煉󠄁獄杏寿郎「うまい!」
隊士「炎柱、お食事中失礼します」
隊士「よろしいのですか?」
隊士「炎柱、昨夜のお働き見事でした」
煉󠄁獄杏寿郎「いや、鬼は逃走した後だったからな。負傷したあの女性はどうなった?」
隊士「医師が言うには傷痕も残らないで済むということです」
煉󠄁獄杏寿郎「そうか!処置が早くてよかった」
隊士「はい、ご活躍のおかげです」
煉󠄁獄杏寿郎「これは?」
店主「俺の奢りだよ」
煉󠄁獄杏寿郎「ありがたい!」
隊士「あっ!うまい!」
隊士「おやっさん!上野に店出したってやっていけるよこれ!」
店主「大きなお世話だよ」
煉󠄁獄杏寿郎「親父さん!景気はどうかな?」
店主「どう見えるね?」
煉󠄁獄杏寿郎「悪いな!」
店主「この沿線で切り裂き魔ってのが出てるせいでめっきり人出が減っちまったよ。雇い人にも暇を出す始末さ…こないだは汽車の車掌がやられたってよ…」
店主「それに無限列車ってえのが運行中止になっちまっただろ。噂じゃな、40人ばかり乗客が神隠しに遭っちまったっていうぜ」
煉󠄁獄杏寿郎「ほう!物騒だな」
隊士「炎柱、本題ですが、その無限列車、所在が分かりました」隊士「さる機関庫に人目に付かぬよう搬入されたとの情報が」
煉󠄁獄杏寿郎「そうか」
ふく「うん…お客さん今日も少なかったね…」
トミ「毎日言ってるけど暗い時間は危ないから、明日のお手伝いはお昼からにしようね。夜は鬼が出るから」
ふく「また鬼の話…駄目だよ。頑張ってお弁当売らなきゃいけないんだから!お母さんはおなかが大きいしお父さんは食堂の経営うまくいってないって…」
トミ「毎日言ってるけど暗い時間は危ないから、明日のお手伝いはお昼からにしようね。夜は鬼が出るから」
鎹鴉「異常ナシ!」
隊士「見て回りましたが変わったところはありませんね」
煉󠄁獄杏寿郎「うむ」
ふく「鬼なんかいないよ!」
ふく「また鬼の話…駄目だよ。頑張ってお弁当売らなきゃいけないんだから!お母さんはおなかが大きいしお父さんは食堂の経営うまくいってないって…」
トミ「そんな心配は大人がすればいいの。早朝と夜はおばあちゃん一人がやるから」
ふく「おばあちゃんが切り裂き魔に襲われたらどうするの!」
トミ「あんたの身代わりなら本望だよ」
ふく「おばあちゃん!」
煉󠄁獄杏寿郎「やあこんばんは!気持ちのいい月夜ですね!」煉󠄁獄杏寿郎「俺は鬼を探している者。鬼を見ていませんか?」
隊士「ええー!いきなり!?」
鎹鴉「杏寿郎サマ!単刀直入ガ過ギマス!」
ふく「お…鬼!?変なこと言ってな…何ですか?近づかないで!」
煉󠄁獄杏寿郎「危ない!そんなにぶるぶるしていたら大切なあんパンを落としてしまうぞ!」
トミ「ああ…」
煉󠄁獄杏寿郎「ん?ご婦人何かご存じか」
ふく「お…鬼!?変なこと言ってな…何ですか?近づかないで!」
煉󠄁獄杏寿郎「危ない!そんなにぶるぶるしていたら大切なあんパンを落としてしまうぞ!」
煉󠄁獄杏寿郎「うまい!」
ふく「鬼なんか知らない!いるわけないでしょそんなの」
トミ「ふくおやめ。この人はきっと悪い人じゃないよ」
ふく「…ごめんなさい…このところ切り裂き魔事件のせいで神経が張り詰めちゃって…」
煉󠄁獄杏寿郎「今し方耳にしたところによると、あなた方は暗いうちから準備して、我々のために弁当を売りに来てくれるのだな。実にありがたい」
煉󠄁獄杏寿郎「そのような人々が傷つけられることは決してあってはならない。安心するがいい。切り裂き魔は俺が片付ける!では!」
ふく「あの!その…もしよければお弁当買ってもらえませんか?」
煉󠄁獄杏寿郎「そうだな」
煉󠄁獄杏寿郎「では全部頂こう!」
隊士「あの…炎柱…」
煉󠄁獄杏寿郎「隊の皆に良い土産ができたな。ここからは俺一人で行く。ご苦労だった」
トミ「早く帰るよふく。どうも嫌な感じがしてきたわ。まるで背筋が凍るような…」
「だ…誰だ!」
煉󠄁獄杏寿郎「俺は見てのとおりの弁当売りだ!決して怪しい者ではない!」
「無限列車?それならもう車庫にはありませんよ。今朝方設備の整った整備工場へ運ばれてゆきました」
「あそこですが」
「だ…誰だ!」
煉󠄁獄杏寿郎「俺は見てのとおりの弁当売りだ!決して怪しい者ではない!」
「いやしかし…この列車は車庫に入りますので」
煉󠄁獄杏寿郎「うむ!了解している。そこに無限列車があると聞いた。それに用がある」
「無限列車?それならもう車庫にはありませんよ。今朝方設備の整った整備工場へ運ばれてゆきました」
「あそこですが」
煉󠄁獄杏寿郎「無限列車…なるほど…かすかだが鬼がいた気配が残っている」
「だから運行再開が決まった今精一杯の整備をして送り出してやろうと思ってな」
煉󠄁獄杏寿郎「下がっていろ!少年を放せ!」
鬼「悔しかったら俺を…斬ってみろよ!」
鬼「俺を止められたやつはいねえ」
鬼「俺が一番速い!」
鬼「悪いなぁ、このガキを抱えてたら斬りにくいよな!?ひと思いにやっちまった方がいいか」
鬼「できっこねえ!昨日だって別の女を飽きるまで切り刻んでやったぜ」
鬼「俺を止められたやつはいねえ」
鬼「俺が一番速い!」
鬼「悪いなぁ、このガキを抱えてたら斬りにくいよな!?ひと思いにやっちまった方がいいか」
「た…助けて…」
煉󠄁獄杏寿郎「心配するな。君は必ず俺が助ける」
鬼「できっこねえ!昨日だって別の女を飽きるまで切り刻んでやったぜ」
煉󠄁獄杏寿郎「なるほど、お前の速さはわかった。しかし過信しないことだ!」
煉󠄁獄杏寿郎「昨夜は俺達が来たために逃げたのかと思ったがどうやらお前は感知することもできていなかった様子。逃げ足だけは確かに速いようだな!」
煉󠄁獄杏寿郎「昨夜の被害者も俺達が迅速に処置し」
煉󠄁獄杏寿郎「傷痕も残らず回復するだろう」
鬼「ハッ!たとえ生き延びたとしてそいつは恐怖に一生支配されて生きていくだろうよ」
煉󠄁獄杏寿郎「そうはさせん!癒やし難き心の傷も我々が長い時間をかけて手当てしていく!」
鬼「フッ…その正義漢面に目に物を見せてやろうか。その女もう一度殺しに行ってやる」
煉󠄁獄杏寿郎「彼女の身柄は隠している。お前に見つけ出すことは不可能だ!」
鬼「お先に」
「頼む…助けてくれ…」煉󠄁獄杏寿郎「大丈夫だ。俺に任せろ。それに俺の仲間もすぐに駆け付ける」
鎹鴉「コッチダ!コッチダ!コッチダ!」
隊士「煉獄様!」
煉󠄁獄杏寿郎「医療班は?」
隊士「向かっています」
煉󠄁獄杏寿郎「応急処置は済ませた。あとは頼む」
煉󠄁獄杏寿郎「フゥ…」
煉󠄁獄杏寿郎「(全集中の呼吸…)」
トミ「まったくふくはきかん子だねえ」
ふく「手伝うったら手伝うの」
鬼「におうぜ」
ふく「よし!」
煉󠄁獄杏寿郎「俺は父を継いで鬼を狩っているのです。父と同じようにあなたをお守りできたこと光栄です!」
ふく「ごめんなさいおばあちゃん!鬼がいるわけないなんて言って…」
煉󠄁獄杏寿郎「ははははっ!」
煉󠄁獄杏寿郎「いや!それでいいんだ!鬼を知らず遭遇もせずそれで天寿を全うできるならそれが一番だ!」
隊士「炎柱!大丈夫ですか?」
煉󠄁獄杏寿郎「(全集中の呼吸…)」
トミ「まったくふくはきかん子だねえ」
ふく「手伝うったら手伝うの」
鬼「におうぜ」
ふく「よし!」
鬼「におう…におうぜ!お前だな。臭え弁当のにおいが染み付いていやがる」
トミ「逃げるんだよ!ふく!」
ふく「あ…あなたは…」
鬼「くっ…試してみようじゃねえか、俺がこのババアの喉を切り裂くのが先かお前が俺の首を取るのが先か」
煉󠄁獄杏寿郎「俺は父を継いで鬼を狩っているのです。父と同じようにあなたをお守りできたこと光栄です!」
ふく「ごめんなさいおばあちゃん!鬼がいるわけないなんて言って…」
煉󠄁獄杏寿郎「ははははっ!」
煉󠄁獄杏寿郎「いや!それでいいんだ!鬼を知らず遭遇もせずそれで天寿を全うできるならそれが一番だ!」
隊士「炎柱!大丈夫ですか?」
煉󠄁獄杏寿郎「なに、今片付いたところだ」
隊士「ご苦労さまでした」
煉󠄁獄杏寿郎「うむ」
煉󠄁獄杏寿郎「今夜中に整備を整え明日から運行再開とのことだ」
煉󠄁獄杏寿郎「いずれにせよ無限列車の鬼は別にいる。もっと強力な得体の知れない鬼がどこかに潜んでいる」
隊士「では明日無限列車に…」
煉󠄁獄杏寿郎「無論!乗り込む!」
煉󠄁獄杏寿郎「もう今日だがな!」
ふく「あの」
煉󠄁獄杏寿郎「ではお元気で!また会いましょう」
隊士「それはよかった。これで万事解決ですね」
煉󠄁獄杏寿郎「それは性急すぎるな。40人以上も喰った鬼がこの程度であろうはずがない」
隊士「では切り裂き魔は我々の目をかく乱するための?」
煉󠄁獄杏寿郎「あるいはそうなのかもな」
煉󠄁獄杏寿郎「いずれにせよ無限列車の鬼は別にいる。もっと強力な得体の知れない鬼がどこかに潜んでいる」
隊士「では明日無限列車に…」
煉󠄁獄杏寿郎「無論!乗り込む!」
煉󠄁獄杏寿郎「もう今日だがな!」
ふく「あの」
煉󠄁獄杏寿郎「やあ、弁当屋さん」
ふく「今朝のこと何てお礼を言っていいか…」
トミ「これをどうぞ。私らにはこんなものしかないのですが」
煉󠄁獄杏寿郎「おお!実は昨夜食べ損ねてな。これは何より嬉しい!しかし代金は払おう」
ふく「いえ、お気持ちだけで」
煉󠄁獄杏寿郎「そうか…ではこれは頂くとしそこにある分を全部買おう!」
ふく「ええええ~っ!?」
トミ「お気を付けて」
ふく「近くに来たらまた寄ってください!」
煉󠄁獄杏寿郎「あなた方のことは父に必ず伝えます。喜ぶことでしょう」
煉󠄁獄杏寿郎「ではお元気で!また会いましょう」