九十九由基「羂索の領域を解体する?」 天元「羂索の目的は私の本体が在る薨星宮だ。君達が奴を迎え撃つのは、その直上に張り巡らされた迷宮の一部屋だ。それぞれの部屋は空性結界といい結界術に長けた者ならばある程度中の構造を設定できる」 九十九由基「じゃあ私達が不利になるじゃん。羂索程の術師であれば自由に舞台を設定できるだろう」
天元「そう羂索に思ってもらうことが重要だ。ここは自分にとって居心地が良く地の利があると結界内に留まってもらうために。だがあくまで空性結界の主は私だ。空性結界の内側で戦闘を進め羂索に領域を展開させる。結界内の情報は主である私に筒抜けだ。羂索の領域を分析し領域のベクタパラメータを中和する設定を空性結界から流し込む」 九十九由基「よく分からんがそこなら羂索の領域を打ち消すことができるわけか」 天元「あぁ」 九十九由基「何秒かかる?」 天元「10秒あれば」 九十九由基「つまり10秒、私は私の領域を使わず術式の焼き切れない簡易領域で羂索と領域の押し合いをしないといけないわけか……いや私から領域を展開すれば羂索も領域を展開せざるを得ない。その方が手っ取り早くないか?私の術式が焼き切れてもこっちには脹相も凰輪もいる」 天元「駄目だ。それだと領域の外殻が九十九の領域になってしまう。羂索の領域の前に君の領域を消すことになる。それに君の領域に対して羂索が術式を温存できる“簡易領域”や“彌虚葛籠(いやこつづら)”で対抗してくるかもしれない」 九十九由基「それらの手段じゃモノホンの領域に対して時間稼ぎしかできないだろ。そこまでナメられてるかな私」 天元「何度も言うが羂索は数少ない私と肩を並べる結界術の使い手だ。簡易領域さえ他の術師のそれと同列に扱わない方がいい」 九十九由基「……じゃあやっぱり羂索に自ら領域を展開させ天元がそれを解体する。その後、術式が焼け切れた羂索を私が叩く」
『誤算』 羂索「領域展開 胎蔵遍野(たいぞうへんや)」 天元「この領域は渋谷で宿儺が見せた結界を閉じずに領域を展開し術式を発動する離れ業!解体すべき外殻が……ない!」 九十九由基「シン・陰流 簡易領域!」 九十九由基「クソ!(何て強力な結界!簡易領域がみるみる剥がされる!)」 羂索「私の領域にその程度の術で耐えられると思っているのか?」 九十九由基「(急げよ…天元!)」 羂索「……成程そういうことか。いかにも引き籠もりらしい旧態依然な作戦だ」 天元「(必中効果範囲の縁を外殻と仮定して私の空性結界ごと…消す!)」
羂索「天元…私は貴様と違い“生きてきたんだ”」 九十九由基「(簡易領域を全て剥がされた!)」 羂索「千年続く!竜戦虎争!合従連衡!呪いの世界を!」 羂索「空性結界ごと私の領域を解体したか。歳相応の意地を見せたな。だがもう遅い。せめて自ら領域で押し合えばここまで退屈な結果にはならなかっただろう。天元を信頼した君が悪い。天元は君達に重要な隠し事をしている。死滅回游の (式神が消えていない…!まだ意識があったか…!だがまともに動ける状態ではない。反転術式…使えないことはないだろう。式神で治癒の時間を稼ぐつもりだな。いいさ、私はその間に術式を回復させてもらう)」 羂索「治せよ!」 九十九由基「治さねぇよ!」
羂索「(限界か…) 虚を突いたつもりだろうが、もう少し頭を使ったやり方がいいんじゃないかな」 九十九由基「泥臭い方が好みなんだよ」 『伏兵兄、粘り腰で狙う!』 |