太宰治「やぁ織田作」
太宰治「悪いね、先生」
織田作「先生?猫がか?」
「ありません」
太宰治「ないのかぁ…じゃあ洗剤ベースのカクテルを」
「ありません」
太宰治「安吾も仕事でしゅっぱいしたって事か」
坂口安吾「しゅっぱい?」
太宰治「そう、しゅっぱい仲間だ。そういえば私達がここでこうやって飲む様になって随分経つけど、織田作の仕事の愚痴は聞いた事がない」
太宰治「またそうやって隠す…今回はどんな事をした?」
織田作「ウチに上納金を収めてる商店街で、子供が万引きしていたのを懲らしめた。フロント企業の役人が愛人と妻に挟まれた修羅場で仲裁」
太宰治「ほー!ねぇ織田作!私と仕事を交換しよう!私も不発弾の処理やりたいっ!」
坂口安吾「太宰君には無理です」
織田作「ああ、ふっ飛ぶ」
太宰治「今夜ここに来たら、君達に会える様な気がしてね」
坂口安吾「僕達に用事があったのですか?」
太宰治「別にないよ」
太宰治「何でもいいさ。理由が欲しいわけじゃない」
織田作「ストレイドッグに」
坂口安吾「ええ、仕事用ですが」
太宰治「写真撮ろうよ。記念にさ」
太宰治「ここに三人が集まった記念」
織田作「いつも三人で飲んでるじゃないか」
織田作「なぜ急に写真なんだ?」
太宰治「今撮っておかないと、我々がこうやって集まったという事実を残すものが何もなくなる様な気がしたんだよ」
『その通りになった。その日が我々の間にある目に見えない何かを写真に残す事ができる最後の機会になった。三人の内一人が、その後間もなく…死んだからだ』
森鷗外「まぁいい。君を呼んだのは他でもない。人捜しを頼みたいのだ」
織田作「俺の様な一介の構成員にですか」
森鷗外「君の評判は聞いている。今回の仕事はぜひ君に頼みたい。行方不明になったのは情報員の坂口安吾君だ」
織田作「俺の様な一介の構成員にですか」
森鷗外「君の評判は聞いている。今回の仕事はぜひ君に頼みたい。行方不明になったのは情報員の坂口安吾君だ」
森鷗外「安吾君が消息を断ったのは昨日の夜。自宅に戻っていない様だ。自ら姿を消したのか、或いは何者かに拐かされたのかはまだわかっていない」
森鷗外「知っての通り安吾君はポートマフィアの情報員だ。彼の頭の中には他の組織に売れば我々を潰せる程の秘密が詰まっている」
森鷗外「ただし、それがなかったとしても安吾君は優秀で大事な私の部下だ。何かあったのなら助けたい」
森鷗外「これを見せれば組織内では何かと便宜が図られるだろう。幹部でも顎で使える」
織田作「では答えたくありません」
森鷗外「ハハ…いいだろう。行きたまえ。良い報告を期待しているよ」
広津柳浪「それから間もなく幹部がお着きになる」
太宰治「おはようみなさん!ちょっと待ってね…今この難関面をクリアするところだから」
太宰治「あーっ!マズイ!抜かれた!爆撃!わっ避けられた!」
広津柳浪「太宰殿、ご足労恐縮です。武器庫警備の者が撃たれました」
太宰治「ポートマフィアの武器庫を狙うなんて命知らずは久しぶりだね!」
太宰治「広津さん」
広津柳浪「古い型式ですな。私より年上でしょう。おそらくグラオガイスト。欧州の旧式拳銃です」
太宰治「私この銃、昨夜見たよ」
太宰治「という事は武器庫の襲撃者はその直前に私達を襲った事になる」
太宰治「ならあれは陽動か?フフ…これは面白い」
太宰治「予想するよりずっと愉快な連中だよコイツらは…」
太宰治「広津さん、今回奴らが襲ったのはポートマフィア最高保管庫の一つだった。そこに正規の暗証番号で侵入している。番号は準幹部クラスの人間しか知らない」
太宰治「私この銃、昨夜見たよ」
太宰治「という事は武器庫の襲撃者はその直前に私達を襲った事になる」
太宰治「ならあれは陽動か?フフ…これは面白い」
太宰治「予想するよりずっと愉快な連中だよコイツらは…」
太宰治「広津さん、今回奴らが襲ったのはポートマフィア最高保管庫の一つだった。そこに正規の暗証番号で侵入している。番号は準幹部クラスの人間しか知らない」
太宰治「うちの部下が昨日の捕虜を拷問して情報を吐かせようとしたのだけど、一瞬の隙をついて奥歯に仕込んだ毒をあおって自害したのだよ。ただ一つ聞き出せた。敵の組織の名前は…ミミック」
織田作「そして誰も君の正体を知らない…わからん」
織田作「狙撃された。安吾の部屋だ。今狙撃手を追ってる。古書通りの向かいにあるビルが狙撃点だ」
織田作「今手元に銀の託宣がある。必要なら」
太宰治「止せったら。私が行くまであまり無理はするなよ」
太宰治「生け捕りにしても何も聞き出せないからねぇ。何しろ奥歯に仕込んだ毒薬の味が大好きな連中なんだ」
太宰治「わかってるよ。そういう意味で言ったんじゃないんだろ?けどね、相手は戦闘のプロだ。いくら君でも殺さないなんて無理だよ」
織田作「ああ、お前が来なければ死んでいた」
太宰治「織田作之助…何があろうと絶対に人を殺さないという信条を持つ奇妙なポートマフィア。その面倒な信念のせいで組織内では使いパシリの様に扱われる。あれだけの腕をもちながら…」
織田作「その手の苦情はもう何万回も承ってる。それよりこの襲撃だ。一体何者なんだ?」
太宰治「わかってるよ。そういう意味で言ったんじゃないんだろ?けどね、相手は戦闘のプロだ。いくら君でも殺さないなんて無理だよ」
織田作「ああ、お前が来なければ死んでいた」
太宰治「織田作之助…何があろうと絶対に人を殺さないという信条を持つ奇妙なポートマフィア。その面倒な信念のせいで組織内では使いパシリの様に扱われる。あれだけの腕をもちながら…」
織田作「その手の苦情はもう何万回も承ってる。それよりこの襲撃だ。一体何者なんだ?」
太宰治「そいつの腰を見てみるといい」
太宰治「旧式拳銃を下げているだろう?そいつはグラオガイストというらしい。古い欧州の拳銃で、連射性と精度がお粗末だから、この狭い路地では威嚇くらいしか使い道がない」
太宰治「おそらくその拳銃は、彼らにとってエンブレムのようなものなのだろう。自分達が何者か示す為の」
織田作「何者なんだ?」
太宰治「ミミック。詳しい事は調査中だよ。でも安吾の部屋に狙撃銃を向けていた線から、何かわかるかもしれないね」
織田作「この金庫を取り戻す為だ。安吾の部屋にあった。だが鍵がなくて開かない」
太宰治「何だ…そんな事?どれどれ」
太宰治「貸して…開いた」
織田作「おい…何故だ…お前さっきこの銃がエンブレムだと言ったよな?連中が何者か示す為の…それを安吾が持ってるってことは…」
太宰治「これだけでは何とも言えない。安吾がこの銃を連中から奪ったのかもしれないし、或いは連中が誰かを陥れる偽装証拠としたかったのかもしれない」
太宰治「旧式拳銃を下げているだろう?そいつはグラオガイストというらしい。古い欧州の拳銃で、連射性と精度がお粗末だから、この狭い路地では威嚇くらいしか使い道がない」
太宰治「おそらくその拳銃は、彼らにとってエンブレムのようなものなのだろう。自分達が何者か示す為の」
織田作「何者なんだ?」
太宰治「ミミック。詳しい事は調査中だよ。でも安吾の部屋に狙撃銃を向けていた線から、何かわかるかもしれないね」
太宰治「何だ…そんな事?どれどれ」
太宰治「貸して…開いた」
織田作「おい…何故だ…お前さっきこの銃がエンブレムだと言ったよな?連中が何者か示す為の…それを安吾が持ってるってことは…」
太宰治「これだけでは何とも言えない。安吾がこの銃を連中から奪ったのかもしれないし、或いは連中が誰かを陥れる偽装証拠としたかったのかもしれない」
織田作「何!?」
織田作「雨が降って傘が濡れていた…何の不都合がある?」
太宰治「安吾は自前の車で取引現場に向かったはずだけど…ではあの傘はいつ使われたのだろう…取引の前じゃない。傘は時計の上に置かれていたからねぇ。そして後でもない」
織田作「何故だ?」
太宰治「あの傘の濡れ方は2、3分使われた感じじゃない。たっぷり30分は雨にうたれてたハズだよ。それだけ雨の中にいたにしては、安吾の靴もズボンの裾も乾いていた。取り引きが8時で我々が会ったのが10時。取り引きの後、2時間では乾くのに時間が足りない」
織田作「着替えを持っていたのかもしれない」
太宰治「酒場からの帰りに安吾の車に便乗したが、靴も着替えもなかったよ。私の予想では安吾は取引には行かず、雨の中誰かと会い、30分くらい会話をしてから、残りの時間をつぶして帰って来た」
織田作「安吾はポートマフィアの秘密情報員だ。誰にも明かせぬ密会の一つや二つあるだろ」
太宰治「ならば一言いえばいい。言えないと…そうすれば私も織田作もそれ以上は聞かない。そうだろ?」
太宰治「なのにアリバイまで用意して密会を隠したかった理由は何だ?」
太宰治「おやおや大した精神力だねぇ。実際のところ私は君たちを敬意しているのだよ。これ程正面からポートマフィアにぶつかって来る組織はなかった」
太宰治「おやおや大した精神力だねぇ。実際のところ私は君たちを敬意しているのだよ。これ程正面からポートマフィアにぶつかって来る組織はなかった」
織田作「太宰よせ!」
太宰治「私の眼の中の歓喜が君にも見える事を願うよ。君がほんの少し指を曲げるだけで、私が最も待ち焦がれたものが訪れる。唯一の畏れは君が狙いを外す事だ。だができるさ。君は狙撃手だろ?」
太宰治「私の眼の中の歓喜が君にも見える事を願うよ。君がほんの少し指を曲げるだけで、私が最も待ち焦がれたものが訪れる。唯一の畏れは君が狙いを外す事だ。だができるさ。君は狙撃手だろ?」
太宰治「どの道君は殺される。なら最後に敵幹部を葬ってみせろ」
太宰治「彼が外す事はわかっていた」