累の母「累!何やってるの!外に出ては駄目でしょう!」
累「(俺は体が弱かった。生まれつきだ。走ったことがなかった。歩くのでさえも苦しかった)」
累「(無惨様が現れるまでは)」
鬼舞辻󠄀無慘「可哀想に…私が救ってあげよう」
累「(両親は喜ばなかった。強い体を手に入れた俺が、日の光に当たれず、人を食わねばならないから)」
累の父「なんてことを…なんてことをしたんだ!累!」
累「(昔素晴らしい話を聞いた)」
累「(川で溺れた我が子を助けるために死んだ親がいたそうだ。俺は感動した。なんという親の愛、そして絆。川で死んだその親は見事に親の役目を果たしたのだ)」
累「(それなのに…なぜか俺の親は…)」
累「(俺の親は俺を殺そうとした)」
累「(何か言ってる?まだ生きてるのか?)」
累の母「丈夫な体に産んであげられなくて…ごめん…」
累「(その言葉を最後に母は事切れた…死んだ)」
累の父「大丈夫だ累…一緒に死んでやるから…」
累「(殺されそうになった怒りで理解できなかった言葉だったが、父は俺が人を殺した罪を共に背負って死のうとしてくれていたのだと)」
累「(どうか…許してほしい…でも山ほど人を殺した僕は…地獄に行くよね…父さんと…母さんと…同じ所へは行けないよね…)」
累の父「そんなことはない」
累の父「累」
累「父さん…母さん…」
累の父「そんなことはない」
累の父「一緒に行くよ、地獄でも」
累の父「累」
冨岡義勇「人を喰った鬼に情けをかけるな」
竈門炭治郎「だけど…鬼であることに苦しみ自らの行いを悔いている者を踏みつけにはしない!」
竈門炭治郎「鬼は人間だったんだから!俺と同じ…人間だったんだから…足をどけてください!」
竈門炭治郎「醜い化物なんかじゃない…」
竈門炭治郎「鬼は虚しい生き物だ。悲しい生き物だ」
胡蝶しのぶ「そんなだからみんなに嫌われるんですよ」
胡蝶しのぶ「さぁ冨岡さん、どいてくださいね」
冨岡義勇「俺は…俺は嫌われてない」
胡蝶しのぶ「ああ…それ…すみません。嫌われてる自覚がなかったんですね。余計な事を言ってしまって申し訳ないです」
胡蝶しのぶ「それで私に追いつく気ですか?」
栗花落カナヲ「(逃げるばかりで少しも攻撃してこない、どうして?)」
栗花落カナヲ「(考える必要はない。言われた通りに鬼を斬るだけ)」
胡蝶しのぶ「冨岡さん、聞いてますか?冨岡さん」
胡蝶しのぶ「鬼を斬りに行くための私の攻撃は正当ですから、違反にはならないと思いますけど」
胡蝶しのぶ「冨岡さんのこれは隊律違反です。鬼殺の妨害ですからね。どういうつもりなんですか?」
胡蝶しのぶ「何とかおっしゃったらどうですか?これは最後通告です。理由くらい話してください」
冨岡義勇「あれは確か二年前のこと」
胡蝶しのぶ「そんな所から長々と話されても困りますよ…嫌がらせでしょうか?嫌われてると言ってしまったこと根に持ってます?」
鎹鴉「伝令!伝令!」
鎹鴉「炭治郎・禰豆子両名ヲ拘束、本部へ連レ帰ルベシ」
鎹鴉「炭治郎、市松模様の羽織、額に傷あり!竹を噛んだ少女の鬼・禰豆子。連れ帰れ!」
隠「よし、連れて行こう」
我妻善逸「(なんだこいつら…なんかすごいてきぱき後始末してんだけど…)」
我妻善逸「(そういえば聞いた事がある。事故処理部隊“隠”。鬼殺隊と鬼が戦った後の始末をする部隊。構成する隊員は剣技の才に恵まれなかった人達がほとんどだとか…)」
胡蝶しのぶ「最近は冨岡さんと任務でご一緒することが多いですね。返事くらいしてくださいよ。それとも嫌われてると指摘したことまだ怒ってます?何か仰ってはどうでしょう?」
冨岡義勇「否定しないということは真実なのだな」