九十九由基「12年前、天内理子以外に星漿体はいなかったのか?勿論私は含めるなよ」 天元「天内理子ほどの素質を持った子はいなかった」 九十九由基「いなくはなかったというわけか…何故リスクを冒してまで同化を拒否したんだ?」 天元「拒否というより現実を受容した。星漿体との同化によって不死の私は肉体を初期化し単純な加齢による進化を止めていた。進化した私が人類の蠹害にならない保証はないからね。だが同化に失敗した私は進化の果て自我を肉体の外に伸ばしても結界術を利用しこうして理性を保っている。自信があったわけじゃないが、季節が変わるように当たり前にいつかはこうなると思っていたんだ」
九十九由基「ふざけんなよ。子供達に勝手に業を背負わせ利用してきた歴史を理性的だと?あまつさえ失敗したら“同化しなくても大丈夫でした”だ?それを理性と呼べるなら私のことは大聖とでも呼んで崇めろクソジジイ!」 天元「最早私に性別はないが、どちらかと言えばババアだよ」 九十九由基「盤星教が星漿体の暗殺でなく保護隔離に舵を切っていたら私は彼らの味方をしたよ…くそ…昔のことをタラレバ言うのは嫌いなんだ」 天元「私は聞こえない…というより聞こえるはずないんだ。同化を果たした時点で彼らは私なのだから。彼らは…何と言っている?」 九十九由基「教えるわけないだろう!天元との同化が星漿体にとってどういう結末なのか教えれば、善かれ悪しかれ年の功でご立派な受け身を取って悟ったつもりになるだろ?させない。オマエに楽なんてさせない。それが元星漿体の私の責任だ」 天元「もう少し君と話していたかった」
『11月16日 00:00 薨星宮直上』 羂索「君にはもう用も興味もないんだけど」 脹相「俺にはこれが興味なのかも分からない。だが漠然とオマエに対する殺意が湧いてくる」 羂索「…天元はどこいにる?」 脹相「あの喋る親指はオマエに会いたくないそうだ。嫌われ者だな」 羂索「そういう君は使い捨ての前座というわけだ。せいぜい踏ん張りなよ。死滅回游は既に役割を終えた。日本にいる非術師の同化前の慣らしは済んでいる」 脹相「(どういうことだ!?早すぎる…悠仁達は無事なのか?)」 羂索「つまりここで私に天元を獲られたら君達の負けだ。この国は終わり、もしかしたら世界もね。見せてあげるよ。終わりの可能性その一つを」
羂索「九十九由基は渋谷で天元との同化…私の言う呪力の最適化を“術師に成る”ことだと指摘した」 羂索「だが私にとってそれは同化の手前、死滅回游での検証に過ぎない。以前も言ったが私は彼女と違って呪霊のいない世界なんて目指してないしね。だが日本人が呪力資源として消費されることまで懸念していたのは驚いた。というより嬉しかったな。やはり彼女の考え方は私に近い。話がズレたね。私は以前から術師と並行して呪霊の可能性も考えていた。新しい呪力の形は呪霊をもう一段階上の存在に昇華させることで生まれるかもしれないと。だからこそ呪霊と人間の混血である君達には期待したんだけど、ガッカリだ。普通過ぎる」 脹相「次、弟達に触れてみろ。この余興を待たずに殺してやる」 羂索「はいはい💨進化した天元はヒトより呪霊に近いからね。天元と日本の非術師の同化は一億人の呪力を孕んだ呪霊に成ると私は見ている。“うずまき”のように何かしらの抽出も起こるかもね。どんな姿をしているのかな。私は今白い画用紙の前でクレヨンを握りしめた幼子のような心持ちだ」 脹相「オマエは何がしたい」 羂索「今の話を理解できなかったってことかな?」 脹相「違う。それを成してオマエは何を得る?何がオマエを突き動かすかと聞いているんだ」
羂索「面白いと思ったから」 羂索「面白いと思ったことが本当に面白いかどうかは実現するまで分からない。もし一億人の呪力の魂が抱腹絶倒のマヌケ面だったら君はどうする?」 羂索「笑っちゃうよね」 脹相「穿血!」 |