐ動けそうにない…他の人を助けてくれ…怪我人はいないか?頚の近くにいた運転手は?」
「……」
嘴平伊之助「アイツ死んでいいと思う!!」竈門炭治郎「よくないよ」
嘴平伊之助「お前の腹刺した奴だろうが!!アイツ足が挟まって動けなくなってるぜ!!足が潰れてもう歩けねぇ、放っとけば死ぬ!!」
竈門炭治郎「だったらもう十分罰は受けてる…助けてやってくれ…頼む」
嘴平伊之助「ふん!行ってやるよ!親分だからな!!」
嘴平伊之助「子分の頼みだからな!!」
嘴平伊之助「助けた後アイツの髪の毛全部毟っといてやる!!」
竈門炭治郎「そんなことしなくてしいいよ…」
竈門炭治郎「(夜明けが近づいてる…呼吸を整えろ…早く怪我人を助けないと…禰豆子…善逸…煉獄さん…きっと無事だ…信じろ)」
魘夢「(体が崩壊する…再生できない…負けたのか?死ぬのか?俺が?馬鹿な…馬鹿な!俺は全力を出せていない!人間を一人も喰えなかった…汽車と一体化し一度に大量の人間を喰う計画が台無しだ…こんな姿になってまで、これだけの手間と時間をかけたのに…)」
魘夢「(アイツだ!アイツのせいだ!!)」
魘夢「(二百人も人質をとっていたようなものなのに…それでも押された…抑えられた…これが柱の力)」
魘夢「(アイツ、アイツも速かった…術を解ききれてなかったくせに)」
魘夢「(しかもあの娘、鬼じゃないか!何なんだ!鬼狩りに与する鬼なんて、どうして無惨様に殺されないんだ!)」
魘夢「(そもそもあのガキに術を破られてからがケチのつき始めだ…あのガキが悪い!あのガキだけでも殺したい、何とか…そうだ!あの猪も…あのガキだけなら殺せたんだ!あの猪が邪魔した!並外れて勘が鋭い、視線に敏感だった!)」
魘夢「(負けるのか…死ぬのかァ…ああああ…悪夢だあああ…悪夢だあああ…鬼狩りに殺され続けるのはいつも底辺の鬼たちだ)」
魘夢「(上弦、ここ百年顔ぶれの変わらない鬼たち…鬼を山ほど葬っている鬼狩りの柱さえも葬っている…異次元の強さなのか…)」
魘夢「(あれだけ血を分け与えられても上弦に及ばなかった…)」
魘夢「(ああああ…やり直したい…やり直したい…何という惨めな悪夢…だ…)」
煉󠄁獄杏寿郎「全集中の常中ができるようだな、感心感心」
竈門炭治郎「煉獄さん…」
煉󠄁獄杏寿郎「常中は柱への第一歩だからな!柱までは一万歩あるかもしれないがな」
竈門炭治郎「頑張ります!」
煉󠄁獄杏寿郎「腹部から出血している。もっと集中して呼吸の精度を上げるんだ。体の隅々まで神経を行き渡らせろ。血管がある。破れた血管だ。もっと集中しろ」
煉󠄁獄杏寿郎「そこだ、止血、出血を止めろ」
煉󠄁獄杏寿郎「集中」
煉󠄁獄杏寿郎「うむ、出血できたな。呼吸を極めれば様々なことができるようになる。何でもできるわけではないが、昨日の自分より確実に強い自分になれる」
竈門炭治郎「はい」
煉󠄁獄杏寿郎「皆無事だ!怪我人は大勢だが命に別状は無い!君はもう無理せず、ゆっくり体を休めろ」
竈門炭治郎「(上弦の参!?どうして今ここに!!)」
煉󠄁獄杏寿郎「(炎の呼吸 弐ノ型)」
煉󠄁獄杏寿郎「(昇り炎天!!)」
猗窩座「いい刀だ」
煉󠄁獄杏寿郎「(再生が速い!この圧迫感と凄まじい鬼気、これが上弦)」
煉󠄁獄杏寿郎「なぜ手負いの者から狙うのか理解できない」
猗窩座「話の邪魔になるかと思った、俺とお前の」
煉󠄁獄杏寿郎「俺と君が何の話をする?初対面だが俺はすでに君にことが嫌いだ」
猗窩座「そうか、俺も弱い人間が大嫌いだ。弱者を見ると虫酸が走る」
煉󠄁獄杏寿郎「俺と君とでは物ごとの価値基準が違うようだ」
猗窩座「では素晴らしい提案をしよう。お前も鬼にならないか?」
煉󠄁獄杏寿郎「ならない」
猗窩座「見れば解る、お前の強さ、柱だな?その闘気、練り上げられている。至高の領域に近い」
煉󠄁獄杏寿郎「俺は炎柱、煉獄杏寿郎だ」
猗窩座「俺は猗窩座。杏寿郎、なぜお前が至高の領域に踏み入れないのか教えてやろう。人間だからだ、老いるからだ、死ぬからだ」
猗窩座「鬼になろう、杏寿郎」
猗窩座「そうすれば百年でも二百年でも鍛錬し続けられる、強くなれる」
竈門炭治郎「(今まで会った鬼の中で一番鬼舞辻の匂いが強い!俺も加勢しなければ…)」
煉󠄁獄杏寿郎「老いることも、死ぬことも、人間という儚い生き物の美しさだ」
煉󠄁獄杏寿郎「老いるからこそ、死ぬからこそ」
煉󠄁獄杏寿郎「堪らなく愛おしく尊いのだ」
煉󠄁獄杏寿郎「強さというものは肉体に対してのみ使う言葉ではない」
煉󠄁獄杏寿郎「この少年は弱くない!侮辱するな」
猗窩座「今まで殺してきた柱たちに炎はいなかったな」
猗窩座「そして俺の誘いに頷く者もなかった」
猗窩座「なぜだろうな?同じく武の道を極める者として理解しかねる」
猗窩座「選ばれた者しか鬼にはなれないというのに」
猗窩座「素晴らしき才能を持つ者が醜く衰えてゆく、俺はつらい、耐えられない」
猗窩座「死んでくれ杏寿郎、若く強いまま」
煉󠄁獄杏寿郎「(虚空を拳で打つと攻撃がこちらまで来る)」
煉󠄁獄杏寿郎「(一瞬にも満たない速度。このまま距離を取って戦われると頚を斬るのは厄介だ。ならば!)」
煉󠄁獄杏寿郎「(近づくまで!)」
猗窩座「この素晴らしい剣技も失われていくのだ、杏寿郎!悲しくはないのか」
煉󠄁獄杏寿郎「誰もがそうだ!人間なら当然のことだ!」
煉󠄁獄杏寿郎「動くな!傷が開いたら致命傷になるぞ!!」
煉󠄁獄杏寿郎「待機命令!!」
猗窩座「俺に集中しろ」
猗窩座「いい動きだ!」
竈門炭治郎「煉獄さん!!」
嘴平伊之助「ギョロギョロ目ん玉!!」
猗窩座「鬼になれ、杏寿郎」
猗窩座「そして、俺とどこまでも戦い、高め合おう!その資格がお前にはある!」
煉󠄁獄杏寿郎「断る!もう一度言うが、俺は君が嫌いだ!俺は鬼にはならない!!」
煉󠄁獄杏寿郎「炎の呼吸 参ノ型」
煉󠄁獄杏寿郎「気炎万象!!」
猗窩座「素晴らしい!見事だ!」
嘴平伊之助「(隙がねぇ、入れねぇ、動きの速さについていけねぇ、あの二人の周囲は異次元だ)」
嘴平伊之助「(間合いに入れば死しか無いのを肌で感じる!)」
嘴平伊之助「(助太刀に入った所で足手まといでしかないとわかるから動けねぇ)」
猗窩座「まだわからないか!」
猗窩座「攻撃を続けることは、死を選ぶことだということが!!」
猗窩座「杏寿郎!!」
煉󠄁獄杏寿郎「弐ノ型 昇り炎天!!」
猗窩座「1年後、2年後には、更に技が研磨され精度も上がるだろ!!」
煉󠄁獄杏寿郎「盛炎のうねり」
猗窩座「破壊殺」
煉󠄁獄杏寿郎「伍ノ型」
煉󠄁獄杏寿郎「炎虎!!」
嘴平伊之助「おぉ…やったか!!?勝ったのか!?」
竈門炭治郎「(まさか…そんな…)」
猗窩座「もっと戦おう」
猗窩座「死ぬな、杏寿郎」
次回予告
竈門炭治郎「煉獄さん!煉獄さん!」
嘴平伊之助「ギョロギョロ目ん玉!!」
煉󠄁獄杏寿郎「俺は、俺の責務を全うする!」