与一「ごめんね。大変な時に」
四ノ森避影「これも運命だ」
ラリアット「いやまァタイミングの問題さ」
煙「万縄先輩は以前彼とお話してましたよね」
緑谷出久「(歴代の継承者達…また夢の中)」
与一「約4か月程前、僕の力が、ワン・フォー・オールが急速に成長を始めてからだ。成長に伴いワン・フォー・オール内に在った継承者達の意識は輪郭を帯び、継承者同士でコミュニケーションを取れるようになった」
与一「そして、先の戦いで兄さんの力に無理矢理引っ張られたことでより君の前に現れやすくなった」
ラリアット「まー、プライベートは保証するから心っ配ないさぁ」
ラリアット「あァ、お口がねぇんだっけか」
緑谷出久「(いや、あの時、言葉を発する事ができた。口が薄らと形成されてる)」
ラリアット「おお!話せるようになったさ!」
四ノ森避影「私が話そう」
四ノ森避影「私は四代目。名を四ノ森避影という。先の戦いで君は図らずも私の力を引き出した」
四ノ森避影「いきなりでびっくりした」
四ノ森避影「酷い時代だった。私以外は変人だったんだ」
四ノ森避影「君は、私の享年と死因を聞いているかね?」
緑谷出久「享年40…死因は…(オールマイトの資料には書かれていなかった…というより途中まで書いて消したような)」
四ノ森避影「死因は老衰だそうだ」
四ノ森避影「推定調なのは、私も万縄も正確な死因など知る由もなく八木くんが調べて教えてくれたからだ」
四ノ森避影「結論から言うとワン・フォー・オールは最早、普通の人間には扱えない」
緑谷出久「命…そんな…でも…待って下さい!四ノ森さんの頃よりうんと大きな力をオールマイトはもっと長い間保持しています」
与一「そこなんだ。我々が言わなければならない事は」
与一「ワン・フォー・オール所持に伴う負荷に気付いた八木くんも同じ事を思った。他は保持期間も短く戦いの中で亡くなった為比較サンプルが自分しかいない」
与一「人から人へと引き継がれた力は何の因果か、持たざる者が最も真価を引き出せる形となっていたんだ」
緑谷出久「つまり歴代の個性が発現した今、普通の人には尚更渡せない。ワン・フォー・オールはもう譲渡できない、そういうお話ですね」
与一「君の世代でも絶滅危惧種の無個性で且つ力を必要とする者が今後現れない限りは」
与一「当時は知り得ない事だった。君らの手に渡ったのは運命的だった。もし我々がもっと早く所有者に干渉できるようになっていたなら」
緑谷出久「僕が最後の継承者…」
志村菜奈「そこが本題だ。出久くん、君、死柄木弔を殺せるか?」
志村菜奈「頼んでいるんじゃあない。覚悟の話だ。君はあの子の顔を見て助けを求めているように見えたと…そう思ったろう。私たちは君の気持ちに呼応する。そういうのわかっちゃうんだよ」
ラリアット「問題は俺たちにはそう見えなかったってことさ。オール・フォー・ワンに侵食されて苦しんでいた様子はわかったさ」
ラリアット「だがあれは救けなんか求めちゃいなかったさ。あんな状況でもアレの眼は憎しみしか宿しちゃいなかったさ」
与一「ワン・フォー・オールを手に入れる為にね」
志村菜奈「出久くん、逃げれないという話の後に言うのは、卑怯なやり方だと思ってる。死柄木弔は私の孫だ。オール・フォー・ワンと戦う為に息子と離れてその結果がコレだ。失敗し続けた大人が16の子どもに負債を押しつけるのはみっともない事だとわかってる」
志村菜奈「けれど…アレが巨悪と成り果てたらもう誰にも止められない。赦すことも…わかりあう事も叶わない…救いようの無い人間はいるんだよ」
緑谷出久「ワン・フォー・オール中に死柄木の自意識が侵入してきた時、死柄木が己の夢を強く想った時、憎しみのその奥に泣いている子どもを感じたんです」
緑谷出久「今まで色んな人と戦ってきました。彼らは折れなかった。戦って止めるしかなかった。でも彼らがどうしてそうなってしまったのか僕は知らなかった」
緑谷出久「知っていたなら何か違っていたのかもしれない。戦うことには変わりないかもしれない。たくせんの人を殺した。大好きな人たちを傷つけた」
緑谷出久「けれどワン・フォー・オールは殺す為の力じゃなく助ける為の力なんだとオールマイトから教わりました。僕だけじゃない。オールマイトと皆さんの培ってきた力が数えきれない人たちの心を支えてきたと思うんです」
与一「ワン・フォー・オールが君たちに渡って本当によかった」
志村菜奈「(空彦…私達は選択を誤った…けれど私たちは弟子に恵まれた…)」
与一「君たちもいい加減に彼に協力してくれ」
与一「ワン・フォー・オールの力を全開放する為の協力を」
オールマイト「(言葉ではない感情が流れ込んでくる。歴代との対話…ワン・フォー・オールの真実…お師匠の葛藤…朧気にしか分からないけれど、私の中に流れ込んでくる。無個性の君の言葉が言葉じゃなく…)」
ホークス「はじめましてオールマイトさん」
オールマイト「いや大丈夫。きっともうじき起きる。それより何だいホークスくん」
ホークス「ワン・フォー・オールと緑谷くんについてです」
「!!」
オールマイト「場所がよくないな。全てを話そう」
『事件から三日が経った。パニックは収まらない。不安が伝染していた。けれど皆が皆ただ責め立てたいワケじゃなかったと思う。清廉潔白であってくれ。間違いなど犯してないと言ってくれ。不安だから安心させてくれ。縋るような想いがあったのだと思う』
「ホークスとベストジーニストは荼毘の告発と異なる様ですが!」
ホークス「ベストジーニストさん殺害は潜入の為の工作であり告発の全てを覆すものではありません」
ホークス「父の件も逃げるヴィランを刺し殺したのも事実です」
ホークス「父について隠していたことにつきまして謝罪申し上げます」
ホークス「ベストジーニストさん殺害は潜入の為の工作であり告発の全てを覆すものではありません」
ホークス「父について隠していたことにつきまして謝罪申し上げます」
「よろしいでしょうか。ギガントマキアの縦断によって私の母は重傷を負いました。“全て事実でしたすみません”じゃ取り返しのつかない事態なんですよ」
「この一週間弱でどれだけの人が住む家を失ったかご存知ですか!? なぜそんな澄ました顔でいられるんですか!?やったのはヴィラン!しかし己の過ちがそうさせたのだとわかっている顔には見えませんが!」
エンデヴァー「憔悴した顔で泣いていれば取り返しがつきますか?」
「はあ!? つくわきゃねーだろ!社会の不安を取り除け!ヴィランを全部片付けろ!それが!」
「それが…」
エンデヴァー「仰る通りです。それが今エンデヴァーにできる償いです」
ジーニスト「つきましては守るべき範囲を削減します」
ジーニスト「政府との相談の上、本日より雄英をはじめとした広大な敷地と十分なセキュリティを持つヒーロー科の学校を指定避難所として開いて頂く運びとなりました」
ジーニスト「既に学生の家族には避難を進めてもらっています
「先の見えない避難所生活なんて納得できるか!」
エンデヴァー「先を見る為です。避難も不安も私だけに向けて欲しい。これから命を張る者たちにではなく」
エンデヴァー「みんなで俺を見ていてくれ」
『エンデヴァーはワン・フォー・オールの問いに“わからない”とだけ答えた。デクくんとオールマイトに石が投げられないように』
緑谷出久「このままだとみんなを巻き込んでしまうから…だから雄英校から出て行きます」