「これは天使の粛清に見せかけた、この中の誰かによる連続殺人事件だ!」
村上時雄「人間に憧れ地上に落とされた我々の…これが罰なのですか!我々を粛清する為、天界から派遣された天使がいる」
村上時雄「その天使をこの地上では“異能力者”と呼ぶ」
「異能力者!?」
福沢諭吉「見ていればわかる」
福沢諭吉「(何者だ?)」
江戸川乱歩「ねぇ、聞いていい?ここにいるお客さんはみんなお金を払ってこの劇を見にきてるんだよね?こんなオチが丸わかりの話見せられて何で怒らないの?」
福沢諭吉「(何者だ?)」
江戸川乱歩「ねぇ、聞いていい?ここにいるお客さんはみんなお金を払ってこの劇を見にきてるんだよね?こんなオチが丸わかりの話見せられて何で怒らないの?」
江戸川乱歩「何で…何でこんな劇を…みんなは黙って見てるの!?すごくイライラする」
江戸川乱歩「僕にはわからない…やっぱりみんなには僕にだけ理解できない何かがある…わからない…怖いよ…世界中のみんなが怪物に見える…」
江戸川乱歩「僕にだけ理解できない怪物だ…僕は一人…怪物の世界で生きてる!」
江戸川乱歩「僕にはわからない…やっぱりみんなには僕にだけ理解できない何かがある…わからない…怖いよ…世界中のみんなが怪物に見える…」
江戸川乱歩「僕にだけ理解できない怪物だ…僕は一人…怪物の世界で生きてる!」
江戸川乱歩「才能?そんなのあったら仕事でこんな苦労してないよ」
福沢諭吉「いや、お前には特別な才能がある。お前の言う通りだ。かつてこの腰には刀剣があった」
福沢諭吉「我が剣は国家安寧の為にあり、本気でそう思っていた。だから人を斬った。暗殺はあまりに容易だった。怖くなったのは次に人を斬る任務を心待ちにしている自分に気づいた時だ」
福沢諭吉「国の為に斬るのか斬る瞬間の為に斬るのか…自分の内心が覗けなくなった。その時から二度と剣を持たぬと決めた」
福沢諭吉「俺がかつて何の仕事をしていたか、見破った人間は誰もいない。先程の演劇で劇中の犯人を言い当てたな!?」
福沢諭吉「あの時点で犯人を当てられたのは、おそらくお前だけだ。俺も台本を読んでいなければわからなかった」
福沢諭吉「いや、お前には特別な才能がある。お前の言う通りだ。かつてこの腰には刀剣があった」
福沢諭吉「我が剣は国家安寧の為にあり、本気でそう思っていた。だから人を斬った。暗殺はあまりに容易だった。怖くなったのは次に人を斬る任務を心待ちにしている自分に気づいた時だ」
福沢諭吉「国の為に斬るのか斬る瞬間の為に斬るのか…自分の内心が覗けなくなった。その時から二度と剣を持たぬと決めた」
福沢諭吉「俺がかつて何の仕事をしていたか、見破った人間は誰もいない。先程の演劇で劇中の犯人を言い当てたな!?」
福沢諭吉「あの時点で犯人を当てられたのは、おそらくお前だけだ。俺も台本を読んでいなければわからなかった」
福沢諭吉「いいか、よく覚えておけ。お前は特別で他の人間は愚かなのだ。俺も含めてな。お前が一人なのは、お前に特別な才能があるからだ」
江戸川乱歩「特別?」
福沢諭吉「力は制御されねばならない。お前が自分の才能を見て見ぬふりをするなら、それは流血を求めて力を振るうかつての俺と同じだ」
江戸川乱歩「僕だけが特別なんて…どうしてそんな事が起きるのさ…都会にはこ~んなにたくさん人がいるのに」
福沢諭吉「それは…それはお前が異能力者だからだ。お前が特別なのはお前が異能力者だからだ。その力は一瞥しただけで真実を見抜く能力」
福沢諭吉「この世には異能力を持つ者が少なからず存在する。お前の目に他人が怪物のように映るのは、お前の異能力のせいだ。お前はその力を制御しなければならない」
福沢諭吉「これからその方法を教えてやる。ある物の助けを借りれば、お前は自在に異能を発動できるようになる」
江戸川乱歩「僕だけが特別なんて…どうしてそんな事が起きるのさ…都会にはこ~んなにたくさん人がいるのに」
福沢諭吉「それは…それはお前が異能力者だからだ。お前が特別なのはお前が異能力者だからだ。その力は一瞥しただけで真実を見抜く能力」
福沢諭吉「これからその方法を教えてやる。ある物の助けを借りれば、お前は自在に異能を発動できるようになる」
江戸川乱歩「ある物?」
江戸川乱歩「眼鏡…」
福沢諭吉「これは京の都にてさる高貴な血筋の方より下賜された装飾品だ。これを身につけるとお前の異能力は発動し、立ち所に真実を見抜く事ができるようになる。逆にかけていない時は、他人の愚かさも気にならなくなる」
江戸川乱歩「どう見ても安物の眼鏡だけど…」
福沢諭吉「(その通り。近所の雑貨屋で押しつけられた売れ残りだ。だが…)」
福沢諭吉「(その通り。近所の雑貨屋で押しつけられた売れ残りだ。だが…)」
福沢諭吉「世間は恐ろしくも何ともない。他人は怪物などではない。ただ、お前より愚かでバカなだけだ。誰もお前に悪意など持っていない。みんなはただ愚かな、ものの見方を知らない幼子なのだ」
福沢諭吉「江戸川乱歩!眼鏡は既にお前を受け入れた!後はお前が心を開くだけだ」
江戸川乱歩「薄気味悪いこの世界…」
江戸川乱歩「あの時も」
江戸川乱歩「あの時も」
江戸川乱歩「あの時も」
江戸川乱歩「あの時も」
江戸川乱歩「今までの苦しみは全部…僕の中にじゃなく僕の周りに問題があったって事?」
江戸川乱歩「そういう事なの?」
福沢諭吉「江戸川乱歩!眼鏡は既にお前を受け入れた!後はお前が心を開くだけだ」
江戸川乱歩「あの時も」
江戸川乱歩「あの時も」
江戸川乱歩「あの時も」
江戸川乱歩「あの時も」
江戸川乱歩「今までの苦しみは全部…僕の中にじゃなく僕の周りに問題があったって事?」
江戸川乱歩「そういう事なの?」
福沢諭吉「何もわからぬ幼子なのだ。首のすわらぬ幼子が誰かを憎悪するか?」
江戸川乱歩「そうだ…誰も僕を憎んでなんかいなかったんだ…ふふふ…」
江戸川乱歩「アーハッハッハッハ!」
江戸川乱歩「そうか!みんな幼子か!?世界は少しも気持ち悪くなんかないっ!ただ粛々と愚かでバカなだけなんだ!」
江戸川乱歩「愚かな幼子なら、守ってやらなくては!」
江戸川乱歩「そうだ…誰も僕を憎んでなんかいなかったんだ…ふふふ…」
江戸川乱歩「アーハッハッハッハ!」
江戸川乱歩「そうか!みんな幼子か!?世界は少しも気持ち悪くなんかないっ!ただ粛々と愚かでバカなだけなんだ!」
福沢諭吉「おい乱歩!」
江戸川乱歩「僕にはもう見えてるんだよ。敵の狙いも計画も全部。だからおじさんには観客の動きを見ていて欲しいんだ」
福沢諭吉「(本物の血)」
福沢諭吉「救急車だ!表の警官に知らせて劇場を封鎖しろ!」
「いやあああ!時雄!時雄!」
福沢諭吉「席を立つな!逃げる者には殺人の嫌疑がかかる可能性がある!」
三田村「警部、観客が一人消えました」
福沢諭吉「救急車だ!表の警官に知らせて劇場を封鎖しろ!」
「いやあああ!時雄!時雄!」
福沢諭吉「席を立つな!逃げる者には殺人の嫌疑がかかる可能性がある!」
三田村「警部、観客が一人消えました」
福沢諭吉「失礼だが」
三田村「はい、劇場の封鎖に不手際はなかったと思うのですが、一人消えました」
三田村「上演開始は席にいたという確認が取れていますが…」
福沢諭吉「俺は建物内を捜索する」
福沢諭吉「(俺の責任だ…俺がけしかけたのだ…乱歩は護身の術を持たぬただの子供だ)」
福沢諭吉「(どれほど頭脳が明晰な名探偵であろうと犯人に逆上され襲われては勝ち目などない)」
福沢諭吉「(単独では力を発揮できないのだ。乱歩の盾のなって悪を弾き、安全に推理を行える環境が必要だ)」
福沢諭吉「(どれほど頭脳が明晰な名探偵であろうと犯人に逆上され襲われては勝ち目などない)」
福沢諭吉「(単独では力を発揮できないのだ。乱歩の盾のなって悪を弾き、安全に推理を行える環境が必要だ)」
福沢諭吉「(探偵は武装される必要があるのだ)」
江川「福沢さん」
江川「乱歩君から伝言があるの。犯人は二人いるって」
江戸川乱歩〈この事件は二種類の犯行から成り立てる。例えるなら、海老と鯛だね〉
江戸川乱歩〈簡単に捕らえられる海老だけで満足するのもいい。海老結構おいしいし…でも鯛を捕らえようと思ったら〉
江戸川乱歩〈これはもう…海老を使うしかないんだよ〉
福沢諭吉「(わかりにくい…) 乱歩はどこにいる?」
江川「福沢さん」
江川「乱歩君から伝言があるの。犯人は二人いるって」
江戸川乱歩〈この事件は二種類の犯行から成り立てる。例えるなら、海老と鯛だね〉
江戸川乱歩〈簡単に捕らえられる海老だけで満足するのもいい。海老結構おいしいし…でも鯛を捕らえようと思ったら〉
江戸川乱歩〈これはもう…海老を使うしかないんだよ〉
福沢諭吉「(わかりにくい…) 乱歩はどこにいる?」
江川「さぁ…今どこにいるかはわからないわ」
福沢諭吉「ん?村上が殺されたのになぜ笑う?」
江川「乱歩君から事件の真相の一部を聞いたからよ。ねぇ、福沢さんあの子何者?名探偵である事に間違いはないけど、もしかしたら本人が言うように本当に異能力者なのかしら?」
福沢諭吉「何があった?」
福沢諭吉「ん?村上が殺されたのになぜ笑う?」
江川「乱歩君から事件の真相の一部を聞いたからよ。ねぇ、福沢さんあの子何者?名探偵である事に間違いはないけど、もしかしたら本人が言うように本当に異能力者なのかしら?」
福沢諭吉「何があった?」
江川「全容は彼にしかわからない」
江川「“全部解決してみせるから客席に急いで”ですって」
江戸川乱歩「アーハハハハ!僕はこの劇の最後に現れてあらゆる謎を解決するデウス・エクス・マキナ!」
江戸川乱歩「つまり異能力者にして名探偵ってわけだ!」
江戸川乱歩「君達の中には、天使が殺したと思ってる人が結構いるみたいだね。この際だから言っておくけど」
江戸川乱歩「天使は…いる。天使とは君達観客の事だ」
江戸川乱歩「この事件と演劇は深い所でつながってるんだよ。この演劇は逆転する物語だ。天使と人間が逆転し、裁く者と裁かれる者が逆転する」
江戸川乱歩「そこに空席があるよね?市警はそこに座っていて消えた紳士を加害者だと思ってる。だが、この事件は逆転劇だ」
江戸川乱歩「彼我の構造が入れ替わり被害者と加害者が逆転する」
江戸川乱歩「つまり彼は加害者ではなく、被害者なんだ」
江戸川乱歩「そして被害者は最初からここにいた」
江川「“全部解決してみせるから客席に急いで”ですって」
江戸川乱歩「つまり異能力者にして名探偵ってわけだ!」
江戸川乱歩「君達の中には、天使が殺したと思ってる人が結構いるみたいだね。この際だから言っておくけど」
江戸川乱歩「天使は…いる。天使とは君達観客の事だ」
江戸川乱歩「この事件と演劇は深い所でつながってるんだよ。この演劇は逆転する物語だ。天使と人間が逆転し、裁く者と裁かれる者が逆転する」
江戸川乱歩「そこに空席があるよね?市警はそこに座っていて消えた紳士を加害者だと思ってる。だが、この事件は逆転劇だ」
江戸川乱歩「彼我の構造が入れ替わり被害者と加害者が逆転する」
江戸川乱歩「つまり彼は加害者ではなく、被害者なんだ」
江戸川乱歩「そして被害者は最初からここにいた」
江戸川乱歩「これが逆転劇だ!これで加害者が被害者になった」
江戸川乱歩「さぁ警官の人、お仕事の時間だ」
江戸川乱歩「さぁて、ここで当然の疑問。そのおじさんが何者でなぜ誘拐されなければならなかったのか。それはもちろん加害者に尋ねればわかる事。殺人事件なんて最初から存在しなかったんだ」
江戸川乱歩「さぁ警官の人、お仕事の時間だ」
江戸川乱歩「さぁて、ここで当然の疑問。そのおじさんが何者でなぜ誘拐されなければならなかったのか。それはもちろん加害者に尋ねればわかる事。殺人事件なんて最初から存在しなかったんだ」
江戸川乱歩「最初から。あなたと楽屋で会った時、あなたは青白い顔してやたらと水を飲んでたよね?あれは少し前に血を抜いたからだ」
江戸川乱歩「用心棒、市警…血を見慣れたプロをごまかす為には、本人の新しい血を使う必要があった。脈拍をごまかしたのは、芝居で使うシリコンゴムの詰め巻きだ」
江戸川乱歩「この演劇を実行する為には脚本家さんの協力が必要だ」
江戸川乱歩「探偵じゃなくて名探偵!」
村上時雄「俺は…いや…僕は役者だ…自分ではない者になり、存在しない人生を立ち上げ人間とは何かを曝け出して見せるのが僕の仕事だ」
村上時雄「生き方を演じる以上避けられないものがある。それが“死”だ。僕にとって究極の仕事は本物の死を演じる事だった。それが僕にとって演劇を極める事だ」
村上時雄「僕が死を演じた最初の役者だ。それをここに来てくれた皆さんに見て貰えたかった」
村上時雄「後悔はない。これが僕の生き方で」
江戸川乱歩「立派だと思うよ。ところでさ、客席の皆の顔、見てごらんよ。ここに来てる人たちには二つの共通点がある」
江戸川乱歩「この眼鏡すごいねおじさん!」
江戸川乱歩「この眼鏡と僕の異能力があれば、向かう所敵なしだね!」
三田村「先生方!お疲れ様です!用心棒の先生を拝見した時から必ずやご解決なさるだろうと思っておりましたが、いや~これ程の秘密兵器を備えていらっしゃったとは!これから先生方には、署で事件解決のあらましをご説明いただく事になろうかと」
江戸川乱歩「いいけど、調書に書けるの?真相を見抜いた理由が僕が異能力者だったから!なんて!」
三田村「先生方!お疲れ様です!用心棒の先生を拝見した時から必ずやご解決なさるだろうと思っておりましたが、いや~これ程の秘密兵器を備えていらっしゃったとは!これから先生方には、署で事件解決のあらましをご説明いただく事になろうかと」
江戸川乱歩「いいけど、調書に書けるの?真相を見抜いた理由が僕が異能力者だったから!なんて!」
江戸川乱歩「あ?僕元気だけど?」
福沢諭吉「今回お前は観察と推理から真相を見抜いただけだ。異能力を使ったわけでは…」
福沢諭吉「わかった。警官殿、乱歩を頼む」
村上時雄「今回の件は脚本家の倉橋と二人で計画したんですが、あっちはあっちで目的があったらしい。あの背広の紳士は滅多に姿を現さない男で、彼を捕まえる事も目的の一つだったとか…」
「!!」
警部「福沢先生!脚本家が自室で殺されました!」
「!!」
警部「福沢先生!脚本家が自室で殺されました!」