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KUSURIYA | |
原作(Original Story): 日向夏×ねこクラゲ 薬屋のひとりごと 第72話ネタバレ | |
第72話 狐と狸の化かし合い | |
ビッグガンガン | 2024年 Vol.05 |
配信日 | 2024年4月25日 |
次号 | 2024年5月24日 |
単行本 | 第14巻 |
登場人物 | 猫猫(マオマオ) 壬氏(ジンシ) 高順(ガオシュン) 玉葉妃(ギョクヨウヒ) 阿多(アードゥオ) 羅漢(ラカン) 羅門(ルオメン) 紅娘(ホンニャン) 虞淵(グエン) 馬閃(バセン) 翠苓(スイレイ) 子翠(シスイ) 深緑(シェンリュ) |
STORY | |
翠苓「おまえのさっきの言葉で大体察しているぞ。その娘のおかげで私は死体になりそこねた」
猫猫「(震えた手に持っているのは毒針か?なんの毒だろう…いやそんな場合じゃないか。2対1はまずいな。窓から逃げるのも不可能だし叫ぶか?アルコールを目にかければ逃げ出せるだろうか…しかし問いただしいたいことはたくさんある。何故あんなことを?どうしてここに?)」 猫猫「ここで私は始末したところですぐ見つかりますよ。妃付の毒味役ですから (おやじも足取りを追うはずだ)」 翠苓「できれば穏便に済ませたい」 猫猫「左手の震えは蘇りの薬の後遺症でしょうか?」 翠苓「それがどうした?」 猫猫「(一度体を殺せば蘇ったとしても無事とは限らない。飲む本人もわかっていただろう。そうまでして帝すら出し抜いた理由はなんだ。どう切り抜ける?)」
翠苓「逃げ出す算段ならやめておくんだな。この娘がどうなってもいいのか?」 子翠「ごめん猫猫」 猫猫「(拳で解決できたら簡単だったのに) 何が目的ですか?」 翠苓「ここを一緒に出てもらいたいだけだ」 猫猫「はっ、後宮から?私を盾にして役に立ちはしないでしょう。宦官と偽って入ってきたそちらだって罪は免れない (そんなこともわからないほど浅はかだとは思わなかった)」 翠苓「いや、お前は絶対私についてくる。蘇りの秘薬の作り方を知りたくないか?」 皇弟「なんの御用でしょうか?」 馬閃「(宮内における東の狐と西の狸。これは軍部が東にあることから東の武官と西の文官の揶揄に使われる。老齢の獣は妖になるというが、こやつらもそうではないのか)」
馬閃「(東の狐は軍師の呼び名で知られた羅漢。古くから名門の出で権力は子昌に及ばないが、喧嘩を売ってはならない、暗黒の了解がある。西の狸こと子昌は茘(リー)の北部、子北州をおさめる長の子だ。実際は長の娘と結婚した娘婿といのが正しいだろう。さらに子昌は女帝に気に入られ、若輩の頃より周りから重きを置かれていた。女帝没後の今もでっぷりとした腹で宮内を闊歩している。どちらも何を考えているかわからない。好みで得手不得手を作るべきじゃないが、どうにもならないこともある。せめてここにいるのが本来の主人なら幾分緊張もおさまっていたかもしれない。元々主は人前で滅多に喋らないため声で違いはわからない。幼い頃の火傷を気にして外出時は覆面を欠かさないとされている。今日朝議に出たのもひと月ぶりで、それも席に座っただけだ。身代わりはばれてないと思うが)」
羅漢「いやはや珍しいかたがいらっしゃるので、せっかくですから茶でもどうかなと思いまして。軍議にはまだ時間がありますゆえ」 馬閃「(そちらが暇でもこちらが暇とは言っていない。この男にそんな気遣いなどないか)」 羅漢「せっかくなので子昌殿も一緒にと誘ったのです」 子昌「特に面白い茶飲み話はありませんがね」 馬閃「(食えない奴らだ。いずれこちらに害をなす人間か見極めなければならないが今日は断るしかないか)」 馬閃「(このまま話を聞けと…一体何を考えているんだ)」 馬閃「(毒味を省略できるようわざわざ銀杯を用意したと)」 羅漢「お先ににどうぞ」 馬閃「冷えていて美味だと申しております (なんだ軍師のあの顔…バレたわけじゃないよな)」
馬閃「(飛発(フェイファ)の設計図!?形状からおそらく先日の狩りの一件で使われたものだ。解体して図に起こしたのか。こんなところで堂々と出すなんて何を考えている?)」 羅漢「これは西方の最新型ではないかな…絵ではわかりづらいかもしれないが、ここに火打石がついていて従来のような火縄を使わずにすむわけだ。不発も少なく製造も案外簡単ときた」 子昌「それは大層なものですな」 羅漢「大量に作り上げたら今までとまったく違った編成ができるでしょうな。より密集した部隊を作っても問題なく、なおかつ移動しやすいのがいい。まっすぐ攻撃するだけだった駒に横の動きが加わればさぞ脅威になるでしょう。それなのに東宮のお命を狙うような不届き者が持つとは奇妙な話ですね」 馬閃「(この男、口が笑ったままだ。明らかに楽しんでいる)」 羅漢「この武器はどんな経路でやってきたのでしょう」 子昌「さあ、それを調べるのがそちらの役目でしょう」
羅漢「それが困ったもので、当部署の者が加減を間違えて所在を知る者が何も喋れなくなってしまいました。出所がわかればと思っておりまして」 馬閃「(皇族の暗殺を試みた者たちに権利はない。しかし口を割らせる拷問で加減を間違えるとは…そんなに仕事が下手なのだろうか)」 羅漢「何かそれらしい話を聞きたいことはないですかな」 子昌「そんなことわかればとうに報告しておるよ」 羅漢「はぁ…そうですか、残念だ。では本題に移りますか」 馬閃「(本題ではなかったのか)」
馬閃「こ…これは?」 羅漢「昨日、妻と打った碁の棋譜です♡研ぎ澄まされた刃物のような筋でね、打っている最中、何度ぞくぞくしたことか」 馬閃「(変人軍師が城の立つような水揚げ代で花街の女郎を見受けした話は有名だが、その関係が一般的なものでないことだけはわかる)」 羅漢「中盤でこの一手!まさかでしょう。首の皮一枚でなんとか避けたが、また次の一手が…」 馬閃「(狸もどう逃げ出そうか考えているようだ)」 子昌「話の腰を折るようで悪いが仕事があるので…馳走になった」 羅漢「それは残念。大変いい試合だったので後日棋譜の写しと実況を書いた冊子を届けさせましょう」 子昌「…いやそこまでは…」 羅漢「遠慮することはない子昌殿。前回の棋譜もつけておくのでしっかり見てもらいたい」 子昌「ああではまたの機会に」
羅漢「その時はぜひ玻璃の杯でこの美しい赤を堪能してほしいものですな」 馬閃「(…赤?)」 羅漢「あなたとは話が合いそうだ。妻の話などゆっくりしたい」 子昌「そうですな」 羅漢「だから思い直してもらいたいところだ」 馬閃「(何も言わなかったな)」 羅漢「珍しいだろ?緑色の葡萄の果実水(ジュース)なんて…叔父貴の言った通りだな。では百八十手の続きから」 馬閃「(続けるのか)」
馬閃「(はぁ…無性に疲れた)」 「少し髪を整えていいかな」 馬閃「どうぞ。見張っておりますのでもっとごゆるりと (履を底上げし綿で肩幅を上げ、ごくごく自然に皇弟の身代わりを演じたその人が、かつて四夫人の一人だったなど誰が信じるだろう。父と変わらぬ年齢だと知っているが、十は若い美丈夫に見える。あちらが狸と狐であれば、こちらは猟犬のような凛とした狗かもしれない)」 阿多「狐が変人すぎるせいか狸が普通に見えた。嫁には甘いようだが」 馬閃「娘にも甘いそうです」 阿多「それは…ばれたらどうなるだろうね」 壬氏「(“猫猫が帰ってきません” そのような内容の手紙が翡翠宮の侍女頭から届いたのは昨晩のことだった。普段なら朝までには帰ってきているあの娘なら一晩くらい平気だろうと思っていたと、その点は不自然ではない。実際、夜に遭遇したこともある。しかし宮に戻らないとは意外なことだ。猫猫は自分を過小評価するきらいはあるが、無断で主のそばを離れれば罰則があることもわかっているはずだ)」 壬氏「ご機嫌麗しゅう」 玉葉妃「そんなわけないわ。勝手に連れて行ったのかと思ったけど、その様子では貴方ではなさそうね」 壬氏「そんな不躾な真似したとありましたか?」 玉葉妃「また何か厄介ごとに首を突っこんだのかしら」 壬氏「(形式上、挨拶をしたが心中穏やかでないのはこちらも同じだ) 最後の足取りは?」 紅娘「一昨日の昼まではわかっています。灸に使うもぐさを取りに医局へ行き、そこで頼まれた養父の使いで手習い所へ行ったそうです。猫猫から後宮に掲示する健康の注意書きを依頼されたと手習い所の宦官も話していました。その後から全く消息がわかりません。一応心当たりは探して回ったのですが何も…何かに巻き込まれたとしか思えません」
壬氏「(猫猫が自分から消えたとは考えにくい。とすると帰るに帰れない状況か、帰れなくなっているか…最悪の場合…)」 玉葉妃「誰かの恨みを買ったとかないかしら?」 玉葉妃「いくら猫猫でも大勢で殴られたりしたらひとたまりもないわ」 高順「…確かにそうですが、道連れを作らず簡単に倒れるとは思えません」
壬氏「(そうだ。一方的にやられるほど柔ではない。何か思考を巡らせたはずだ。とにかく探しださなければ…どれだけ特別な待遇をしていても理由のない失踪は処罰の対象だ。線引きをしなければならない一線はある) もう一度足取りを洗い直そう」 |
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