脹相「九十九ォ!」 九十九由基「(アレは重力の術式のインターバルを埋めるためではなく極小の“うずまき”の気配を紛らわすため!)」 羂索「(回復する暇き与えない!)」
九十九由基〈虎杖悠仁の未来に君は必要ないのか?〉 脹相〈どういう意味だ?〉 九十九由基〈どうもこうもそのまんまさ。弟の未来のために命を張ってその未来に君がいないんじゃ意味がないんじゃないのか?〉 脹相〈九十九、俺は“人”か?弟達が受肉した時思ったんだ。異形の肉体を持った弟達を“人”は受け入れられないと。だから“呪い”として生きる道を選んだんだ。だから殺した。渋谷で大勢。俺が殺したのは人間だけじゃない。血塗と壊相を殺したのも俺だ。俺が“人”として生きる道を選んでいれば、弟達が殺し合うことはなかったんだ。なんでだろう。なんであの時俺は…なんで…楽な道を選んだ〉 脹相〈“人”として苦しむ二人を俺は見たくなかったんだ。二人がそんなに弱くなんてないのに…そしたらどうだ。まるで罰のように“人”として苦しんでいる悠仁が現れた。きっと俺達は四人で戦う運命だったんだ。俺が楽をしたせいで悠仁を独りにしてしまった〉 九十九由基〈君が死んだらまた彼は独りだろう〉 脹相〈九十九、オマエは優しいな。でも駄目なんだ。俺はなんの信念もなく人を殺した。これ以上悠仁とは生きられない。ここしかないんだ。俺の命の使いどころは〉
脹相「こっちだ!加茂憲倫!」 九十九由基「脹相、“呪い”としての君はここで死んだ。生きろ。今度は人として」 羂索「今更何のつもりだ、天元」 天元「何が可笑しい」 羂索「何って、その面、それは自分で望んだ姿か?まるで」 天元「何のつもりかと聞いたな。気を逸らせればそれでいい」 羂索「死んどけよ、人として」
羂索「(なっ…んだ!?)」 九十九由基「ボンバイエで調整した質量の影響を私自身は受けない。ある一定の密度まではな」 羂索「(密度…!ボンバイエで後付けできる質量に制限がないとしたら) まさか!ブラックホール!」 『超高密度で強い重力を持つブラックホールでは、物質だけでなく光さえ脱け出すことはでない。地球を直径約2cmまで圧縮する程の密度で生まれるとされている』 九十九由基「重力を扱う割りに想定が甘いんじゃないか!?重力も質量も時間も突き詰めれば」
羂索「ふぅ、たまげたね実際」 天元「何故…術式反転か」 羂索「いや、今までの重力が術式反転だ。虎杖香織に刻まれていた術式“反重力機構(アンチグラビティシステム)”順転では心許ない出力と発動時間の制限を自身の肉体を領域とすることで底上げした。賭けだったがうまくいった。本当肝を冷やしたよ。本来なら世界中を巻き込む自爆を天元の結界と本人の意志でここまで抑え込んだ。そのおかげと言った方がいいかもね。随分と派手な余興だったな」 天元「貴様の退屈な人生の贖いのようだった」
天元「さらば友よ」 『いつかの知己・羂索の手に天元堕つ』 |