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KUSURIYA | |
原作(Original Story): 日向夏×ねこクラゲ 薬屋のひとりごと 第55話ネタバレ | |
第55話 皇太后(後編) | |
単行本 | 第11巻 |
ビッグガンガン | 2022年 Vol.08 |
配信日 | 2022年7月25日 |
登場人物 | 猫猫(マオマオ) 玉葉妃(ギョクヨウヒ) 安氏(アンシ) 紅娘(ホンニャン) 桜花(インファ) 貴園(グイエン) 愛藍(アイラン) 水蓮(スイレン) 鈴麗(リンリー) 子翠(シスイ) |
STORY | |
子翠「ごめんねぇ猫猫」 猫猫「…その虫を捕まえようとしたの?」 子翠「うん」 猫猫「(本当に虫が好きなんだな)」
子翠「この虫は東方の島国に自生してる虫なんだ!羽を震わせて音を鳴らしてるんだよ。交易品の中にあったやつが逃げたんだろう。あっ油虫に似てるけど違う生き物だから大丈夫だよ」 猫猫「(聞かなきゃよかった)」 子翠「それでねそれでね」 猫猫「(これが薬談話ならいいんだけど)」 猫猫「(大所帯で宮内を闊歩できる人間は限られる。あの中央にいる上品な色彩の衣を着た女は皇太后だ。昨年の園遊会の時と変わってない。美髯の帝の母親とは思えない若々しさ)」
猫猫「なんで隠れてるの?」 子翠「猫猫もでしょ」 猫猫「…まあ条件反射というか (自分より位の高い者が目の前を通るときはそうしろと最初に教育されている。本来なら壬氏たちに対してもそう振る舞うべきなのだろうが忘れがちだ。気をつけないと)」
猫猫「あっちにあるのは診療所かな」 子翠「…ああ!皇太后さまがはじめた場所だからか」 猫猫「そうなの?」 子翠「たしか女帝の権力が強かった時代に作ったんだよね。その流れで今もあんな感じなんじゃない」 猫猫「なるほど (皇太后がわざわざ後宮の非公式の場に来た理由はそれか…皇太后は心優しき方だと言われている。奴隷が禁止されたのは皇太后の言からだと聞いたことがある。奴隷廃止は人道的な面を見れば改革だろう。一方で副作用も大きい。奴隷制は一種の商売であり、廃止することで成り立たなくなった分野は多岐にわたる。また奴隷としての線引きもそうだ。牛馬のように扱われる奴隷はともかく、自分の身を担保に借金をする場合は雇用に近い奴隷だ。合法として扱われている妓女は後者の奴隷に見えないこともない。実際、数年前にはやり手婆たちが顔を青くしながら話し合っていた。表向きは廃止された奴隷制だが、名前を変えて今も存在してるのは周知の事実でもある)」 子翠「私そろそろ帰らないと…猫猫も帰らないと怒られるんじゃない?」 猫猫「そうだけど…(皇太后が診療所に向かっているのは先日の水晶宮の一件と何か関係があるのだろうか…皇太后が乗り出すなら後宮医療に改革が起こるかもしれない。そうであれば聞き耳立てに行きたいところだが…) やっぱ帰る (最近怒らせてばかりだからな)」 子翠「またねー」
『翡翠宮』 紅娘「やりなおし」 猫猫「(これで3回目だ。久しぶりに翡翠宮の掃除をした。とうとういびりが始まったかと思ったが、他の侍女もダメ出しを食らっている。いつもよりも念入りだ。誰かくるのか?)」 玉葉妃「おひさしぶりです安氏(アンシ)さま」 猫猫「(皇太后だった。疑い深い玉葉妃が妊娠の事実を知らせているのは皇太后が信頼にたる人物だからかそうせざるを得ないからか…噂の人物像が正しいなら前者だが、本当のところはわからない。しなし和やかな空気ではある。人見知りをしていた公主もすっかり懐いたし)」 安氏「あなた、確か壬氏のもとより手配された侍女よね?」 猫猫「はい、そうですが (…なんで知ってる?)」 安氏「水蓮から聞いたの。しごきがいのある子が後宮に戻ったって。水蓮は昔、私の侍女をしていたの」 猫猫「(あの食えない侍女と皇太后は旧知の仲だったのか)」
玉葉妃「安氏さま、申し訳ありませんがちょっと公主を寝かしつけてきてもよろしいでしょうか?」 安氏「本当にあの子は察しがいい子ね」 猫猫「(嫁姑というよりは少し歳の離れた友人のような雰囲気だ)」 安氏「さあそこにかけて。あなた、いろいろ問題ごとを解決しているようだけど」 猫猫「私はただ私が持っている知識の中で状況に当てはまるものを提示しているだけです (否定的に聞こえただろうか…しかし突飛な想像力もなければ、おやじのような博識さもない。真相をかすめることもあるだろうが、そのどれもをおやじなら半分の時間で解決しただろう。だからこそ、前置きが必要でそれが信条なのだ)」 安氏「それでいいわ。わかる範囲でいいの。調べてもらいたいのよ。私は先の帝に呪いをかけたのかしら」 猫猫「(呪い…そんな風に思っても仕方ないのかもしれない)」 安氏「できればもっと違う場所で話をしたいわ」
猫猫「(先の帝についてはいい話を聞いたことがない。愚帝の昏君(ばかとの)、女帝の傀儡、後宮内で一番有名なものは幼女趣味だろうか)」 猫猫「(政略結婚や借金のかたに幼い妻を娶ることはある。しかし先帝は妙齢の女性がたくさんいる後宮から一部の幼い娘にばかり手を出していた幼女愛好家。事実として皇太后は十になるかどうかの時に現皇帝を産んだ。その出産を手伝うためにわざわざ宦官にさせられたのか不幸なわがおやじだ。そこまで犠牲を払ったためか、現帝は元気に育ち、腹に傷が残ったものの皇太后はその後、皇弟を出産した。皇弟の年齢は確か私の一つ上…出産当時の皇太后は三十路前。とうに少女と言うにはふさわしくない年齢である。とても言葉にはできないがふと思うことがある。本当に皇弟は先帝の子か…ということだ)」
『数日後 内廷の中 帝やその子供、后が住まう区画』 猫猫「(大層にも皇太后が茶会という形で上級妃四人が集まる場を設けてくれた。茶会は女の見栄の張り合い、荷物は嵩み宦官三人分になった。玉葉妃でこれなら他の侍女たちはもっとだろう)」 「茶会までそれぞれ気楽にすごして」 猫猫「冷やされた果物まである (上級妃たちにはそれぞれ風通しがよく涼しい部屋を与えられた。玉葉妃は妊娠初期の眠くなりやすい症状が続いている)」
桜花「ふうっ…まったくどういうおつもりかしら」 愛藍「たぶん配慮してくださるけど、あれよねぇ」 猫猫「(妊娠とわかっていて茶会に呼ぶなんておかしいと言いたいのだろう。玉葉妃の妊娠は公然の秘密だが、面と向かえば心ない質問が飛ぶ可能性もある。ただ梨花妃はあえて自身に飛び火するような質問はしないだろう。杏の一件の時に見た梨花妃の服装からしておそらく梨花妃は妊娠している。それに元々気位の高い梨花妃は反対に相手を貶めることは滅多にしない。玉葉妃としてもより血統の尊い梨花妃と喧嘩するのは賢い選択ではない。二人は現在、互いに接点を持たないことで衝突を避けている。里樹妃が言うとすれば侍女たちに唆された場合だが、宴で妃につくのは侍女頭のみ。あの元毒見役はそこまで口を出すほどの出しゃばりではないだろう。あるとすれば面白いほど噂を聞かない楼蘭妃と茶会の主催である皇太后だが)」 紅娘「猫猫、今日の毒味は必要ないわ。私たちにも同じものが出されるそうだから、そういう流れってやつね」 猫猫「わかりました (毒味役を随伴させないのは后が出したものに毒はないという態度を示すためだ。しかし万が一が起これば責任問題になる。そのための妥協案として侍女頭が妃と同じものを食べる。面倒くさいことだ)」
紅娘「それであなただけど、皇太后さまが手伝いに貸してほしいそうよ」 猫猫「はい」 紅娘「はいって…またなにか問題を持ち込まれているの?」 猫猫「……」 紅娘「別にいいわ。どうせ言えないことでしょうから。ただし、玉葉さまを裏切るような真似はしないでちょうだいね」 猫猫「…紅娘さまを敵に回したくありません」 紅娘「ならいいわ。私も猫猫とはいい関係でいたいもの」 猫猫「そうですね (やはり玉葉妃付なだけあるわ)」 |
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