織田作「おやすみ、コウスケ」
織田作「おやすみ、カツミ」
織田作「おやすみ、ユウ」
織田作「おやすみ、シンジ」
織田作「おやすみ、サクラ」
織田作「静かに眠ってくれ」
織田作「行ってくる」
森鷗外「今日はお招きありがとう。本職に戻ってからの調子はどうかな」
種田山頭火「ウチの若いもんをあんまり虐めんで頂きたいですな。ポートマフィアの親分さん」
坂口安吾「早速ですが、本題に入らせて頂きます。異能特務課より、ポートマフィア鷗外殿への要求は2点。まず私坂口安吾について一切の感知をせず、危害を加えぬ事。もう一つは、日本に不法入国した異能犯罪組織ミミックを壊滅させる事」
森鷗外「一つ目に関しては問題ないよ。でも二つ目は確約しかねるなぁ…とにかく恐い連中だからねぇ…」
森鷗外「まぁ、条件にもよるがね」
太宰治「聞いてくれ。先程ボスが秘密の会合に出席したらしい。相手は異能特務課」
江戸川乱歩「探偵じゃなし!名探偵!直に日本中が僕の名前を知る事になる。僕こそが世界最高の名探偵、江戸川」
織田作「すまなかった」
江戸川乱歩「ちょっと待ったぁ!」
織田作「トドメはいるか?」
「ああ…頼む…」
織田作「何か言い残す事はあるか」
「ありがとう…戦ってくれて…司令官はこの先だ…彼も救ってやってくれ…この地獄から」
「ありがとう…戦ってくれて…司令官はこの先だ…彼も救ってやってくれ…この地獄から」
織田作「ああ、わかってる」
太宰治「ボス、織田作を救援する為の異能力者部隊編成の許可を頂きたい」
森鷗外「いいよ、許可しよう。だが理由を教えて貰えるかな?」
森鷗外「どこへ行くのかな?」
太宰治「織田作の所へ」
織田作「死なば、多くの果を結ぶべし」
ジイド「ヨハネ伝第十二章二十四節。見かけによらず博識だな」
太宰治「ボス、あなただ。その黒い封筒にはそれだけの価値がある」
ジイド「これが俺の求めた世界だ」
織田作「なぜ求めた」
ジイド「お前はなぜ殺しをやめた?」
織田作「俺は小説家になりたかった。ある人に言われたんだ…そうすべきだと…その人は本をくれた。俺がずっと探していた小説の下巻だ」
織田作「その本は…とても素晴らしい本だった」
森鷗外「そう。そのお陰でこうして異能開業許可証は手に入り、事実上、政府から非合法活動は認可され、厄介な乱暴者は織田君が命を落として排除してくれている。大金星だよ」
森鷗外「なのに君は何をそんなに怒っているのかね?」
太宰治「織田作が養っていた孤児達の存在をミミックにリークしたのはあなただ」
森鷗外「太宰君…君はここにいなさい。それとも彼の元に行く合理的な理由でもあるのかね?」
太宰治「言いたい事が2つありますボス。一つ、あなたは私を撃たない。部下に撃たせる事もしない」
森鷗外「どうしてそう思うね?」
太宰治「利益がないからです」
織田作「その下巻は素晴らしい本だったが一つだけ欠点があった。最後に近い数ページが切り取られていたんだ」
織田作「その下巻の切り取られたシーンの直前にこういうセリフがあった」
織田作「人は自分を救済する為に生きている。死ぬ間際にそれがわかるだろう」
織田作「今になって思う。本をくれたあの男は俺を殺し屋だと知っていたのではないか…知っていて殺しをやめさせる為に声をかけたのではないか…」
織田作「最初に会った時、その男は俺に名乗った。ずっと忘れていたが、つい最近になって彼の名を思い出した」
織田作「その下巻の切り取られたシーンの直前にこういうセリフがあった」
織田作「人は自分を救済する為に生きている。死ぬ間際にそれがわかるだろう」
織田作「今になって思う。本をくれたあの男は俺を殺し屋だと知っていたのではないか…知っていて殺しをやめさせる為に声をかけたのではないか…」
織田作「最初に会った時、その男は俺に名乗った。ずっと忘れていたが、つい最近になって彼の名を思い出した」
織田作「そう…その小説にあった著者と同じ名前だ」
ジイド「先の大戦で俺達は、わずか40名の部隊で砦に籠る600人の敵を打ち倒した。だがそれは味方本部の計略だった」
ジイド「すでにその時、本国では和平交渉が行われており、和平後の敵交通網奪取という軍幕用幹部の不義に利用されたのだ」
ジイド「当然、俺達の行動は戦争犯罪になった。同胞が反逆者である俺達の相手となる」
ジイド「部隊の中には自殺する者もいた」
ジイド「俺達は祖国を失い誇りを失った…そしてただ敵を求めて戦い続ける荒野の死霊となった」
織田作「生き方を変える事は本当にできなかったのか?」
ジイド「俺は軍人として死ぬと仲間に誓った。それ以外になるのは不可能だ。いや…あるいはできたのかもしれない。生き方を曲げ、軍人ではない何かになる事は可能だったのかも知れない…お前が殺しをやめたように」
織田作「一つ心残りがある。友にさよならを言っていない。この世界でただの友人でいてくれた男だ。この世界に退屈し、ずっと死を待っている様に見えた」
ジイド「その男は俺と同じように死を求めていたのか?」
織田作「いいや…違うと思う」
ジイド「作之助…最後まで素晴らしい弾丸だ」
太宰治「ああ言った…言ったがそんな事今は」
織田作「見つからないよ。自分でもわかっているハズだ」
織田作「人を殺す側だろうと救う側だろうと、お前の予測を超えるものは現れない。お前の孤独を埋めるものは…この世のどこにもない…お前は永遠に闇の中をさ迷う」
織田作「わかるさ…誰よりもわかる…俺は…お前の友達だからな…」
太宰治「わかった…そうしよう…」
織田作「人は自分を救済する為に存在する…か…確かに…その通りだ…」