九十九由基「私には挨拶なしかい?天元」 天元「君は初対面じゃないだろう、九十九由基」
九十九由基「…何故薨星宮を閉じた」 天元「羂索に君が同調していることを警戒した。私には人の心までは分からないのでね」 九十九由基「羂索?」 天元「かつて加茂憲倫、今は夏油傑の肉体に宿っている術師だ」 九十九由基「慈悲の羂、救済の索か…皮肉にもなっていないね」 虎杖悠仁「天元様はなんでそんな感じなの?」 伏黒恵「(コイツよくこのタイミングで割って入れるな)」 天元「私は不死であって不老ではない。君も500年老いればこうなるよ」 虎杖悠仁「マジでか」 天元「12年前、星漿体との同化に失敗してから老化は加速し、私の個としての自我は消え、天地そのものが私の自我となったんだ」 九十九由基「(あの時星漿体がもう1人いたわけじゃなかったのか…) どうりで声が増えないわけだ」 伏黒恵「すみません」 乙骨憂太「僕たちはその羂索の目的と獄門疆の解き方を聞きに来ました。知っていることを話してもらえませんか?」 天元「勿論…と言いたいところだが、1つ条件を出させてもらう。乙骨憂太、九十九由基、呪胎九相図、3人の内2人はここに残り私の護衛をしてもらう」
乙骨憂太「護衛…?不死なんですよね」 禪院真希「封印とかを危惧してるんですか?」 九十九由基「フェアじゃないなぁ。護衛の期間も理由も明かさないのか?」 天元「…では、羂索について語ろうか。あの子の目的は日本全土を対象とした人類への進化の強制だ」 伏黒恵「それは聞きました。具体的に何をするつもりなんですか?羂索は何故あの時天元様の結界を利用し無為転変で日本の人間を全員術師にしなかったんですか?」 天元「それをやるには単純に呪力不足だ。うずまきで精製した呪力は術師に還元できない。術式で一人一人進化を促すのはあまりに効率が悪い。羂索が取る進化手段は、人類と天元の同化だ」 虎杖悠仁「あれ、でも同化って…なんだっけ…アレ…ホラ…」 伏黒恵「星漿体にしかできないハズだ」 天元「以前の私ならね。12年前に進化を始めた今の私なら、星漿体以外との同化もできなくもない」 脹相「だが、天元は一人だろう。どうやって複数の人間と同化するんだ?」 天元「今君達の目の前にいる私ですら私ではない。進化した私の魂は至る所に在る。言っただろう、天地そのものが私の自我なんだ。私と同化した人間は術師という壁すら超える。そこにいてそこにいない新しい存在の形さ。私には結界術があったから進化後もこうして形と理性を保てている。だが、もし人間が進化しその内の一人でも暴走を始めたら世界は終わりだ」
九十九由基「何故」 天元「個としての境界がないんだ。悪意の伝播は一瞬さ。一億人分の穢れが世界に溢れ出る。先の東京が世界で再現されるんだ」 虎杖悠仁「何のためにそんなことすんだよ」 天元「さぁね…これも言っただろう。私に人の心までは分からない」 禪院真希「でも、それって天元様が同化を拒否すればいいだけじゃないっスか?」 天元「そこが問題なんだ。進化を果たした今の私は、組成としては人間より呪霊に近い。私は呪霊操術の術式対象だ」 天元「羂索の術師としての実力を考慮すると、接触した時点で取り込まれるかもしれない。だから、私の本体は今、薨星宮で全てを拒絶している」 乙骨憂太「その上で護衛を?」 天元「あぁ、羂索は私に次ぐ結界術の使い手。薨星宮の封印もいつ解かれるか分からない」 九十九由基「何故今なんだ。星漿体との同化を阻止、天元を進化させ呪霊操術で取り込み操る。羂索は宿儺とも関わりがあるようだった。少なくとも千年術師をやっている。何故!今なんだ!」 天元「天元、星漿体そして六眼、これらは全て因果で繋がっている。羂索は過去に二度六眼の術師に敗れている。二度目の羂索は徹底していた。星漿体も六眼も全て生後一月以内に殺した。それでも同化当日に六眼と星漿体は現れた。その後、羂索は六眼を抹殺ではなく封印へと方針を変え、獄門疆の捜索を始めた。六眼持ちは同時に2人現れないからね。だが12年前、予期せぬ事が起こった。禪院甚爾の介入だ」
天元「天与呪縛によるフィジカルギフテッド、その中でも特異な完全に呪力から脱却した存在だ。呪縛の力で因果の外に出た人間が私達の運命を破壊してしまった。そして、そこには呪霊操術を持つ少年…意図せず獄門疆以外のピースが全て揃ったんだ。そして6年前、その獄門疆も羂索の手に渡った」 伏黒恵「じゃあ死滅回游は何のために行われるんですか?」 天元「同化前の慣らしだよ。星漿体以外との同化は不可能ではないが、現時点では高確率で不完全なモノと成るだろう。死滅回游はプレイヤーの呪力と結界と結界で結んだ境界を使ってこの国の人間を彼岸へと渡す儀式だ。それを慣らしとして私との同化を始めるつもりだろう。だが、これだけの儀式を成立させるために羂索自身も縛りを負っているハズだ。その一つとして死滅回游の管理者(ゲームマスター)は羂索ではない。だが、これは君達にとって不利に働くな。羂索を殺しても死滅回游は終わらないのだから。プレイヤーが全員死ぬか、プレイヤーが全員参加を拒否して死ぬか、それまで死滅回游は終わらない。死滅回游の総則(ルール)にある永続はあくまで儀式を中断させないための保険だよ」
伏黒恵「となると…」 『総則6、泳者は自身に懸けられた点を除いた100得点を消費することで管理者と交渉し、死滅回游に総則を1つ追加できる』 乙骨憂太「僕らも死滅回游に参加して津美紀さんやゲームに消極的な人が回游を抜けるルールを追加するしかない」 伏黒恵「五条先生の解放も並行しましょう。あの人がいれば一人で全て片が付く」 虎杖悠仁「天元様、おしえて」 天元「その前に誰が残るか決めてくれ」 九十九由基「私」 脹相「俺が残ろう。悠仁には乙骨かこの女の能力が必要不可欠だろう。加茂憲倫…羂索がここに天元を狙ってくるなら尚更だ。奴の命を断つことが弟達の救済だからな」 九十九由基「私はまだ天元と話し足りなくてね。いいかな?乙骨君」 乙骨憂太「はい!僕はもう皆と離れたくないので!」
天元「ありがとう。これが五条悟の解放、そのために必要な獄門疆・裏だ」 伏黒恵「裏?」 九十九由基「初耳だね」 虎杖悠仁「裏門ってこと?」 天元「そうなるね。羂索に見つかる前、獄門疆は私の結界の外…恐らく海外にあった。この裏門を封印することで表の気配を抑えていたんだが無駄だったね。この裏門の中にも五条悟は封印されている」
虎杖悠仁「え、じゃあこれを開ければ!?」 天元「いや、あくまで開門の権限は表の所有者、羂索のものだ。これを抉じ開けるには、あらゆる術式を強制解除する“天逆鉾”、あらゆる術式効果を乱し相殺する“黒縄”、このどちらかが必要だ。だが天逆鉾は12年前、五条悟が海外に封印したか破壊してしまった」 虎杖悠仁「何してんの先生」 天元「黒縄も去年五条悟が全て消してしまった」 伏黒恵「何してんだあの人は!」 乙骨憂太「黒縄の残りは僕がアフリカでミゲルさんと探してたんだけど」 伏黒恵「海外ってそれで行ってたんですね」 乙骨憂太「これに関しては無駄足だったね」 九十九由基「手はあるんだろ?」 天元「あぁ、死滅回游に参加しているプレイヤーの中に“天使”を名乗る千年前の術師がいる。彼女の術式は、あらゆる術式を消滅させる」
『死滅回游泳者 来栖華』 |