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KUSURIYA | |
原作(Original Story): 日向夏×ねこクラゲ 薬屋のひとりごと 第49話ネタバレ | |
第49話 診療所 | |
単行本 | 第10巻 |
ビッグガンガン | 2022年 Vol.01 |
配信日 | 2021年12月25日 |
登場人物 | 猫猫(マオマオ) 壬氏(ジンシ) 高順(ガオシュン) 玉葉妃(ギョクヨウヒ) 梨花妃(リファヒ) 里樹妃(リーシュヒ) 阿多妃(アードゥオヒ) 楼蘭妃(ロウランヒ) 小蘭(シャオラン) 紅娘(ホンニャン) 桜花(インファ) 愛藍(アイラン) 虞淵(グエン) 翠苓(スイレイ) 深緑(シェンリュ)初登場 |
STORY | |
『異国から来た特使のもてなしを終えて…小蘭は始動している手習所の記念すべき一期生として参加している』
猫猫「(暇だな…今日は小蘭は来ないのか…翡翠宮に戻っても大した仕事はないしなぁ…やぶ医者のところへ行くのもやめておくか…特使のごたごたで忘れていたが医局は先日の香油の件に巻き込まれて忙しそうなのだ。あの事件に完全に片が付いたわけじゃない。壬氏が調べを進めたところ、妃の侍女たちが隊商でわんさかと香油を買っていた。隊商が正式に持ってきた品物だ。購入した女官たちを責めるわけにはいかない。翡翠宮の侍女たちもいくつか買っていたらしいだ。鳥籠に閉じ込められた若い娘たちが遠方から砂漠を越え山を越えやってきた交易品に目を輝かせて焦がれるのはわからなくもない。もしそれが西方に伝わる薬だったなら自分だってやり手婆に金を借りてでも買うだろう。しかし一概に悪いとは言えないとはいえ微量でも毒のある香を後宮に置いておくわけにはいかない。一つ一つは微量でも組み合わせることで強力な毒になることもある。問題は一体“誰”がそれを持ち込もうとしたかだ。香や香辛料の類まではわからないけど、商人たちが上級妃に妊娠に適した服を勧めてきたのはこの国の情報を探るためだったと理解できる。そしてそれを根回ししたのはおそらくあの特使たちだ。彼女たちがやってきた狙いの一つには妃の座に潜り込むこともあっただろう。本命の狙いではないにしても宴の様子から片方の特使はかなり自信があったはずだ。残念ながらその矜持はずたほろにされ、あの宴の後は大人しくなったらしい。もしかすると香も彼女の手配かもしれないが結論を一つに急ぐのは良くないな)」
猫猫「(現在後宮にいる四人の上級妃…玉葉妃、梨花妃、里樹妃、そして楼蘭妃。親の権力を背景に考えると楼蘭妃が帝にとって最も重要視すべき存在だろう。次に親の位が高いのは梨花妃であるが、これは帝の外戚であることが起因しており、それほど出世にがっつく性格ではない)」 猫猫「(逆にここ数代でのし上がってきた里樹妃の実家は先代皇帝に幼い娘を差し出す程の野心家だ。一方で帝の寵愛が最も大きいのは玉葉妃。実家は西方の交易の拠点にある。儲かっている印象が強いが、実際は国境に近く国防費にけっこうな税をもっていかれるらしい。その上、作物がとれる土地ではないので一概に豊かともいえないだろう)」
猫猫「(昨年起きた園遊会での毒殺未遂事件、あれは前妃阿多の侍女が独断でやったものである。その理由は権力のためではなくいかにも人間らしい動機であった。しかしそれ以前に起きたという玉葉妃の毒殺未遂事件はどうだろう。紅娘の睨みどおりであれば犯人は先日の茸事件で亡くなった中級妃だ。なら、その中級妃はどこで毒の知識を手に入れたのか…後宮では銀食器を使うので砒毒の類ではなかっただろう。そのため毒に気付けなかった玉葉妃の侍女は半減し後遺症に苦しんでいるものもいる。以前にも感じたことのあるこの気持ち悪さだ。翠苓…いまだ彼女の詳細はわかっていない。何故なんのために何が目的で壬氏を狙ったのか…)」 猫猫「(ただの毒味役がこんなこと考えてなんになる。わざわざ考えなくとも世の中には常に暗い話題があるのだ。気分転換しよう。後宮内には帝を楽しませるために松林や竹林、果樹園がある。桜桃はそろそろ終わるなあ。あと三月早ければ筍がとれただろうが、誰かのせいでその時期は水晶宮で薔薇栽培をしていたし…考えるだけでムカムカしてきた。もうやめだやめ)」
猫猫「(水晶宮の女官たちだ。纏足の者もいるのにあんなに素早く逃げるなんて…ちょっとひんむいたくらいで大げさな…)」 猫猫「(こちらとて好きでひんむいたわけじゃない。匂いを嗅いだのも流行に敏感な水晶宮の女官なら買った香油をつけていると思ったからだ。しかし中には香油をつけていない女官もいた。不思議に思い本当につけていないかどうか確かめようと服を脱がせた結果、美しい宦官どのに言いつけられてしまった)」 猫猫「(まあ侍女で十人、専属の下女を含めたら三十はいる大所帯の水晶宮だ。一人くらい流行に流されない侍女もいるのだろう)」
『翡翠宮』 愛藍「ちょっとだるいかもしれない」 桜花「風邪とかやめてよ。玉葉さまたちにうつったらどうする気よ」 愛藍「気を付けてたんだけどね」 猫猫「(少し熱があるかな…風邪薬でも煎じるか)」 桜花「あ、猫猫、悪いけど薬作ってくれるならそのあと診療所に連れていってくれない?」 猫猫「診療所ですか?」 桜花「医局とは違うわよ。医官はいないんだけど代わりに違う人がいるっていうか…とにかく愛藍が知っているから連れってあげて」 猫猫「わかりました」
『診療所』 猫猫「(洗濯場の裏側にこんなところがあったとは) 初めてみました」 愛藍「ここへ入ったとき簡単に説明があったと思うけど覚えてなかった?」 猫猫「ああ…(あの時はふてくされていてよく話を聞いていなかった)」 愛藍「すみません。風邪をひいたみたいです」 深緑「ん?」 猫猫「(中年の女官なんて珍しいな)」 深緑「微熱だね。舌だしてみ。そこまでひどくないようだけど二三日無理をしなければ問題ない程度だよ。どうする?」 愛藍「妃にうつしてはいけないので泊めてもらえませんか?念のため」 猫猫「(ほぉーやぶ医者よりよっぽど手慣れていて見立てもしっかりしている。やぶ医者しかいない後宮で病気が流行らないのはここがあったからか)」
愛藍「じゃあ明日には帰るって伝えて」 猫猫「わかりました (実に合理的な場所だ。華美さがまったくない質素な建物。飾りのない柱にただの板張りの廊下。窓も角窓が等間隔でつけられているだけ。飾りがない分、掃除がしやすのか、しっかり清掃されている。洗濯場が近いのですぐ衣服や布団の洗濯もできる。清潔が大切な医療の場にはよい立地だ。それに風通しもよくアルコールの匂いもある。消毒が行き届いてる証拠だ。しかし気になるのは…)」 深緑「ほら、あんたは仕事に戻んな。付き添いだからってさぼれると思うんじゃないよ。なんだい?それともここの洗濯物全部洗ってくれるかい?」 猫猫「(もっと見ていたかったがやっぱり小母ちゃんには勝てないものである。それにしてもやけに年嵩のいった女官ばかりだったな。後宮という場所柄、女官は大体三十路になる前に半強制的に入れ替えられる。残るのは宦官長などの位の高い人物か、妃の側仕えといったものばかりだけれど、診療所の女官たちは必要な存在として後宮に残されているのだろう。それにしてもあの診療所、薬の匂いが全くしなかった。アルコールの匂いでかき消されているのか、それとも…)」
壬氏「独り言をぶつぶつ言いながら歩くな。こけるぞ」 猫猫「何か言ってました?」 壬氏「やれやれ」 猫猫「何かご用でしょうか」 壬氏「いや、用があるわけじゃないが、偶然会って話しかけて悪いのか」 猫猫「(高順が何か伝えようとしているのはわかるが…申し訳ないがわからない)」 壬氏「どこへ行っていた?」 猫猫「診療所です。あんなところにあったんですね」 壬氏「女官に初めに案内するように言っているが、もしかして漏れていたのか?」 猫猫「いえ、そういうわけでは…(普段あれだけ自信たっぷりの態度なのになぜこの宦官はたまに自分の仕事に自信がなくなるのだろうか…)」
猫猫「思った以上によくできた場所だったので驚きました。むしろあそこを医局にしたほうがよいのでは」 壬氏「それができれば苦労しない」 猫猫「どういうことですか?」 高順「医官には男しかなれないからですよ」 壬氏「基本医官にしか薬は煎じられない。怪我の手当てなどもすり傷ならともかく大怪我の処置は無理だ」 猫猫「(薬の匂いがしなかったのはそういうことか。薬はだめでも酒なら消毒に使えるため工夫をこらして利用しているのだろう。清潔な場所で安静にしておけばそれだけで病気は治りやすい。容体がひどい場合、実家に帰すという手もある)…それって私はどうなるのですか?(後宮に生えている植物や医局の薬を使っていたが、これまでにも好き放題薬を煎じている)」 壬氏「目を瞑っているということだ。妃の中には侍女に薬に詳しい者を置くことも少なくない。だがああいう場になると逆に存在が明確すぎて薬を置くことができない」
猫猫「(…何やら複雑な事情が絡んでいるのだな。わけのわからない制度や法律が存在しているのかもしれない。一度決めた制度を覆すのはさらに面倒くさいのかもしれない。世の中にことなかれ主義の人間は多い)」 壬氏「これからのためにももっと違う形で医官を調達できればいいのだが…宦官がいなくともできるように」 猫猫「(宦官ねぇ…後宮内の宦官は全体の三分の一ほど。女官たちに比べて入れ替わりがないため平均年齢は高い。そして数年前、今の皇帝に代替わりした後、宦官となる手術は禁じられた。若い宦官はなかなかいないし、今後増えることもない。後宮に人材が枯渇するのは目に見えている。壬氏の年齢を考えるとちょっど禁止される前くらいに手術したのだろう。もう少し待っていれば…かわいそうに)」 猫猫「(あ、いけない。口に出したかな?)」
高順「壬氏さま、仕事がつかえますゆえ」 壬氏「わかった。そうだ、のちほど翡翠宮に向かうと伝えてくれ」 猫猫「わかりました」 猫猫「(生える薬作ったら儲かるかな)」 |
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