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KUSURIYA | |
原作(Original Story): 日向夏×ねこクラゲ 薬屋のひとりごと 第47話ネタバレ | |
第47話 月精(前編) | |
単行本 | 第9巻 |
ビッグガンガン | 2021年 Vol.10 |
配信日 | 2021年9月25日 |
登場人物 | 猫猫(マオマオ) 壬氏(ジンシ) 高順(ガオシュン) 玉葉妃(ギョクヨウヒ) やり手婆 子翠(シスイ) |
STORY | |
『噂とは広く遠くへ伝播するほど現実との乖離が大きくなり、時にその噂は噂にとどまらなくなることもある』 壬氏「真珠の涙を持つという絶世の美女を知らないか?」 猫猫「(い…いきなり何を言い出すかと思えば…絶世の美女なら目の前にいますよ)」
壬氏「はぁ…無理難題だとは思うが接待担当の高官に泣きつかれたんだ。どうも今来ている特使さまは昔曾祖父が見たという麗しき月の精のような美女にどうしても会いたいらしい。何十年も前に花街にいたそうなんだが、何か心当たりはないか?もちろん今は生きているかもわからないが」 猫猫「生きていますよ」 壬氏「本当か!?」 猫猫「真珠の涙を持つと言われた絶世の美女でしょう?壬氏さまたちは会ったこともあるじゃないですか」 壬氏・高順「は?」 猫猫「緑青館のやり手婆ですよ」
『時間は残酷でどんなに美しい容貌も衰えさせる。絶世の美女も今や心の荒んだ金の亡者だ』 猫猫「金子さえ積めばすぐ参じると思いますけどどうしますか?」 壬氏「…それはちょっと…」 猫猫「(まあ美女を望む特使相手に干物を出せば外交問題に発展する危険性がある。しかし先方も年齢のことくらいわかるだろうに) 相応の接待ではいかがでしょう?」 壬氏「すでに美女を集めた宴は催した。しかしお気に召さなかったようだな」 猫猫「(どんな奴だよ。東西では美醜の感覚の違いはあれど、それなりに粒揃いだったはずだ) 失礼ですが夜のお相手は?」 壬氏「無理だ。特使は女性だからな」 猫猫「(ああそれで壬氏に話が回って来たのか。誰もが見惚れる容姿を持ち性別は一応男。女性を絆すのに十分な逸材である。しかし面倒も起こりうる。色仕掛けを本気にされ夜伽を求められても使えるものがない。そんな想定も洒落にならないのがこの男だ。もちろん女の身でありながら特使という立場にいれぱそうそう浅はかな真似はしないだろうが、逃げておくに越したことはない)」
猫猫「その特使さまはそんな大切な相手なのでしょうか?」 壬氏「西と北の交易の中間地点を押さえていると言えばわかるか」 猫猫「なるほど (この国には他国が異民族をけしかけてくるほどに多くの資源がある。新たな交易の話を進めつつお互い様子見をしたいといったところだろうか。一方で長らくどの国にも属していない特使の国にも外交の上手さや軍事力といったそれなりの理由があるのだろう) 遠方の国では他国との混血が進み、そこいらに美男美女がいると聞いたことがあります。そんな国の人間に月の精とまで言わせたとは…」 猫猫「あ、香に幻覚剤でも混ぜたのでしょうか?」 壬氏「…そんなことをするのか?」 猫猫「しませんけど一番手っ取り早いかと」 壬氏「そんなことをすれば外交問題になる。この際なんでもいい。何か当時の情報はないのか?」 猫猫「(よほど困っているな)…では藁にもすがるつもりで」
やり手婆「なんだいなんだい?なんだか妙な話を持ってきたね」 猫猫「(相変わらず不遜な態度の婆だ。女でも部外者は後宮に入れないので李白と会う時に使う部屋を貸して貰った)」 『緑青館 やり手婆』 猫猫「昔、異国の特使を接待したんだって?」 やり手婆「ああそうだよ。五十年以上前だったかね、前の前の主上さまの時代さ。まだ遷都したてで立派な城もなくて接待する場所がなかったんだよ。お上もずいぶん悩んで結局、残っていた遺跡を使うことになった。元はなんかの祭儀場で果樹園の近くに綺麗な池と建物があってね」 猫猫「(それって…先日訪れた祭儀場の近くには荒れた果樹園があった。昔この辺りには観光都市があり、元々高い建築文化を持つ民族が住んでいたそうだ。外壁や地下通路を利用しつつ建築を繰り返して今の形になった。後宮も今ほどの規模はなかっただろう。だとすれば当時の宴の会場が今の後宮の中にあってもおかしくはない)」 やり手婆「そこでの演舞者の主役として花街から選ばれたのがあたしだったのさ」 猫猫「選ばれた理由は?」 やり手婆「そりゃ当時の花街で最上級の妓女だったからだよ」 猫猫「(今の婆は花というより枯れた枝だけど)」 やり手婆「しかしまあ一番の理由は体格だろうね。あたしは背も高くて体にめりはりもあったから」
猫猫「(確かに発育のいい国の者たちからすると、こちらの大人は子どもに見えるかもしれない。主役として舞台に立つなら体の大きい方がいいだろう) 他には何かなかったの?」 やり手婆「うーん、なんていうか即興の場だったから準備にはかなり手間取ったんだよ。月の満ち欠けまで計算して宴席から見える景色を良くするのに障害物を退けてさ、果樹園が近いから虫も多くて事前に葉についた幼虫を一匹残らず駆除して、まあ結局松明の明かりで虫は寄ってきたんだけね。そこまで用意したのに当日あたしの衣装に悪戯する奴がいたのさ。虫の死体を擦りつけられてね、でもあたしもそんなヤワじゃない。羽衣で隠してうまくやり遂げたさ。結果は大絶賛。悪戯した奴らは悔しがってたよ」 猫猫「婆さんその話何度も聞いた。もっと違うことない?」 やり手婆「可愛くない子だね」
猫猫「(綺麗な絵だ。初めて見た。婆も大切にしていたのだろう。この幻想的な美女が金の亡者になるなんて)」 やり手婆「これはその特使というのがわざわざ国に帰って絵描きに描かせたそうだよ。“月女神”だなんて言ってね」 猫猫「ああなるほど、この絵も美化されているわけか」 やり手婆「なんか言ったかい?」 猫猫「なんでもないよ」 やり手婆「当時は二度とこの地を踏むことはなかったけど、隊商に預けて届けてくれたのさ」 猫猫「婆さんは普通にいつも通り仕事しただけなんだろう。なんでそんなに気に入られていたの?」 やり手婆「そんなのあたしも知らないよ」 猫猫「(婆は物事を客観視できる人間だ。売れっ子だったのは事実だが、ここまで持ち上げられる理由は本当にわからないのだろう)」
猫猫「ということでした」 高順「とりあえずよく似た人物を探してきますか?」 壬氏「頼む」 猫猫「(正直この絵に似た大柄な美女を見つけるのは難しいだろう) いっそ顔は似なくとも大柄な女を見つけてみてはどうでしょう。今ではずいぶん縮んでしまいましたが、当時は身長が五尺八寸(百七十五センチ)あったそうです」 壬氏「ずいぶん大柄だな」 猫猫「ええ、舞を得意としていたので手足が長いほうがよく映えたとのことです」 高順「特使さまたちもそれくらいの背丈ですね」 猫猫「(特使さまたち?) 一人じゃないですか」 高順「ええ、同じ祖父をもつ従姉妹だそうで」 猫猫「(その物言いだと特使たちもかなりの美女なのだろう。異国から来たということは玉葉妃のような容姿だろうか…過去の美女の影を追うだけでも障壁が高いのに判定するのが女性ともなると判定は嫌でも厳しくなる。以前より難易度は上がっている。たとえ絵のとおりのものを出したとしても満足はしないだろう。となればやはり背丈が五尺八寸を超える美女を黙らせられるほどの美貌の持ち主を……)」
猫猫「見つけました。大変適役な人物。背丈が五尺八寸を超える美女でしょう?」 高順「ああっ」 壬氏「!な…何が言いたい」
『後宮の北側にある荒れた桃園。近くには古い廟のような建物。そして池』 猫猫「(間違いない。ここなら今でも宴をやるにはいい場所だろう)」 子翠「だーれだ?」 猫猫「…子翠」 子翠「正解っ!声でバレちゃった?」 猫猫「(この人懐っこさ、さすが小蘭の駄弁り友達)」
子翠「猫猫こんなとこでどしたのー?」 猫猫「ちょっと散策を」 子翠「へぇ?」 猫猫「そっちこそこんなところでどうしたの?桃のつまみ食い?」 子翠「んふふ、違うけど桃園に用事があってね、ちょっと待ってて」 猫猫「(あの娘もかなり奔放に後宮生活を楽しんでいるよな)」 子翠「猫猫手を出して…はい!これだよ」 猫猫「普通これ嫌がらせにとられるからやらないほうがいいよ」 子翠「えー?可愛いのになぁ」 猫猫「(虫かごまで持って来てる)」 子翠「ここって本当にすごいよね。見たことない虫がたくさんいるの。この虫も図鑑でしか見たことなかったもん。海を渡って異国から来たんだよ」 猫猫「へぇ、そうなんだ (古くから交易をしていた土地だ。異国からの交易品などの混じった虫がうまく土地に根付いたのだうう) これ蝶になるの?」 子翠「ううん、蛾だよ。夜行性だから今はいないけど、成虫になると綺麗なんだ。こんな大きな触覚で羽が白くてさ、それが夜に飛ぶと映えるんだ」 猫猫「ふーん」
子翠「猫猫も夜ここに来てみなよ。ふわふわと月明かりに照らされてちょっと桃源郷にでも迷った気分になるから」 猫猫「桃源郷ってそんな大げさな……」 猫猫「この蛾って羽化したらすぐ交尾する?」 子翠「するんじゃない?成虫になるとご飯が食べられなくてすぐ死んじゃうらしいから」 猫猫「…ねぇ、この蛾の雄雌の区別ってできる?」 子翠「大体ならできると思うけど」
猫猫「子翠!手伝ってもらいたいことがある」 子翠「…おおう…猫猫?」 猫猫「(これはいけるかもしれない)」 |
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