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KUSURIYA | |
原作(Original Story): 日向夏×ねこクラゲ 薬屋のひとりごと 第54話ネタバレ | |
第54話 選択の廟(後編) | |
単行本 | 第11巻 |
ビッグガンガン | 2022年 Vol.6 |
配信日 | 2022年5月25日 |
登場人物 | 猫猫(マオマオ) 壬氏(ジンシ) 皇帝 |
STORY | |
猫猫「あの廟の中、もう一度通ることはできませんか?」 老宦官「これまで廟に連れて来られた女性は公主や妃だった。さっきはお付きとしてだから連れて行ったけど、赤の他人が扉の選択に口を出すとなるとね。娘さんはその資格があるというのかい?」 皇帝「ならば妃に召し上げよう。羅漢の説得には骨が折れそうだが、それなら文句はないだろうか」 壬氏・猫猫「ご冗談を」
壬氏「ほかの妃たちの目が光ります」 皇帝「はっはっ、それはそうだ」 猫猫「(皇帝は胸の周囲が三尺近くないと食指が動かないではないか。翡翠宮にいるときとは少し違う気の緩み方をしてるみたいだ)」 皇帝「では、おまえが代わりに連れて行くといい」 壬氏「よろしいのでしょうか?」 皇帝「その娘は何かを確かめるようとしている。朕としてそれが何か気になるのでな」 老宦官「はぁ…主上がそうおっしゃるのであれば」 猫猫「(案内役でもない壬氏が皇帝の前に出るのも通過儀礼の廟で扉を選ぶのも本来なら非礼に当たるだろう。本当に妙に茶目っ気のある皇帝だ)」
壬氏「どれを選ぶ」 猫猫「青い扉を」 壬氏「次は?」 猫猫「白い扉を」 皇帝「朕の選んだ扉と違うわけか」 猫猫「(この部屋で十個目、初めて来る部屋だ)」 『汝 赤い扉を選べ』 壬氏「赤い扉がないぞ。どういうことだ?」 猫猫「(白と黒と緑の扉…ならば) 緑の扉をくぐればわかります」 壬氏「わかった」
壬氏「こ…これは」 老宦官「おめでとうございます。正しき道を選んだようですね。その昔王母に認められた者は新たな王となり、当時一番高い場所だったこの廟の屋上から演説をすることが仕事だったのです。誰もこの道を選ぶことができなかった時は正しき道を選ぶ妃を連れて再度この廟へやってきたということです。本来なら正しき血を受け継ぐ者がそれを成すわけですが、どうも違う者が当ててしまったようで」 猫猫「(挑発してきたのはそっちなのに、なんだこの爺)」
皇帝「それよりどういうことか朕に説明してもらえぬか」 老宦官「そちらの娘に聞いてはいかがかと」 皇帝「だそうだ」 猫猫「(言いにくいことだけ投げてきたな) では扉を選んだ基準をお話しします。最初の部屋に青赤緑の扉“赤い扉を通るな”という看板、そこでは青い扉を選びました。看板どおりなら緑の扉を選んでも問題ないはずです。しかしある種の方々はどちらが赤か緑か判別できなかったのです」 壬氏・皇帝「判別ではない?」 猫猫「ええ。判別できないからこそ確実に赤ではない扉を選んだ。次の部屋も同じです。黒と赤の見分けがつかなかった場合、白を選ぶでしょう。一見、どれも答えは二つあるように見えて本当の答えは一つだったということです」 壬氏「最後の扉も白と黒は確実に見分けられるから残りの緑を選んだということか」 猫猫「そういうことです。扉を緑色にしたのは最後まで着いた者なら赤と緑の区別がつかないとわかっていたのだと思います」 壬氏「…つまりどういうことだ?」
猫猫「この廟に選ばれし王母の子である証拠は色の識別ができないということです。この国では珍しいですが、西方では生まれつき赤と緑の見分けがつかない者が一定数生まれてくるそうです (親父いわく症状は女より男によく現れ、その数は西方の男で十人に一人。しかし生活に支障があっても次第に慣れていき案外周りからは気づかれないのだという) 建国の物語の王母は暗闇でも遠くを見通せる目を持っていましたね。調べたわけではありませんが、色の識別が困難な分、夜目が利くという話もあります。日常に困難な性質が親から伝わった際、優れた性質も受け継いでいる場合が多いんです。だからこそ王の選定にこの廟を作ったのではないでしょか (もし廟に選ばれる王がいない時は王母に近い西方の血を持つ妃を娶る必要がある。妃がこの廟に入れたのはその為だろう。昔話には王母は遠き地よりやってきた者とある。色彩判別が困難な特性を持ちながら従者とともに新たな地に移り住むのは難しかっただろう。物語では王母に夫はいないが、本当はこの地の長と婚姻したのではないだろうか…濃くなりすぎた血を薄めるために地域の長が外から来た者を娶ることは珍しくない。それなら男子継承となった理由が説明できる。しかし王母やその従者たちはそれをよしとしなかった。そこで地元の長を立てながら王母の血をつなぐ方法として作られたのがこの廟だ。従者たちは遠方の技術を生かし、世代を引き継ぎながら民たちの中心になっていく。その中で王母の物語を作り、語り継ぐことで事実を緩やかに曲げていった。それはとても平和で気の長い乗っ取りだった。と、さすがにそんなことまで言わないけれど)」
皇帝「結局、朕に王母の血は流れておらぬということか?母は帝の縁戚ではない生まれだった。祖母の女帝もだ」 猫猫「判別法としてこの廟の存在があるだけで、親にその傾向が見られても子どもに伝わらないことはあります (皇帝の母君が不貞を働いたのであれば話が違うだろうが、真偽は知りようもない) その血が濃すぎると体が弱くなる弊害もあります (流行病で死んだ先帝の兄弟たち以外にも近縁者の多くが病で倒れている) 廟に選ばれるため血筋を誇示しようとした結果かもしれません」
老宦官「ようもこんな小娘が本当に謎解きをするとは…王母がこの地を治められたのは、その類まれな聡明さがあったからこそと言われています」 猫猫「(そうでなければ自分の血を残すために廟を作ろうとなどと思わないだろう)」 老宦官「いっそ、このような者を取り込んでいくのはいかがでしょうか」 猫猫「(何を言っているのだ、あのくそ爺は)」 皇帝「それは面白いかもしれぬが羅漢を敵に回したくない。なにより胸周りがあと五寸足りぬな」 猫猫「(余計なお世話だ)」
老宦官「しかしそれを快く思わない連中も多いでしょう。お気を付けください」 皇帝「わかっておるよ」 老宦官「いえ主上のことはわかっております…お気を付けください」
猫猫「(こいつ何者なんだろう?ただの皇帝のお気に入りというわけでもなさそうだけど…ま、いっか…知らぬが仏というやつだ)」 『しかし後日それを後悔することになるとはこの時は知る由もないわけである』 |
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