- リンクを取得
- ×
- メール
- 他のアプリ
BUNGO STRAY DOGS | |
原作(Original Story): 朝霧カフカ(Kafka Asagiri) 文豪ストレイドッグス 第112話ネタバレ | |
第112話 何ぞ我を見捨て給うや | |
配信日 | 2024年2月2日 |
ヤングエース | 2024年3月号 |
アニメ | 第61話 黄昏のさようなら |
単行本 | 第25巻 |
次号 | 2024年3月4日 |
登場人物 | 太宰治 中原中也 フョードル ゴーゴリ 中島敦 国木田独歩 福沢諭吉 福地桜痴(神威) |
STORY | |
中原中也「くそ…取れねぇ。被せるだけでいいってのにボスが面白がって接着しちまったから」 太宰治「はは」 フョードル「…ではすべて…」 太宰治「そう、演目だよ。そもそも私がエレベーターから脱出できたのも中也が外から重力干渉をしたお陰だ。そして銃弾を重力で遅くし、私の頭を撃つ。弾は頭蓋骨で止まる。この手、昔よく使ったねぇ」 中原中也「うるせぇ」 フョードル「本当の目的?」 太宰治「その傷。爆発で手を怪我すればヘリの操縦を吸血種に任せるしかない。そして吸血種はー」 フョードル「待っ」 フョードル「ああ…神よ神よ何ぞ我を見捨て給うや(エリ エリ ラマ サバクタニ)」
福地桜痴「懐かしいな」 福沢諭吉「ポオの小説空間だ」 福地桜痴「この風景で久闊を叙しながら儂を説得する心算だったか…ゴホゴホ」 福沢諭吉「もう喋るな」 福地桜痴「構わん。為すべきは皆為した」 福沢諭吉「ああ、お前の勝だ源一郎」 福地桜痴「本日付で国連安保理決議二四一五が採決され、人類軍憲章の条項修正案が発効される。そこには今回のような事態を再び招かぬよう各国の国軍に直轄指令可能な指揮系統を認める特例条文が追加される」 福沢諭吉「そしてその最高司令官が大指令(ワンオーダー)を持つ。世界の軍を個人が所有する」 福地桜痴「そうだ」 福沢諭吉「だがそれは世界を征服する為ではない。お前の目的は世界から戦争を無くす事」
中島敦「気をつけて下さい。まだ薬剤が躰に残っています」 国木田独歩「俺達は…福地に背後から襲われて…」 中島敦「傷は既に治療されています。この装置の電源を切れば、無傷で賦活するよう設定されていたんです。最初から誰も傷つける気はなかったんです。凡ての始まりは三十六年の時間の重み…」 福地桜痴「三十六年後だ。或る日、雨御前による暗号が届いた。そこには三十六年後に起こる世界大戦の予言が記されていた。多国間紛争が火種となり、発達した無人兵器と生物兵器が二憶一千万の人命を奪うと…福沢…お前なら如何する?」 中原中也「で?貧血野郎は死んだのか?」 太宰治「ああ、ドストエフスキーは間違いなく死んだ」 ゴーゴリ「そうか」 太宰治「お目出度う、ゴーゴリ。彼を殺したかったんだろう?」 ゴーゴリ「ああ、その通りだ。いや違う…いや…その通りだ」 中原中也「何だこいつ?」 ゴーゴリ「ドス君と交わした言葉は決して多くない。だが、彼と会って以降の人生はそれまでとは全く別物のように感じられる。ドス君の言う通り僕は“自分を見失う”為に戦ってきた。そして今、そうなった。今はただ…」
福地桜痴「福沢、戦争は何故起こる?」 福沢諭吉「戦争が起こる理由?」 福地桜痴「ああ、嘗てこの国では藩と藩が戦争をし殺し合っていた。だが今日、県と県が殺し合う可能性はあるか?」 福沢諭吉「有り得ぬ」 福地桜痴「何故?何故昔は争い、今は争わぬ?」 福沢諭吉「当然だが関係性の問題だ。隣県には訪問も容易で知人・家族も多い。それに同じ日ノ本に納税する同胞だ。戦争などする気も起らぬ」 福地桜痴「そうだ。昔、藩と藩は主権の異なる別の集団、即ち“かれら”であった。だが交流も容易な隣県は同一集団、即ち“われら”となって」 福沢諭吉「戦争は“われら”と“かれら”の間でしか起こらない…か」 福地桜痴「その通り。そして“われら”と“かれら”を峻別する物的境界線はない。宗教、主権、民族…どれも時代によって移ろう単なる“感情”だ。中世にはあった。“かれら”との戦争…領主同士の戦争も宗教間の戦争も交通や通信技術の発達により“われら”になって消えた。つまり戦争の原因は人類の愚かさなどではなく単に“われら”と“かれら”という自他認識の誤謬でしかない。故に五百年か千年後には通信・交通の進歩で“かれら”は自然と“われら”になり、放っておいても戦争は消滅するだろう。だが儂はそんなに待てぬ。十年…いや一年でも早く戦争を“あの地獄”をこの世から消し去りたい。故に儂は国家という障壁を廃し人類を皆“われら”にしようと考えた」 福沢諭吉「それが“国家の消滅”か…」
福沢諭吉「あれはお前が金団を盗んで来た時だな」 福沢諭吉「ああ、だが戻れぬ。聞け源一郎、人類の統一など不可能だ。さしもの頁でも数百の国家を一夜で統合など出来ぬ。整合性の制約があるからだ。“起こりそうにない”事は起こせない。それに気付かぬお前ではあるまい」 福地桜痴「ああ、ならば訊くが福沢、国家とは何だ?欧州の政治学者M・ヴェーバーが“暴力の独占”という概念を提唱した。その中で国家とは“正当な物理的暴力行使の独占を実効的に要求する人間共同体”と定義される」 福沢諭吉「国家とは暴力…?」 福地桜痴「そうだ。大雑把に云えば国家とは暴力の権利を持つものだ。判り易いのは軍事統帥権だな。軍を動員する権利を持つのが国家だ。他にも警察や警備、つまり“必要な暴力”は須く国が認可する。お前達探偵社も国から許可証を受けて銃を携行しておるだろう?中世、近代国家成立以前には領主や藩主が許可なく武装し戦争を起こせた。定義からいけば、この頃は領主や藩主が国家と云える。さて、以上より国家を廃する為に必要な“それ”が導き出される。判るか?大指令(ワンオーダー)!」 福沢諭吉「その通り人類軍の総帥がワンオーダーを使用すれば各国は軍権、即ち国家主権の根幹を喪失する。自分で軍を動かせぬのだからな。すべての軍事力が人類軍麾下となれば戦争は起こらん。右手と左手で喧嘩するようなものだからだ」 福沢諭吉「その為のテロ計画か…!(すべては人類軍とワンオーダーを手にする為。その為に巨大テロで世界を揺さぶり各国首脳を動かした。源一郎は戦場に赴き、そして戦争を憎んだ。だから戦争を無くす計画を…)」 福地桜痴「今後世界は人類軍総帥を頂点とした超国家人類連邦を樹立、通貨・税制・法律を統一し、移住・移民を促進させて皆を“われら”にする。そこまでお膳立てが揃えば頁が効く。現実が改変され“人類は統一されて当然”と誰もが思う。戦争は無くなる。永久に」 福沢諭吉「…源一郎、それは無理筋だ。仮に戦争が無くなっても、その世界にあるのは総帥一人による独裁だ。そして歴史が証する通り独裁は必ず腐敗する」 福地桜痴「そうだ。たがらお前に“あれ(ワンオーダー)”を使わせる必要があった」 福地桜痴「何故ワンオーダーがお前の命令を聞いたと思う?福沢…儂の首を落とせ。テロを止めた英雄として人類軍の総帥となれ」 | |
← 前の話 | 次の話 → |