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KUSURIYA | |
原作(Original Story): 日向夏×ねこクラゲ 薬屋のひとりごと 第46話ネタバレ | |
第46話 鏡 | |
単行本 | 第9巻 |
ビッグガンガン | 2021年 Vol.9 |
配信日 | 2021年8月25日 |
登場人物 | 猫猫(マオマオ) 壬氏(ジンシ) 高順(ガオシュン) 玉葉妃(ギョクヨウヒ) 紅娘(ホンニャン) 桜花(インファ) 貴園(グイエン) |
STORY | |
桜花「ほら見て猫猫」 猫猫「ほーすごいですね」 桜花「でしょ~!」 玉葉妃「この姿見なんでできているかわかるかしら?」 猫猫「玻璃でしょうか」 玉葉妃「当たりよ」
『普通、鏡といえば銅板の表面を丁寧に磨いた銅鏡だが、銅鏡では色がはっきり映らない。しかしこの姿見は薄い玻璃製で色も綺麗にそのまま映し出している。まるで玉葉妃が二人いるみたいだ。玻璃の鏡は作る技術が難しいのか西方からの渡来品しかなく、珍しい上にかなりの高級品だ』 貴園「前に玻璃製の手鏡はあったけど桜花が割っちゃったからね」 桜花「もうそれは言わないでよ」 猫猫「(そんな高級品を割れば首が飛んでもおかしくないが、玉葉妃が優しくてよかったな)」 玉葉妃「これはね、異国の特使からの献上品なの」 猫猫「特使さまですか (そういえば先日やぶ医者が大規模の隊商は異国の特使を迎えるための先行隊だとか言っていたな)」 桜花「ほかの妃にも渡しているみたいですけどね」 貴園「こら言い方」 猫猫「(玉葉妃を含め上級妃は四人。特使としても誰だけを贔屓はできない。こんな立派な鏡を四枚も割れぬように持ってくるのは大変だっただろう。主上ならまだしも妃に対してこの気の使いよう、何か大きな商談でも持ちかけているのかもしれないな)」 桜花「なになに、猫猫も興味でてきた?」 猫猫「はい、どういう構造になっているのか気になります。量産できたら商売になりますから」 桜花「……うん、そだね」
『翌日、相談事を持ってきたのは高順だった。紅娘が同席しているのは宦官といえど女官と二人きりにしない配慮だ。かねてより高順を標的にしていた紅娘だが、先日高順が妻子持ちとわかったらしく、そのまますっかり興味を失っていた』 猫猫「それでどうなさったのですか」 高順「少し小猫の意見を聞きたいことがあったので」 猫猫「お役に立てるかわかりませんが」
高順「では、とある良家に年の近い二人の娘がいた。過保護な両親は娘たちが年頃になると離れに隔離し、一人での外出を禁じた」 高順「夜には父親が離れを施錠し、日中には部屋に監視の侍女を置いた。しかし侍女たちは娘たちに同情したのか隙を見ては娘を外に連れ出した。それが両親にばれると侍女たちは解雇され、新しい侍女は娘たちとの接触を減らされた。さらには部屋の外にまで監視役が置かれるようになった。しかし父親が自分以外の男と接することを禁じたため監視役ですら離れに近づくことは許されなかった。もともと内向的な娘たちは一日中趣味の刺繍をする毎日だった。しかしある日、とんでもないことが起きた。妹のほうが妊娠したというのだ。姉は妹をかばい“仙人の子を身ごもりました”と言った。ありえない話に激高した両親だったが、娘の監視を怠ったことはなく、仙術でも使わないと忍び込むことはできないはずだ。と両親は大変困っているそうです」
紅娘「なんて不埒な」 猫猫「それは確かに妙な話ですが、私の領分ではない気がします。殿方と通じずに子を身ごもるという話なら、思い込みで身体が妊娠したように錯覚することがあるそうですが…娘はちゃんと身ごもっていたのですか?」 高順「ええ…まあそうなりますね」 猫猫「(歯切れが悪いな) 具体的にどういう風に娘たちは監視されていたのでしょうか?」 猫猫「(わざわざ見取り図を用意してきたのか)」
高順「長い四角が離れです。出入り口は本殿に繋がる西側の渡り廊下だけで、北と東は屋敷を囲む掘りに囲まれ、南側には庭があります」 猫猫「小用はどうしているのですか?」 高順「離れの中にあります」 猫猫「(本来居住区の外にある厠を部屋の中に作ったのか…よっぽど部屋から出したくなかったんだな) 外から監視となれば窓はどこにありますか?」 高順「東と南に一つずつあります」 猫猫「(外の監視は中庭を挟んで離れた場所…それでいて窓から室内を見渡せる高い位置…つまり) 見張りの位置は本殿ですか」 高順「はい。東側は一階から、南側は三階から」
猫猫「(東側は壁で死角が多く一階からしか見えないのか) この窓からだと見える範囲はかなり限られますね」 高順「はい。ですが娘は昼間ずっとここで刺繡をしていたと」 猫猫「(確かに昼間から灯りをつけるより窓のそばでやったほうがいい、監視としても楽だっただろう)」 紅娘「変わった趣味ですね。刺繡だなんて」 高順「ええ、元は放牧の民だったようで」 猫猫「(良家の娘の紅娘からすればそうかもしれない。少数民族の中には刺繡に意味合いを持つものがたくさんある。それならば変わった趣味とは言わないだろう。部屋割りをみるに二つの窓は同じ部屋にあり、寝室は別だ) 離れはもともと来賓用として建てられたものでしょうか?」 高順「よく気がつきましたね」 猫猫「監視は何人で?」 高順「基本は二人でいつも同じ人間が同じ部屋にいたと」 猫猫「(やけに情報が多いな。事前に図面を用意していて問答も丁寧だ。しかしここまで詳しいと裏があるような気がしてならない。素直に口にしていいものかどうか)」
高順「壬氏さまから言伝てで牛黄が遅れそうなので詫びだそうです」 猫猫「(牛黄!そういえばまだ貰っていなかった。また頭突きをされてはたまらないと黙っていたが…確かに遅い)」 高順「…なぜか急に需要が高まったようで」 猫猫「?どうしていきなり」 紅娘「最近壬氏さまのもとに貴重な霊薬を持ってやってくる者が多いと聞きましたよ。やけに熱心に探していると噂ですから…壬氏さまもお食事のお誘いの一つでも受ければよろしいのに…エサでこちらの侍女を釣らないで」 猫猫「(壬氏の場合、男女問わず誘われているだろうし食事だけで済むとは思えないけど)」
高順「そ…そういうことで…こちらをどうぞ」 紅娘「…干し柿みたいね」 猫猫「熊胆(ゆうたん)です。熊の胆嚢を乾かしたもので、苦みがありますが消化器系の薬に重宝される貴重な生薬です」 高順「喜んでいただけて何よりです。本当は直接渡したかったようですが…それで何か気付いたことはありませんか?」 猫猫「(まあ何か言わないといけないだろうな) 用意をしますので少しお待ちください」
猫猫「この木の実は娘です。娘は日中窓の前で刺繡をしていたと」 紅娘「一つだけしかないのね」 猫猫「はい。そこでこの東の窓の近くに鏡があったらどうでしょう。監視の位置から鏡をのぞいてもらえませんか」 高順「はい、この辺りでしょうか…っあ!もう一つの木の実があるように見えます」
紅娘「あら本当だわ」 猫猫「実際には鏡を何枚使って人物と壁しか映らないように調整したかもしれませんが、近場で見るならともかく、遠目からなら少し不自然でもわからないでしょう」 高順「…つまり部屋にいたのは一人だけで、あとは鏡に映った姿というわけですか?」 猫猫「よく似た姉妹なら監視に見分けは難しかったかもしれません。左右に違う色の飾り紐でもつけていればそれを見分ける基準にしていたかも」 紅娘「でもそれって刺繡はどうなの?違うものを縫っていたのでしょう」 高順「動物だったと聞いてます。確か獅子や兎」 猫猫「たとえばこんな絵だとすればどうでしょう。この絵を逆さまにすると笑った顔が怒った顔のように見えませんか?」
猫猫「鏡の像ですからこのように逆さまに見えたかもしれないです。窓辺に二人がいるとなれば見張りはそちらに集中し、その間に西側から出ていくことも可能ではないでしょうか。もちろん離れにそれだけ大きな鏡があり、窓で見切れ縁が見えないという条件付きですけど」 高順「…なるほど」 猫猫「(そして本物と見間違えるほどの立派な鏡を最近見たばかりだ。異国の特使が持ってきた姿見…あれだけ美しい鏡面であれば遠目に十分間違えてしまうだろう。この国では一般ではないが、昔おやじが留学していた遠い西方の国では刺繡は上流階級の子女の嗜みだったそうだ。高順は良家の子女が家を抜け出し、子を孕んだと言った。しかし実際孕んだのはもっと違う秘密なのかもしれない。されどそれを追究するほど野暮ではない。間者の疑いがある者を客人として扱うこともままあるだろう。それよりもこの熊胆で何を作ろうかな)」 |
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