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目暮警部「新一君が推理ショー?じゃあ殺人事件が解けたんだね」 新一(キッド)「ええ、犯人もトリックもわかったのでお話しますよ。まあ蘭の父さんみたいに眠りはしませんけど」 白馬探「それは奇遇ですね。僕も真相に辿り着いたのでまた答え合わせしましょうか」 キッド「あ…ああ」 白馬探「構わないかい?コナン君」 コナン「あ、うん、ボクは関係ないけどいいんじゃない?」
キッド(コナン)「では事件の流れを簡単におさらいすると、怪盗キッドの犯行予告時刻の10分前に吉田社長と加勢部長とスタッフ数人でキッドが狙うあの “青の玉座(アズール・スローン)” と展示室の最終チェックを終え、全員ここから廊下に出た途端に照明が落ちた。防犯カメラには何も映ってなかったが、僕とコナン君は異変に気づき暗闇の中ここへ駆けつけたら、拳銃で頭を撃たれた吉田社長の遺体が青の玉座に座らされているのを発見」 キッド(コナン)「キッドの姿が防犯カメラに映らなかったのは、さっき説明があったようにカメラの前にルーバーレンズを置いてたから。しかしそれはキッドが多分その手で来るだろうと想定して仕掛けたワナ。でももう一人ルーバーレンズをキッドが使うと予想していた人物がいたんです。それはもちろん吉田社長を殺害した犯人。恐らく犯人はこう思ったんでしょう。“キッドが展示室に入る姿が防犯カメラに映らないのなら、展示室に戻る吉田社長の姿が映らなくても誰も疑問に思わないだろう” ってね」 高木刑事「社長の姿が映らなくてもって事は」 鈴木次郎吉「まさか吉田社長はキッドが来る前に殺されていたという事か!?」 キッド(コナン)「ええ、展示室の最終チェックをスタッフ達が終えた時点でね。よく考えてみてください。キッドはダミーのこの消火栓に隠れてたんですよね?予告時刻の直前に停電なんてさせる必要はありません」 キッド(コナン)「恐らくキッドは犯行を終えた後、ルーバーレンズを外し展示室の扉が開いてるのを警察に見せ、慌てて突入する機動隊員に紛れて逃げるつもりだったんでしょうから」 怪盗キッド「(あ、当たってやがる)」
加勢増男「何を言ってんだ君は!?展示室の最終チェックを終えた後、吉田社長は展示室から出てきたじゃないか。 “少し確かめたい事がある” って私に言って一人で展示室に籠られたけど、10秒程で出て来られたし、その映像だってちゃんと残って」 『加勢増男(42) 吉田工業技術部部長』 白馬探「それ本当に吉田社長だったんでしょうか?あの時、展示室の最終チェックをした社長やあなたやスタッフ達は全員防護服を着ていて目と口がギリギリ外に出るぐらいしか顔が見えていませんでした。その上、社長は昨夜カラオケでコンタクトを無くして眼鏡でしたし元々マユ毛とヒゲがフサフサで、しかもそのカラオケでノドを潰され声が枯れていたんですよね?キッドのような高度な変装技術がなくても成り済ますのが実に容易そうだと思いませんか?」 加勢増男「しかしその後社長は展示室からOKサインをしながら出て来られたから、あの時もう玉座に社長の遺体があったのなら防犯カメラに映ってるはず」 白馬探「僕もそう思って僕のスマホに転送して頂いた防犯カメラの映像を確認してみたんですが、この通り吉田社長に成り済ました犯人の頭に隠れて青の玉座がほぼ見えていないんです」 白馬探「その後、皆さんがカメラに向かって報告している後ろで扉が閉まるまでこの人物は動いていないので、遺体が隠れる位置に意図的に立っていたんでしょう」
目暮警部「じゃあやはりその最終チェック中に吉田社長は殺されたというのかね?」 白馬探「ええ、多分犯人はスタッフの中に紛れていたんだと思います。5人が6人に増えていてもそんなに気になりませんし、しかもあの時スタッフは全員帽子を被っていて顔の判別がつき辛かったですしね。もちろん犯人はすでに社長の顔に変装してから帽子を被っていたと思いますけど。そしてチェックを終え社長が展示室から出ようとした時に犯人は後ろから声をかけたんです。“扉の右側の壁の下の方が何か変です” とでも言って、そう、社長をそこにしゃがませてから再び声をかけて振り向かせ、こめかみに弾丸を撃ち込んだ」 白馬探「その後、犯人は帽子を脱ぎ社長に扮した顔で加勢部長に “少し確かめたい事がある” と枯らした声で伝え扉を閉め、社長の遺体を青の玉座まで運んでOKサインを出しながら展示室から出て来たというワケです」
吉田さつき「でもこんな近くで拳銃を撃ったんなら音で誰かが気づくんじゃなくて?加勢さんは何も聞いてないの?」 『吉田さつき(39) 吉田工業社長夫人』 加勢増男「ええ、ミスト装置の音がうるさくて」 上地九哉「そもそもその映像だけじゃ誰が犯人かわからないですよね?」 『上地九哉(38) 吉田工業社長秘書』 キッド(コナン)「クセでわかりますよ。例えば腕を組む時、どっちの腕が上になるか。人はそれぞれ決まっているんです。両手を体の前で組むのも同じでいつもと違う組み方をすると違和感がある。この2枚の写真の社長とさつきさんは右手が上、問題なしと報告している加勢部長も右手が上ですが、社長に扮しているこの犯人は左手を上にして組んでいる。そう秘書の上地さん」 キッド(コナン)「今のあなたのようにね」
上地九哉「違いますよ!右手を上にして手を組むなんて捜せばいくらでもいますよ。それに私はこの通り社長からメールを貰っているんだ」 キッド(コナン)「ああ、あなたと夫人に送られて来た“宝石は私が死守する”ってやつですね?そんなの社長を殺した後でスマホをすくね自分と夫人にメールを送ればOK。後は停電後スタッフからこっそり離れて廊下にスマホを捨て変装を解いて防護服を脱ぎ、たった今社長からメールが届いたって顔で警備室に駆けこんだんですよね?」 上地九哉「君は肝心な事を説明していない。たったの10秒だぞ?その社長に扮した犯人が展示室に籠った時間は。たった10秒で社長の遺体を玉座に運ぶなんて私にはとても」 キッド(コナン)「ファイヤーマンズキャリー知ってますよね?」 白馬探「さすが工藤新一君だ。君もそれに気づいたか。僕が実践するから相手役をお願いするよ。まず寝ている相手のヒザをこう立てて、相手の両足の靴の爪先を右足で踏んで固定し、そのまま相手の両手をつかんで自分の方へ一気に引き寄せ相手の体の下にこう潜り込めば」 白馬探「一瞬で人を肩に担ぐ事が出来る。相手が自分と同じ体格ぐらいまでなら間違いなく。この方法で担げば10秒もかからず遺体を玉座に座らせて戻って来る事が可能です。遺体の靴の爪先についた跡は犯人が遺体の足を固定した時に付いた物でカーテンに付いた血痕は担いだ弾みで飛んだ遺体の血液」
白馬探「ちなみに遺体を玉座まで運んだのはこのすり替わりのトリックに気づかせない為。扉のすぐ横つまり防犯カメラの死角に遺体があったら、カメラに映ってないけど社長はもう殺されていて最後に出て来た社長は本人ではないかもと疑われる恐れがあるからでしょうかね?」 白馬探「ファイヤーマンズキャリーはその名の通り消防士が要救助者を担ぐ方法。元消防士のあなたならできますよね?」 上地九哉「忘れちゃいましたよそんなの」 白馬探「玉座の前に一部が欠けた滴下血痕がありました。あれは犯人が遺体を玉座に座られる時、犯人の足元に垂れた血。だからまだあなたの靴のカカトに残ってますよ。殺された吉田社長の血痕がね」 吉田さつき「でも何で主人を?」 コナン「多分秘書さんと奥さんの浮気が社長にバレたかからじゃない?だって社長さん左手の薬指に跡がつくぐらい結婚指輪してたみたいなのに今日は着けてなかったし、机の上の奥さんの写真も伏せてあったし、奥さんと秘書さん同じ香水の匂いだもん」 加勢増男「それで社長元気なかたのか」
上地九哉「ああ、先週社長に言われたよ。“キッドの件が片付いたら妻と別れてお前をクビにする”と。こっちは株で失敗しクビが回らないっていうのに。それで今回のルーバーレンズのトリックが使えると思いつき元気のない社長をカラオケに誘うように部下に言ったんだ。社長のノドを潰して成り済ましやすくする為に」 上地九哉「コンタクトを隠したのはカラオケで酔い潰れた社長を迎えに行った時。泥酔した社長に一曲歌えとマイクを差し出されたけど私は受け取れなかった。マイクを握れば社長とカラオケで声がかすれるまで熱唱していた頃を思い出し、殺意もかすれて消えてしまいそうだったから」
キッド「んで?いつまで担いでるつもりだよ?」 白馬探「そうですねぇ。担いだまま警視庁まで歩いて行くっていうのはどうですか?怪盗キッド」 中森警部「何ィ!」 怪盗キッド「やっぱバレたか」 白馬探「当然」 怪盗キッド「でも歩いてっていうのは無理じゃね?」 白馬探「ご心配なく。そのくらいの体力は十分」
鈴木次郎吉「ゲホ!コホ!どういうことじゃ?」 中森警部「説明しろ」 白馬探「今回の推理だとキッドが展示室に入った時にはすでに玉座には遺体があった事になる。なのにカードには遺体の事は何も書かれていなかった。いや書く暇がなかったんだ。コナン君がすぐに展示室に入って来たから。恐らくコナン君に袖口を嗅がせて自分は撃ってないと主張したんでしょう。“このままだと自分が殺人犯にされてしまう。犯人は別にいるのにこの謎を解かなくていいのか” と。そしてコナン君は決断したんです。工藤新一に電話してこの殺人事件の真相を究明してもらおうって。そうなんだろ?」 コナン「え?あ、うん」 白馬探「多分、電話で聞いた工藤君の推理をコナン君が蝶ネクタイ型のマイクを通して工藤君に変装したキッドのイヤホンに送っていたんでしょう」 コナン「(あっぶねぇ。バレたかと思ったぜ)」 | |
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