乙骨憂太「辛そうですね、直哉さん」 禪院直哉「(見下ろすなや!なんやこれ?…毒!?赤血操術にそんな効果が…!?ちゃう!術式効果やない!あの血液量、アイツ人間ちゃうかったんや!受肉体か…!人外の血が入って肉体がそれを拒絶しとんのや!)」 乙骨憂太「治しましょうか?僕の反転術式、他人も治せますよ。その代わり、虎杖君の死はアナタの口からも上に報告して下さい」
虎杖倭助「仁」 虎杖仁「なんですか父さん。彼女の話をするなら帰りますよ」 虎杖倭助「仁…オマエがどう生きようとオマエの勝手だ。だが、あの女だけはやめとけ。死ぬぞ」 虎杖仁「悠仁の前で変な話はやめて下さい。案外覚えているようですよ、赤ん坊の頃の記憶」 虎杖倭助「オマエが子供を欲しがっていたことも、香織との間にそれが叶わなかったことも知ってる。だが、香織が死んだのは」 「お義父さん、なんの話ですか?」
虎杖悠仁「あれ?俺」 乙骨憂太「よ、よかった〜〜」 乙骨憂太「9月頃かな、五条先生がわざわざ会いに来てね、君のことを頼まれたんだ。それでやむを得ず芝居を打たせてもらった」 虎杖悠仁「芝居!?」 五条悟《ちょーっと嫌な予感がしてさ、僕になんかあったら今の一、二年のことを憂太に頼みたくて》 乙骨憂太《何かって…女性関係ですか?》 五条悟《…憂太も冗談言うようになったんだね》 乙骨憂太《いや五条先生に“何か”って想像もつかなくて》 五条悟《特に一年の虎杖悠仁。あの子は憂太と同じで一度秘匿死刑が決まった身だ。注意を払ってもらえると助かる。…ミゲルは?》 乙骨憂太《先生には会いたくないそうです》 五条悟《……》
乙骨憂太「他に執行人を立てられたり、虎杖君の情報を断たれるよりはこう立ち回るのがベストだと判断した。あっちも馬鹿じゃないから総監部とは執行人として認めてもらう代わりに、虎杖君を殺すっていう縛りを結んだんだ。だから一度殺した。本当にごめんね」 虎杖悠仁「いや、じゃあなんで俺は生きてんだ?」 乙骨憂太「反転術式だよ。君の心臓を止まると同時に反転術式で一気に治癒した。以前の君の話を聞いていたからいけると思って。僕が正のエネルギーをそのままアウトプットできることを知ってる人は少ないしね。そう…君の死を偽装するのはこれで二度目だ。すぐにバレるかもしれないけど状況が状況だしね。虎杖君の死刑はとりあえずは執行済で処理されるハズだ」 虎杖悠仁「…どうしてそこまでして」 乙骨憂太「僕が大切にしている人達が君を大切にしているからだよ。僕も一度身に余る大きな力を背負ったんだ。でも、背負わされたと思っていた力は僕自身が招いたモノだった。君とは違う。君の背負った力は君の力じゃない。君は悪くない」 虎杖悠仁「…違うんだ。俺のせいとかそういう問題じゃなくって俺は人を」
伏黒恵「虎杖」 虎杖悠仁「伏黒」 伏黒恵「何してんだ。さっさと高専戻るぞ。今高専の結界は緩んでる。直接顔を見られない限りオマエが戻っても問題ねぇ。一度先輩らと合流して」 虎杖悠仁「やめろ。当たり前のように受け入れるな。なかったことにするんじゃねぇ」 《まだ死ぬわけにはいかねぇんだわ》 乙骨憂太「(あぁは言っても虎杖君は迷っているんだろうな。自分が本当に存在していいのかどうか。だから、僕との戦闘で最後までボルテージが上がらなかった)」 虎杖悠仁「俺は人を殺した!俺のせいで大勢死んだんだぞ!」 伏黒恵「俺達のせいだ。オマエ独りで勝手に諦めるな」 虎杖悠仁「(そりゃオマエはそう言うさ)」
伏黒恵「フーッ、俺達は正義の味方じゃない。呪術師だ。俺達を本当の意味で裁ける人間はいない。だからこそ、俺達は存在意義を示し続けなきゃならない。もう俺達に自分のことを考えてる暇はねぇんだ。ただひたすらに人を助けるんだ。これはそもそも、オマエの行動原理だったハズだ」 虎杖悠仁「(違うんだ伏黒。それじゃオマエは俺が隣にいる限り、ずっと苦しむことになるんだぞ!)」 伏黒恵「まずは俺を助けろ、虎杖。加茂憲倫が仕組んだ呪術を与えられた者達の殺し合い“死滅回游”…死滅回游に津美紀も巻き込まれてる。頼む虎杖。オマエの力が必要だ」
死滅回游〈総則〉 1、泳者(プレイヤー)は術式覚醒後、十九日以内に任意の結界にて死滅回游への参加を宣誓しなければならない。 2、前項に違反した泳者からは術式を剥奪する。 3、非泳者は結界に侵入した時点で泳者となり、死滅回游への参加を宣誓したものと見做す。 4、泳者は他泳者の生命を絶つことで点を得る。 5、点とは管理者(ゲームマスター)によって泳者の生命に懸けられた価値を指し、原則術師5点、非術師1点とする。 6、泳者は自身に懸けられた点を除いた100得点を消費することで管理者と交渉し、死滅回游に総則を1つ追加できる。 7、管理者は死滅回游の永続に著しく障る場合を除き、前項によるルール追加を認めなければならない。 8、参加または点取得後、十九日以内に得点の変動が見られない場合、その泳者からは術式を剥奪する。 |