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Detective Conan | |
原作(Original Story): 青山剛昌(Gosho Aoyama) TVアニメ『名探偵コナン』 第SP1話 | |
第SP1話 キッドVS高明 狙われた唇 | |
放送日 | 2024年3月30日 |
OPテーマ | Unraveling Love ~少しの勇気~ (歌 : 倉木麻衣) |
EDテーマ | You & I ( 歌 : 倉木麻衣) |
アニメ | 第983話 キッドvs高明狙われた唇(前編) 第984話 キッドvs高明狙われた唇(後編) |
原作 | 第96巻File-4「氷中」 第96巻File-5「入替」 第96巻File-6「翻弄」 第96巻File-7「遺品」 |
CAST | |
江戸川コナン Edogawa Conan CV.高山みなみ 毛利小五郎 Mori Kogoro CV. 小山力也 毛利蘭 Mori Ran CV. 山崎和佳奈 服部平次 Hattori Heiji CV.堀川りょう 遠山和葉 Toyama Kazuha CV.宮村優子 怪盗キッド Kaitō Kiddo CV.山口勝平 鈴木次郎吉 Suzuki Jirokichi CV.佐藤正治 中森銀三 Nakamori Ginzo CV.石井康嗣 大和敢助 Yamato Kansuke CV.高田裕司 上原由衣 Uehara Yui CV.小清水亜美 鳥越 苗路 CV.浪川大輔 山本 萌奈 CV.明坂聡美 男性 CV.中村光樹 男性 CV.田邊幸輔 |
NEXT CONAN's HINT | |
STORY | |
コナンは、東京にやってきた平次、和葉とともに世界最大級のコンクパール「妖精の唇(フェアリーリップ)」が展示されている博物館“鈴木ミュージアム”にやってくる。怪盗キッドがこの宝石を狙っているらしい。鈴木次郎吉からキッドへの挑戦状には「その宝石は全方向から涼やかに見ていただける準備をしています」と書かれており……。今回の1時間SPでは、平次・和葉の恋模様を振り返るダイジェスト映像、劇場版最新作『100万ドルの五稜星(みちしるべ)』に繋がる新規映像にも注目。 | |
服部平次「(ただ単に景色のええとこで告るだけやったら工藤のヤツに負けてしまう)」 服部平次「(なんせあいつは人がぎょうさんおった清水の舞台で…チューしよったからのお…ほんま半端ないで…)」 遠山和葉「何にビックリすんの?」 服部平次「か…和葉!?」 遠山和葉「ほんで何にビックリなん?」 遠山和葉「青ノリや!蘭ちゃんたちに見られたら笑われてしまうわ」
毛利小五郎「またあの金持ちのじいさん、ド派手にキッドに喧嘩ふっかけやがった」 コナン「あ、でも"その宝石は全方向から涼やかに見て頂ける準備をしています"って書いてあるよ」 コナン「何か工夫してあるかもしれないね」 『一週間前』 鈴木次郎吉「ダメじゃ!ダメじゃ!」 鈴木次郎吉「こんな警備体制ではまたあの月下の奇術師にまんまと盗まれて楽々と逃げられてしまうわい。この際、彼奴に盗まれるのは目をつむろう。しかし彼奴を絶対逃がさないもっといい手立てはないのか!?」 中森銀三「だーかーらーここの宝石の周りの警備の人数をもっと増やせばそもそも盗まれねぇって言ってんだよ!」 鈴木次郎吉「今回もあのキザな悪党の不敵な笑みを見せつけられる羽目になるじゃろうのォ」 鈴木次郎吉「わざわざ警視庁まで来たというのにとんだ無駄足じゃったわい」 「しかし相談役、中森警部の言う事ももっともです。もっと宝石の警備を固めた方がいいのでは?」 鈴木次郎吉「そんなことしてもどーせ盗られてしまうわい。さっきも言ったが守りより攻めじゃ。何としてもヤツを逃せない策をが考えねば」 諸伏高明「内部の守りを固めずに外部を攻めるは愚策である。その昔、中国で名を馳せたある軍師が、そう言ったそうですよ」 鈴木次郎吉「あんたは警察の方か?」 諸伏高明「ええ、警視庁ではありませんが」 鈴木次郎吉「しかし、守りを固めると言われてもどうすれば…展示物を客に見せる気があるのかと毎回批判されておるし…」 遠山和葉「氷?」 鈴木次郎吉「この宝石の展示スペースだけ硬質ガラスで囲んで室温を他の部屋より下げてある」 鈴木次郎吉「儂の知恵ではないわ。これは今日もわざわざ助っ人に来ていただいた」 諸伏高明「"兵は神速を尊ぶ"とね」 毛利小五郎「シンソク?」 毛利蘭「三国志の武将の名言よ。諸伏警部どうしてここに?」 諸伏高明「正確には、私宛てらしき封筒ですが、字が滲んでいて読みづらく、差出人も不明らしいので」 毛利蘭「うん、長野で事件に遭った時に。ほら、和葉ちゃんも会ったことのある大和敢助警部や上原由衣刑事と幼馴染らしいよ」 遠山和葉「ほんまぁ?」 毛利蘭「何か大和警部に"こうめい"って呼ばれてて、本当に諸葛亮孔明みたいに頭キレッキレなんだから」 遠山和葉「へぇ 」 キッド「(高校生探偵2人に)」 キッド「(長野軍師みてぇな刑事だと?)」 キッド「(さすがに今夜盗むのはやめとくか…日が経てばあの氷も徐々に小さくなるだろうしな)」 諸伏高明「それにしても見事なコンクパールですね。色や大きさや形もさることながら」 諸伏高明「この表面に出た模様は絶品。まさにフェアリーリップの名にふさわしい」
鳥越苗路「さすが相談役がわざわざ召喚された刑事さんだ。なかなかお目が高い」 鳥越苗路「このコンクパールは三重県の英虞湾(あごわん)に眠っていた巨大なアコヤ貝の中にあった真珠で、その真珠独特のオリエント効果の輝きに魅せられて、大牧をはたいて買い付けた唯一無二の一品」 『宝石ブローカー 鳥越 苗路(45)』 鳥越苗路「今回キッド捕獲作戦に一役買うということで、とても光栄に思います。そのかわり、盗まれた場合はちゃんと補償してくださいね」 鈴木次郎吉「ああ」 鳥越苗路「何たってこの宝石はオークションでもう高額の買い手がついている私の財産なんですから」 山本萌奈「嘘よ!それは私の祖父が海外旅行中にカレブの大富豪から貰った大切な贈り物よ!あんたがその宝石の価値を調べてくれるっていうから預けたのに返してくれないじゃない」 鳥越苗路「私の真珠とよく似ていたので調べさせて貰いましたが、私の記憶ではもうお返ししたかと」 山本萌奈「ええ返して貰ったわよ。本物のリングに模造品のコンクパールを付け替えられてね」 鈴木次郎吉「おいおいどういうことだね」 鳥越苗路「いやたまにいるんですよ。ああいうわけのわからない客が」 山本萌奈「とにかく今すぐに返して!あのコンクパールは祖父が祖母に贈ったマリッジリングの宝石でもあるんだから!先日亡くなった祖母の棺に入れて天国に持ってって貰いたいんだからね」 諸伏高明「中森警部」 中森銀三「あ?」 諸伏高明「靴の裏にカードが」
服部平次「(妖精の唇を頂きに参上する…唇を…いただきに…)」 服部平次「ちゃうねん!」 コナン「おいキッドが」 服部平次「うるさいわい」 遠山和葉「ラブの?」 毛利蘭「ラブの」 毛利蘭「えーっ、今度は本当にホントなのに」 中森銀三「しかしキッドのヤツ、儂の靴の裏にいつこんなカードを貼り付けやがったんだ?」 毛利小五郎「何?」 コナン「"今回はパス"ってカードもあるよ」
鈴木次郎吉「どういうことじゃ?」 諸伏高明「予めいろいろなパターンのカードを床に仕込んでおき、これと決めたカードの上を中森警部に歩かせて踏ませ、予告状を示すことによって、たった今にわかに決行を決めたにもかかわらず、まるで手の内に熟考した計画があるかのように思わせたかったんでしょう」 諸伏高明「もちろん、これらの余分のカードは後でこっそり回収するつもりだったんでしょうけど」 中森銀三「なるほど、つまりさっきワシに妙な玉が転がってるって言っていた機動隊員がキッド。さっきの隊員はどいつだ!」 中森銀三「お前か!」 隊員「い…いえ…もう逃げてしまったのでは…」 キッド「(やっべぇ!あの軍師みてぇな刑事にバレバレじゃねぇか…)」 キッド「(でもまあ、確かにさっき咄嗟に思いついた計画だけど…天井の細工は仕掛け済みだし試す価値はありそうだ)」 遠山和葉「平次どないする?今晩は蘭ちゃんトコに泊まるつもりやったけど」 服部平次「そらせっかくやから夜中までここにおってキッド捕まえるのに協力せなアカンやろ」 遠山和葉「ほんならアタシもおって加勢したるわ」 服部平次「アホ!相手は怪盗やぞ?危ないから帰れ」 遠山和葉「そっか…私がおったら平次の邪魔してしまうかもしれへん」 遠山和葉「ホンマ?」 鳥越苗路「ええ、私もそう思い、指輪のリング部分をセンサー内臓の物と取り替えさせて貰いました。なので指輪を持ってこの出入口を通過すれば警報音が鳴り響く算段です」 鈴木次郎吉「しかもその扉の横には非常ボタンがあり、押せばロックが掛かり10分間は封鎖される。つまり予告時間1分前にボタンを押しておけば、怪盗キッドの犯行予告は史上初めて失敗に終わるという寸法じゃわい」 中森銀三「クソッ…キッドを捕まえるんじゃなく来させねぇ作戦とは…やる気が出ねぇな」 諸伏高明「将帥勇ならざるは…将なきに同じ。軍の将が勇猛果敢でなければ、将がいないのと同じですよ」 中森銀三「そんなことは分かってるよ」 隊員「警部、一般客の入場が開始します」 中森銀三「ああ」
服部平次「なあ工藤、そんなに手ごわいんか?怪盗キッドって」 コナン「ああ、ずる賢くて一筋縄じゃいかねぇんだよ」 遠山和葉《さすが平次♡工藤君より上やな》 服部平次《当たり前や》 服部平次「(これやで)」 毛利蘭「ここって飲み物持ち込み禁止ですよ?」 「これさっき買った服お詫びにプレゼントシマース。それじゃごめんなさいでしたね」 毛利蘭「せっかくだからお言葉に甘えちゃえば?服は着替えなきゃなんないんだし」 遠山和葉「せやね。ほんならトイレで着替えてくるわ」 遠山和葉「ババーン!どや平次♪ウチに惚れ直したんとちゃう?」 服部平次「ってアホか!?元々惚れてへんわ!ボケ」 キッド「(ちょれーな…トイレで眠らせたあの娘には悪いけど)」 キッド「(今回はこれで行かせてもらうぜ)」 服部平次「ほんなら鳴らしてみよか?」 服部平次「ホンマか?けどもうキッドの予告の時間や。一段落するまで待っとけや」 服部平次 「無茶言うなや」 遠山和葉 「アカンのォぉ~?平次」 中森銀三「時間がないんだ。早く済ませろよ」 服部平次「こ…氷に透明なシートがかぶさりよった」 中森銀三「おい!どうなってんだ!おい!」 諸伏高明「どうやら煙玉を弾けての墨のような液が噴霧されたようですね」 鈴木次郎吉「これじゃ中の様子が見えぬわ」 中森銀三「この音はドリル?」 鈴木次郎吉「まさか氷に穴を開けて盗む気か!?」 諸伏高明「鼠に投ずるに器に忌む」 諸伏高明「鼠を退治したくて物を投げつけたいのに、そばの器物を壊すのを恐れて投げられないように、キッドは指輪を盗みたくても盗めないはず。この音はハッタリです。扉が開くのを待ちましょう」 中森銀三「一体どうやって…」 中森銀三「くそっ!やっぱり氷なんかじゃ守れなかったんだよ!」 鈴木次郎吉「しかし何なんじゃ…この無数の指輪は…」 諸伏景光「これはフローラル アイス パフォーマンス。電気ドリルで氷の内側を彫り、食用色素などで着色し、まるで氷の中に本物の花が存在しているかのように見せるアート。キッドはそれを花ではなく、指輪でやってのけたんです。我々を攪乱するために、想像を絶する早技で」 服部平次「ああ、ジイさんの言う通り真っ暗やったからな」 遠山和葉「うん」 コナン「シートの内側に潜ってたんじゃない?氷にかかってた透明なシートも墨で真っ黒になったんなら、シートの内側に潜り込んで、明かりをつけたら彫れるでしょ」 コナン「それに氷のそばに道具があるから間違いないよ」 遠山和葉「助けて平次!このままやとウチ、裸にされてまう!」 服部平次「は…裸は…裸はアカンなぁ…」 服部平次「せや、リングの部分に内臓されとるちゅうセンサーや。指輪持ったまま扉んとこ通ったら、センサーが反応して警報が鳴るんやろ?」鈴木次郎吉「ああそうじゃ」 服部平次「せやったらオレらを調べるんは警報が鳴ってからにしてくれや」 遠山和葉「さすが平次」 中森銀三「バカな」 鈴木次郎吉「じゃあ彼奴はどうやって」 中森銀三「指輪を外部に…」 遠山和葉「平次ありがとう」 服部平次「く…くっつくなよ」 服部平次「とにかく俺ら二人共キッドやないっちゅうこっちゃ」 遠山和葉「せやせや」 和葉(キッド)「あーアカン、キッドの騒ぎでせっかく取りに行ったウチのスマホ、ガラス張りの部屋に置いて来てしもた」 服部平次「しゃーないなぁ。警察のおっちゃん、その辺にこいつのスマホ落ちてへんのか?」 中森銀三「これか?」
中森銀三「おい、もう指輪は取られちまったんだから氷を保つ必要がない。冷房を止めるよう言ってこい」 諸伏景光「いや、氷のことは見事にキッドにしてやられたと諦めて、今この室内を隈なく調べ、彼がどこから侵入し、どこから出ていったかを知るべきでしょう」 和葉(キッド)「(よっしゃ完璧)」 コナン「ねぇ和葉姉ちゃん、もしかしてトイレ我慢してるの?さっきからずーっと膝を閉じてかがみ気味だけど」 和葉(キッド)「せ…せやねん。冷房でちょっと冷えてしもて…」 鳥越苗路「しかし盗られてしまった以上、頂くものは頂きますよ。賠償金をたんまりとね」 諸伏景光「すみません。例の怪盗は"宝石を頂いた"というカードを残して消えてしまって」 大和敢助 「あんだよ?やられちまったのか?にしてもがっかりしてねぇなお前」 諸伏景光「将為るの道は、勝を以て喜びと為す勿く、敗を以て憂いと為す勿し…勝っても有頂天にならず負けても落胆しないのが将たる者の道ですよ…」 大和敢助「ちっ、またことわざかよ?」 諸伏景光「それに…勝敗はまだ…決してませんしね…」大和敢助「それより例の物はどうだったんだ?本当にお前宛の荷物だったのか?」 諸伏景光「いや、それは明日受け取る予定なので…零時を回ったのでもう今日ですが…」 大和敢助「でもその封筒をロッカーに入れっ放しにしてたっていう刑事の名前、お前覚えねぇだろ?」 諸伏景光「ええ、その小包を持っていた刑事は弟の知り合いなのかもしれませんね」 大和敢助「んじゃ、その弟に確かめさせりゃいいんじゃねぇか?」 諸伏景光「それが…随分前に警察を辞め別の仕事に就いたと聞いてから何の音沙汰もなくて…今頃一体どこで何をやっているのやら」
毛利小五郎「タクシーで家に帰るかあ」 和葉(キッド)「えーっ!タクシーなんかもったいないで」 毛利蘭「でも始発まで4時間ぐらいあるよ」 和葉(キッド)「せやったら、この博物館のどっかの部屋で仮眠とらせてもらおや」 服部平次「せやな」 和葉(キッド)「ほんならウチ次郎吉さんに頼んでくるわ」 服部平次「俺も付き合うたるわ」 毛利小五郎「何だかんだいって仲いいなぁ、あの2人」 毛利蘭「だね」 コナン「いや、平次兄ちゃんがくっついているのは逃さないためだよ」 毛利蘭「逃がさないって?」 コナン「だってあの和葉姉ちゃん、怪盗キッドなんだもん」毛利小五郎「ええっ!マジか!?」 コナン「間違いないよ。あの和葉姉ちゃんずーっとヒザ曲げてかがんでるし」 コナン「本物の和葉姉ちゃん自分の事"アタシ"って言うのに…あの和葉姉ちゃんは"ウチ"って言ってるし」 毛利蘭「確かにそうだね」 毛利小五郎「だったら何でまだ逃げずにここにいるんだよ」 コナン「(その理由はもう…アレっきゃねぇよな)」 和葉(キッド)「このソファーやったらぐっすり仮眠できるんちゃう?早よ蘭ちゃん達呼んで来よ」 服部平次「けどオレクーラー苦手やし扇風機無しで寝られるかのォ…」 服部平次「ええ加減にせぇよコラ…さっきからしょーもないことぬかしよって…」 服部平次「どうやら黙らせるには…そのふざけた口、塞がなアカンみたいやな…」 和葉(キッド)「(おいおいおい!)」和葉(キッド)「(待て!待て!待てーー!)」 服部平次「な…何やねん!?急にでかい音出しよって」 和葉(キッド)「び…びっくりするやん」 毛利蘭「もう眠くて眠くて早く仮眠取りたいから急いで来ちゃった」 コナン「(…っぶねぇ。まさか服部、その和葉ちゃんがキッドの変装だって気づいてなかったとは…)」 コナン「(そういや大阪の戎橋の時も和葉ちゃんがからむと、ヘッポコ探偵に成り下がってたなコイツ)」
和葉(キッド)「(おお結構溶けてるじゃねーか。高さ3mぐらいあったから心配だったけど、最近暑いからねぇ)」 和葉(キッド)「あのガラス張りの部屋ん中にコンタクト落としてしもたみたいで…取りに行ってもかまへん?」 隊員「いいですよ。氷が溶けて床が濡れてるから気を付けてください」 諸伏景光「鷙鳥(しちょう)とはツバメの事。そして鶚(がく)とは鷹の事。つまりツバメが百羽集まっても一羽の鷹には及ばないという意味です」 諸伏景光「ええ、どうせなら盗むところを現行犯で押さえようかと」 和葉(キッド)「じゃ当然、この娘がオレの変装だと気づいてたのね」 中森銀三「何だあの抜け穴は!?」 鈴木次郎吉「見抜いておったのか?」 諸伏景光「ええ、でも敢えて見過ごしたんですよ。怪盗キッドは目当ての宝石でなければ、持ち主に返すと聞きましたから」 鳥越苗路「おお、では後ほど私のもとへ返ってくるんですよね」 服部平次「アンタがホンマにあの宝石の持ち主やった場合や」 鳥越苗路「何?」 服部平次「アンタ言うてたよな?あの真珠は三重県の英虞湾に眠ってたアコヤ貝の中にあって、真珠独特のオリエント効果の輝きに魅せられたって」 鳥越苗路「あ…ああ」 服部平次「せやけど、ホンマのコンクパールはメキシコ湾やカリブ海に生息しているピンク貝からしか取れへんし」 服部平次「コンクパールは虹色に光るオリエント効果やのぅて、表面に出る火焔(かえん)模様っちゅうキレイな曲線の模様が特徴や。つまり、あの宝石のホンマの持ち主はアンタやのぅて」 服部平次「昔お爺ちゃんがカリブの大富豪からもろったって叫んでた、あの姉ちゃんの方やっちゅうこっちゃ」
服部平次「ああ、こっちの方はすぐに偽物やと分かったわ」 遠山和葉「"こっちの方は"ってどういうことなん?まさか平次、キッドがアタシに変装してたって気づいてなかったんちゃう?」 服部平次「ア…アホ!すぐに気ィついたけど、泳がせとったんや」 遠山和葉「ほんなら言うてみ!どこが違ぅてたか」 服部平次「せ…せやから…あ、青ノリや!偽者の和葉の歯に青ノリ付いてへんかったし」山本萌奈「おばあちゃん、ごめんなさい…おばあちゃんがおじいちゃんに貰った思い出の宝石…天国に持ってってほしかったのに取り返せなかった…生きてる内にもっと聞きたかったな…あのピンク色の真珠のお話を…」 キッド「今からちょうど半世紀前、カリブの大富豪が世界一周の船旅をしていた際に、身重だった大富豪の奥方が急産気づいてしまい大慌て」キッド「そこへ偶然新婚旅行で船に乗り合わせていた外科医でもある、あなたの祖父が専門外にもかかわらず、自分の医学知識を駆使して無事に出産させ、その感謝の意を込めて大富豪があなたの祖父に贈ったのが、この"妖精の唇"ですよ、山本萌奈さん」 キッド「その時生まれた大富豪の息子のブログに、スペイン語で詳しく書かれていましたから、おそらくあのブローカーは、それを読んで宝石を騙し取ろうと考えたのでしょう。残念ながらこの宝石は、私が狙っていた宝石ではなかったようなので」 キッド「おばあ様の黄泉の国での船旅に彩を添えていただけますか?」 佐藤刑事「ええ、正確には伊達さんに届いた小包みの中に長野県警の警部さんに送ってくれとメモ書きされた封筒が入ってたんだけど」 佐藤刑事「一年前に彼が交通事故で亡くなってからずっと放っとかれてたのよ」 佐藤刑事「まぁ、そのメモ書きの字が滲んでて読みづらかったのもあるけど…」 高木刑事「じゃあそれを伊達さんに送った送り主の名前も滲んでたんですか?」 佐藤刑事「それが…書いてないのよ。ほら、丸印が付いてるだけで」 高木刑事「でも1年もロッカーに放っておかれるなんて…」 佐藤刑事「放っときたくもなるわよ。捨てりゃいいのに…警察学校時代の写真とか物とかが…ゴッチャリつまってて…」 高木刑事「あれれ、佐藤さんは警察学校時代いい思い出とかないんですか?」 佐藤刑事「あるわけないでしょ?だって」 佐藤刑事「私達の1年上の伊達さん達がヤンチャしまくったせいで、私達の年だけ規律が信じられないぐらい厳しくなってたんだから」 佐藤刑事「あの松田君もいたみたいだしね」 高木刑事「そういえば、伊達さんと松田さんは同期なのになんで松田さんは君付けなんですか?」 佐藤刑事「松田君は伊達さんと違って刑事としては私の方が先輩だったから。悪い?」 高木刑事「あ…いえ…えへへ」 諸伏景光「ええ、私宛でしょう」 高木刑事「中身を確認を」 諸伏景光「はい」 諸伏景光「これはスマートフォンですね。中央に穴が開いてますが…」 諸伏景光「(穴の内側に黒ずんだ染み)」 諸伏景光「(そして裏面には傷に見せかけた独特の「H」の文字)」 諸伏景光「人生、死あり…修短は命なり…」 佐藤刑事「え?」 諸伏景光「"人は死を避けられない。短い生涯を終えるのは天命である"という中国のある軍師の言葉です」 諸伏景光「これは私の弟のスマートフォン。警察を辞めた言っていましたが、これがここに届けられたのなら、おそらく公安に配属されてどこかに潜入中に命を落としたんでしょう。穴は弾痕、黒い染みは血液でしょうから」 諸伏景光「(そうだよな)」 | |
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