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中森警部「はぁ?この展示室に入った時には…怪盗キッドは立ち去った後で青の玉座(アズール・スローン)にこの吉田社長の遺体が座らされていたって言うのか!?」 新一(キッド)「ええ、足元にあるサイレンサー付きの拳銃でこめかみを撃ち抜かれたその状態で」 新一(キッド)「一見、キッドが社長を殺して逃げたように見えますが、彼が残したカードには “目当ての宝石ではなかったので御暇します” と書いてあり、遺体の事には全く触れていない事と、彼は未だかつて人の命だけは奪った事がないというのを踏まえると、彼が立ち去った後で吉田社長は何者かに殺害されたと僕なら推理しますけどね」 『上地九哉(38) 吉田工業社長秘書』 『吉田さつき(39) 吉田工業社長夫人』 上地九哉「そもそもキッドと社長はどうやってこの展示室に入ったんですか?この入り口から入ったのならあの防犯カメラに映っているはずですよね?」 白馬探「ルーバーレンズですよ。カメラのレンズを遮ってる半透明な板、あれがルーバーレンズです」 鈴木次郎吉「しかし半透明な板なら透けて見えるんじゃ…現に防犯カメラも透けて見えておるし」 白馬探「いえいえ、このレンズは特殊でね、上から見るとカマボコのようなパーツが連なっていて、その一つ一つがレンズになっているんです。なので縦の線は横に広がる事で薄まって見えなくなりますが、横の線は横に広がっても重なり合う為、消えずに見えているんです。論より証拠!実際に見てみましょう。入り口の扉は開いているのに、このレンズで見ると…ホラ閉まってるように見えます」 鈴木次郎吉「本当じゃ!」 中森警部「すごい!」
白馬探「問題はキッドかこれをいつ付けたかですが」 キッド「そいつは簡単だよ。一般客に展示中は展示室の中にも警備の人間はいたんですよね?」 中森警部「ああ」 キッド「展示時間終了間際に何か変わった事とかありませんでしたか?」 中森警部「そういえば老人が落としたコンタクトを探すのを一瞬手伝ったと機動隊員の一人が言ってたよ。扉の向かって右側のこの辺で」 キッド「だとしたら恐らく皆さんがソレに気を取られてるスキにキッドはここに隠れたんでしょう。施工業者に混ざって取りつけておいたこのダミーの消火栓の中にね」 中森警部「じゃあその老人もグルだったのか」 キッド「ええ、そして社長やスタッフがミスト装置を作動させ展示室のチェックを終え立ち去った後、彼はこのダミーの消火栓から出てルーバーレンズを防犯カメラの前に取り付け堂々と扉のロックを解除して展示室の中に入ったんです」 鈴木次郎吉「じゃがロックの4ケタの暗証番号は儂と吉田社長と加勢部長しか知らんはずじゃが」 キッド「キッドはここに隠れてたんですよね?ボタンの音ぐらい聞こえますよ。その音が4回なら4ケタの暗証番号だとわかるし、その番号以外は押す必要がない為、近くでよーく見れば指紋でどの数字が押されているかもわかる。その数字が4つとも違っていたら24通り、3つの数字のどれかを2回重複して使っていたら36通り、全部試しても彼なら20秒もかかりませんよ」 中森警部「なるほど」 鈴木次郎吉「さすが工藤新一君じゃ」 キッド「いえいえこれ位当然ですよ」 コナン「(テメーがやった通りに言ってるだけだがな)」
中森警部「つまりキッドにまんまとしてやられたワケか」 白馬探「いえ、ワザとそう仕向けたんです。怪盗キッドが湿気に弱いといっても彼のようなナイロン製の服を着ていれば障害にはなりませんしね」 鈴木次郎吉「だとしたら、なぜ湿気に弱いなんて助言を?」 白馬探「彼にルーバーレンズを使わせる為ですよ。レンズを通せば縦のラインは消えますが全体的にモヤってしまう…なので最初から室内を水蒸気でモヤらせておこうと思ったんです」 鈴木次郎吉「じゃあまさかランダムに変わる光る線も!?」 白馬探「ええ、ルーバーレンズを使えばこの線を逆手に取れると思わせる為…消火栓が設計図よりも出っ張っている事にも気づいていましたし、暗証番号のプッシュ音を出すように指示したのも僕です。そう、すべては怪盗キッドをこの展示室におびき寄せ閉じ込める為の策略だったんですが」 白馬探「かかったのが東の高校生探偵とコナン少年で、しかも殺人まで起きてしまうとはとても残念です。とにかく殺人現場の検証をしましょうか。工藤君もちろん君も一緒に」 キッド「ああ」 白馬探「コナン君も立ち合ってくれるかい?君の推理も聞かせて欲しい」 コナン「うん、いーよ」 キッド「(しかしまさか白馬が帰って来てるとは…ずっとロンドンに留学してろっつーの)」 中森警部「おい、ちょっと待て。キッドの犯行現場にいたんなら、やらねばならん儀式がある」 キッド「それってまさか…痛ててててて!痛いっスよ中森警部」 中森警部「どうやらキッドの変装じゃなさそうだな」
白馬探「…っとまあ一通り現場検証しましたが、気になる点、工藤君はいくつありましたか?」 キッド「そっちはいくつなんだよ?」 白馬探「3つですが」 キッド「オ、オレも3つだよ」 白馬探「では答え合わせしましょう。まずは一つ目、出入り口の向かって右側の壁に残った血痕と弾痕。これを見る限りこの場所で射殺されたはずなのに、なぜか青の玉座(アズール・スローン)まで遺体が運ばれている点と、二つ目は、遺体の両足の靴の爪先に付いた何かの跡。この二つは君のと同じかな?」 キッド「あ…ああ」 白馬探「じゃあ君の三つ目は何ですか?」 キッド「あ…だから…それは」 キッド(コナン)「遺体に向かって右側のカーテンに付着した飛沫血痕。ホラ、この辺りに飛んでるこの血」 キッド(コナン)「これが被害者の血ならどういう状況でここに飛んだのか説明がつかない。これがオレの三つ目。そっちのと同じか?」 白馬探「ええ…コナン君は他に何か気づいたかい?」 コナン「ボクも兄ちゃん達と同じだよ。ねえねえ新一兄ちゃん」 キッド「ん?」 コナン「推理する時は蝶ネクタイのマイクからオメーのイヤホンに声を飛ばすから余計な事は喋るんじゃねぇぞ」 キッド「へいへい」 コナン「つか何でオメー、オレに顔が似てんだよ」 キッド「知るか!先祖が同じだったんじゃねぇのか?正直声も特に変えてねぇけど」
鈴木次郎吉「ウーム、確かに妙な血痕じゃ」 中森警部「大体何でこんなカーテンをつけてんだ?なきゃ犯行が外から丸見えだったのに」 鈴木次郎吉「最初はそうじゃったが、外が丸見えだとさすがに怖すぎると苦情が入ってのォ」 中森警部「なるほどねぇ」 白馬探「おのー、展示室内のボタンはコレ一つだけなんでしょうか?」 鈴木次郎吉「ああ、展示室の中からはそのボタンを押すだけで扉の開閉できるぞ」 白馬探「なるほど、ではとりあえず別室で話をお聞きしましょうか。この扉の暗証番号を知っていた加勢部長と遺体発見直前に被害者である吉田社長から “宝石は私が死守する” ってメールを受け取った秘書の上地さんと社長夫人のさつきさんに。君達も事情聴取に立ち合いますよね?」 キッド「あ…ああ」 コナン「もちろん」 白馬探「事情聴取の前に君にお聞きしたい。ぶっちゃけ誰が殺人犯だと思います?」 キッド(コナン)「誰って…そりゃまあ…停電した時も吉田社長のそばにいたっていう技術部部長の加勢さんが一番怪しいけど…社長夫人のさつきさんと秘書の上地さんも臭うがなぁ…あの2人同じ香水の匂いがしたからできてるかもしれない」 白馬探「それだけですか?なーんだ…日本警察の救世主とか言われてたからもっとすごいかと思った」 コナン「おい挑発には…」 キッド「あ、そうそう、もう一つあったよ。吉田社長の自殺っていうケースがな」 コナン「(え?)」 キッド「だってそうだろ?遺体の足元に拳銃が転がってたんだ。普通自殺って考えて」 白馬探「忘れてたんですか?あの拳銃にはサイレンサーが付いていた事を」
白馬探「サイレンサーが付いた拳銃でこめかみを撃ち抜いて自殺するには体勢的にかなり無理があるし、たとえそうやって撃ったとしてもこめかみに銃口が接触しコゲ跡が残る。そもそも自殺者がサイレンサーを付ける理由は皆無。つまり、あれは殺人以外ありえないんですよ工藤新一君」 コナン「あ、だからね」 白馬探「しーっ、僕は彼と話をしているんだ。口を挟まないでくれ。では質問を変えよう。君は本当に工藤新一なのか?」 | |
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