三田村「それにしてもお見事でしたね。まさに小さな名探偵!用心棒の福沢先生と合わせて名探偵コンビ結成ですね」
江戸川乱歩「でもあの人、僕と組む気ないと思うよ。あの人は他人が恐いんだよ」
三田村「会ったばかりの福沢先生の事をそれ程までに見抜くとは、さすが異能力者!確か真相を見抜く能力…とか?」
江戸川乱歩「でもさ、本当は信じてないでしょ?だって今“会ったばかりの福沢先生の事”って言ったでしょ?」
江戸川乱歩「今朝の社長殺人事件で福沢さんと僕が初めて会った事を本部に問い合わせて調べたって事だ。僕の実力を知りたかったから」
三田村「さすがです。いや~おみそれしました」
江戸川乱歩「疑われっぱなしっていうのは癪だから異能力者だって事を証明してみせようか」
江戸川乱歩「この車、警察署に向かってないよね?」
三田村「先に言うべきでしたね。すみません。出る前に無線が入ったんです。事件があったとかで…その現場に名探偵をお連れしろと」
江戸川乱歩「なるほど」
三田村「でも今のは異能力を使うって程でもないんじゃないですかね。警察署は駅方向ですし、行き先が違う事はすぐにわかる」
江戸川乱歩「じゃあこうしよう。警官さんが今回の事件の謎について質問する。僕が答えにつまったら警官さんの勝ち。謎が尽きたら僕の勝ち。どう?」
江戸川乱歩「でもさ、本当は信じてないでしょ?だって今“会ったばかりの福沢先生の事”って言ったでしょ?」
江戸川乱歩「今朝の社長殺人事件で福沢さんと僕が初めて会った事を本部に問い合わせて調べたって事だ。僕の実力を知りたかったから」
三田村「さすがです。いや~おみそれしました」
江戸川乱歩「疑われっぱなしっていうのは癪だから異能力者だって事を証明してみせようか」
江戸川乱歩「この車、警察署に向かってないよね?」
三田村「先に言うべきでしたね。すみません。出る前に無線が入ったんです。事件があったとかで…その現場に名探偵をお連れしろと」
江戸川乱歩「なるほど」
三田村「でも今のは異能力を使うって程でもないんじゃないですかね。警察署は駅方向ですし、行き先が違う事はすぐにわかる」
江戸川乱歩「じゃあこうしよう。警官さんが今回の事件の謎について質問する。僕が答えにつまったら警官さんの勝ち。謎が尽きたら僕の勝ち。どう?」
三田村「なるほど…では誰もが聞きたかった事だと思うんですが、舞台の上で捕まっていた背広の紳士がいたでしょう?」
三田村「彼はどうやって捕まえられてあそこまで運ばれたんでしょう」
江戸川乱歩「絨毯だよ。ホールに毛足の長い絨毯があったでしょ?」
江戸川乱歩「騒ぎの後、その絨毯の一つがなくなってた。その上、絨毯があった所から微かに変な匂いがしたんだよね」
江戸川乱歩「ペンキやプラスチックの元になってる変な匂いの…」
三田村「有機溶剤?」
江戸川乱歩「絨毯だよ。ホールに毛足の長い絨毯があったでしょ?」
江戸川乱歩「騒ぎの後、その絨毯の一つがなくなってた。その上、絨毯があった所から微かに変な匂いがしたんだよね」
江戸川乱歩「ペンキやプラスチックの元になってる変な匂いの…」
三田村「有機溶剤?」
江戸川乱歩「そう、それ!同じ匂いが縛られてる背広の人からもちょっとしたよ」
江戸川乱歩「つまり犯人はあの背広の紳士を絨毯で包んであそこまで運んだんだよ」
江戸川乱歩「有機溶剤はあの背広の紳士を気絶させるのに使ったんだ」
三田村「運んだのは当然共犯者の脚本家なんでしょう?」
江戸川乱歩「つまり犯人はあの背広の紳士を絨毯で包んであそこまで運んだんだよ」
江戸川乱歩「有機溶剤はあの背広の紳士を気絶させるのに使ったんだ」
三田村「運んだのは当然共犯者の脚本家なんでしょう?」
江戸川乱歩「脚本家さんじゃないよ。たぶん脚本家さんは演劇が始まる前に殺されてたんじゃないかな…」
江戸川乱歩「僕以外の人はことごとくバカで愚かで愛すべき人達だから、できれば助けてあげたかったんだけど、事件を知る前に死んじゃってる人はどうもな…でもたった一人を誘拐する為にどうしてそこまでやるかな…」
三田村「誘拐する為?」
江戸川乱歩「この大掛かりな計画はあの背広の紳士一人を誘拐する為だけに組み上げられた大規模で手の込んだ罠だったんだよ」
江戸川乱歩「脚本家さんも主役の村上さんもその為に利用された駒。とう?これで僕が異能力者だって信じた?」
江戸川乱歩「だからさ、いい加減この車がどこに向かってるのか白状してよ。服から有機溶剤の匂いのする警官さん」
福沢諭吉「(脚本家が殺された…事件はまだ終わってない…まだ真犯人がいる)」
福沢諭吉「乱歩と一緒に署に向かった警官の名は?」
江戸川乱歩「脚本家さんも主役の村上さんもその為に利用された駒。とう?これで僕が異能力者だって信じた?」
江戸川乱歩「だからさ、いい加減この車がどこに向かってるのか白状してよ。服から有機溶剤の匂いのする警官さん」
福沢諭吉「乱歩と一緒に署に向かった警官の名は?」
「三田村巡査長です。携帯の電源も切られています」
福地桜痴「気が変わったか」
三田村「勿論市警の事ではありませんよ」
三田村「すばらしい!どうしてわかったんです?」
江戸川乱歩「それが僕の異能力だから」
三田村「ですが彼らはあなたを傷つけるつもりは毛頭ありません。元々ここに連れてくるハズだったターゲット、あなたが舞台で観客に披露してみせたあの紳士を監視する為に用意した戦力でして」
江戸川乱歩「結局あの紳士には逃げられたわけだ。それで?僕を連れてきたわけは?」
三田村「今回の劇場の仕掛けはかなり大掛かりでしたから、それをぶち壊された上の連中はカンカンになりましてね。そこで台無しにした奴を捕まえろとこういうわけですよ」
三田村「なぜ真実を見破ったのか、どこから情報を得たのか、それを吐かせよと。このままじゃ我々は上の指示で望みもしないのにあなたを痛めつけなくちゃならないわけです。そんなの嫌でしょう?そこで一つ提案ですが、異能力者の名探偵殿、我々と一緒に働きませんか?我々は志ある者!どうですか?」
江戸川乱歩「あ、ごめん。話が長くてつまんなかったから全然聞いてなかった」
福沢諭吉「これを見ろ。これはある国家系の機関が使う記憶素子だ」
福沢諭吉「証人保護プログラムに守られた者が保護機関と情報交換する為の装置。犯罪組織に狙われる重要人物が持っている物。そしてその類の重要人物には共通点がある」
福沢諭吉「全員が異能力者だ。お前程の凄腕なら、外部の組織から依頼を受けて動いた事もあるだろ。最近異能力者を捕まえる依頼を受けなかったか?」
織田作之助「依頼人については話せない」
福沢諭吉「依頼でなくてもいい。最近この界隈で異能力者を生け捕りにする依頼の話を聞いた事はないか?その依頼人は“V”と名乗っているかもしれない」
織田作之助「連中については話したくないな…連中の目的について知ってるか?」
福沢諭吉「依頼でなくてもいい。最近この界隈で異能力者を生け捕りにする依頼の話を聞いた事はないか?その依頼人は“V”と名乗っているかもしれない」
織田作之助「連中については話したくないな…連中の目的について知ってるか?」
福沢諭吉「いや」
織田作之助「大儀だ」
「!!」
織田作之助「金の為に殺す…憎いから殺す…そういうのは理解できるよ。だが、奴らは大義の為に殺す。そんな連中とは関わりたくない」
織田作之助「大儀を目的にした殺しをつきつめると、必ず最後は“殺すのは誰だっていい”って所にたどり着くから…」
福沢諭吉「連中と敵対しろと命じているわけではない。知り合いがその連中に誘拐された。監禁場所に心当たりはないか?」
織田作之助「教える理由がない」
「!!」
織田作之助「金の為に殺す…憎いから殺す…そういうのは理解できるよ。だが、奴らは大義の為に殺す。そんな連中とは関わりたくない」
織田作之助「大儀を目的にした殺しをつきつめると、必ず最後は“殺すのは誰だっていい”って所にたどり着くから…」
織田作之助「教える理由がない」
福沢諭吉「その通りだな。だがもし教えるなら、今朝お前が秘書を撃ち殺した件をもみ合った結果の事故、正当防衛だったと証言してもいい」
福沢諭吉「すぐにここから出られるぞ」
織田作之助「意外だ。見た所そういう正義を裏切る様な取り引きをしないタイプだと思っていた」
福沢諭吉「(俺だってそう思っていた)」
織田作之助「自分はずっと一人で殺しの仕事をしてきた。仲間も上司も欲しいと思った事はない。だが、あなた程の武術の達人が主義を曲げてでも助け出そうとするなんて」
織田作之助「その部下は幸せ者だ。少しだけ…うらやましい」
福沢諭吉「(違う…部下ではない)」
織田作之助「連中が取り引きに使う建物をいくつか聞いた事がある」
福沢諭吉「すぐにここから出られるぞ」
織田作之助「意外だ。見た所そういう正義を裏切る様な取り引きをしないタイプだと思っていた」
福沢諭吉「(俺だってそう思っていた)」
織田作之助「自分はずっと一人で殺しの仕事をしてきた。仲間も上司も欲しいと思った事はない。だが、あなた程の武術の達人が主義を曲げてでも助け出そうとするなんて」
織田作之助「その部下は幸せ者だ。少しだけ…うらやましい」
福沢諭吉「(違う…部下ではない)」
織田作之助「連中が取り引きに使う建物をいくつか聞いた事がある」
福沢諭吉「取り引きに応じるか!?」
三田村「ん?」
三田村「交渉役が私なのは大変な幸運なんですよ。他の連中ならあなたを爪先から順にノコギリで切り落としていてもおかしくない」
三田村「やはりこいつがないと会話が成立しませんか。この国の屋台骨を腐らす寄生虫、異能力者を一掃してやる!」
江戸川乱歩「なるほどね~“V”は異能力者を駆逐すべく結成された異能力者組織か…あ~もうちょっと待ってね」
江戸川乱歩「僕の予想ではあと…3秒…」
江戸川乱歩「…2…」
「うわああああ!」
江戸川乱歩「…1…」
福沢諭吉「外の見張りを一人片づけた。あと何人だ?」
江戸川乱歩「4人」
福沢諭吉「ケガはないか?」
江戸川乱歩「なるほどね~“V”は異能力者を駆逐すべく結成された異能力者組織か…あ~もうちょっと待ってね」
江戸川乱歩「僕の予想ではあと…3秒…」
江戸川乱歩「…2…」
「うわああああ!」
江戸川乱歩「…1…」
福沢諭吉「外の見張りを一人片づけた。あと何人だ?」
江戸川乱歩「4人」
福沢諭吉「ケガはないか?」
江戸川乱歩「うん!」
江戸川乱歩「いや~想像以上だったね!間に合うのは僕の計算通り…」
福沢諭吉「ふざけるな!何が計算通りだ!俺が飛び込んだ時、お前の目の前にあったものは銃口だぞ!」
江戸川乱歩「だってそれは絶対来てくれるって」
江戸川乱歩「いや~想像以上だったね!間に合うのは僕の計算通り…」
福沢諭吉「ふざけるな!何が計算通りだ!俺が飛び込んだ時、お前の目の前にあったものは銃口だぞ!」
江戸川乱歩「だってそれは絶対来てくれるって」
福沢諭吉「お前はまだ子供なのだぞ」
江戸川乱歩「ウウ…ごめんなさい…ごめんなさい…」
江戸川乱歩「ごめんなさい…ごめんなさい!」
江戸川乱歩「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
福沢諭吉「三田村巡査長が拘留中に殺害された」
江戸川乱歩「ウウ…ごめんなさい…ごめんなさい…」
江戸川乱歩「ごめんなさい…ごめんなさい!」
江戸川乱歩「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
福沢諭吉「どうした?」
江戸川乱歩「昨日まで見てた景色と何か違うなと思ってさ…何でだろ…」
福沢諭吉「理解したからだ」
江戸川乱歩「ん?異能力者だって事を?」
福沢諭吉「そうじゃない。大切な事をだ」
織田作之助「カレー?」
織田作之助「辛っ…でもうまい」
福沢諭吉「理解したからだ」
江戸川乱歩「ん?異能力者だって事を?」
福沢諭吉「そうじゃない。大切な事をだ」
織田作之助「カレー?」
織田作之助「辛っ…でもうまい」
夏目漱石「ようこそ晩香堂へ」
福沢諭吉「はっ」
江戸川乱歩「…ウソ…あの時は気づかなかったけど…この人こんなに…」
江戸川乱歩「…ウソ…あの時は気づかなかったけど…この人こんなに…」
夏目漱石「その節は助かったぞボウズ」
江戸川乱歩「そうか!あなたは最初から劇場の罠を見抜いていて、それでもあえて罠にかかったんだ!敵をあぶり出し僕達に捕まえさせる為に!」
夏目漱石「鯛には逃げられてしまった様だがな」
夏目漱石「異能開業許可証か…お前は会社は起こそうというのだな?」
福沢諭吉「はい。異能特務課から許可証を得るには、この地の全てを知ると言われる貴殿の助力がどうしても必要なのです」
福沢諭吉「夏目漱石殿」
夏目漱石「楽な道ではないぞ。だがなんとかなるかもしれんな」