伏黒恵「術式を…消滅させる?」 天元「あぁ、天使の術式なら獄門疆「裏」を開けることができる」
伏黒恵「そいつは今どこにいるか分かりますか?」 天元「東京の東側の結界だ。回游の結界は私を拒絶しているからそれ以上の情報はない。まずはそこから整理しようか。全国10の結界、それが日本の人間を彼岸へと渡す境界を結ぶ結界と繋がっている」 《川や境界を跨ぐ彼岸へ渡る行為は呪術的に大きな意味を持つっス》 虎杖悠仁「あ、八十八橋の時の…これが、こうなるわけか」 九十九由基「北海道が入っていないのは呪術連の結界?」 天元「そうだ。あの地は既に巨大な霊場として慣らしが済んでいる」 虎杖悠仁「流石は試された大地」 天元「“彼岸へ渡す”と聞くと仰々しいが、日本にいる人間全員に呪いをかけて同化の前準備をしているのさ」 伏黒恵「儀式が終わるまでどのくらいかかりますか?」 天元「回游次第だが2月もあれば済むだろう」 《1、プレイヤーは術式覚醒後、十九日以内に任意の結界にて死滅回游への参加を宣誓しなければならない》 禪院真希「今11月9日の午前9時だ」 乙骨憂太「プレイヤーの術師が覚醒したのは10月31日24時頃」 伏黒恵「津美紀が回游に参加するまでの猶予はざっと10日と15時間」 《2、前項に違反したプレイヤーからは術式を剥奪する》 伏黒恵「天元様はさっき参加を拒否すれば死ぬと言ってましたよね」 天元「あぁ」
家入硝子《術式の剥奪かぁ…後追いで参加する術師にも適用されるルールだろ?だとしたら剥奪は“無為転変”で行われるわけじゃないと思う。使用禁止ではなく剥奪だから縛りでもない。となると、脳に無理矢理なにかしら作用するわけだからルール的にも剥奪されると死ぬと思うよ。じゃなきゃ皆参加拒否するだろうし》 禪院真希「硝子さんの読み通りだったか。逆に私みたいなのとか術式持ってない術師はノーリスクだよな。パンダはどうなんだ?アイツ脳とかあんのか?」 《3、非プレイヤーは結界に侵入した時点でプレイヤーとなり、死滅回游への参加を宣誓したものと見做す》 虎杖悠仁「これさぁ、始めから結界の中にいる一般の人らはどうなんの?」 天元「少なくとも1度は外に出る機会を与えられる」 虎杖悠仁「マジ?」 乙骨憂太「随分と親切ですね」 天元「総則に1つも結界の出入りに関する条項がない。プレイヤーに始め“結界から出る”という明確な目的を与えて、回游を活性化させる狙いだろう。プレイヤーを閉じ込めるにはプレイヤーが自ら望んで入ったという前提が重要だからね」 虎杖悠仁「猪野さんが言ってた結界の足し引きか」 《4、プレイヤーは他プレイヤーの生命を絶つことで点を得る》 《5、点とは管理者によってプレイヤーの生命に懸けられた価値を指し原則術師5点、非術師1点とする》
虎杖悠仁「総則の原則ってゴチャってすんな」 伏黒恵「………」 虎杖悠仁「伏黒?」 伏黒恵「いや…天元様、管理者(ゲームマスター)っていうのは」 天元「各プレイヤーに1体ずつ憑く式神、“コガネ”。コガネも正確に言えば管理者ではなく窓口だ。管理者は死滅回游のプログラムそのものと思ったほうがいい」 虎杖悠仁「?ナルホド?」 《6、プレイヤーは自身に懸けられた点を除いた100得点を消費することで管理者と交渉し、死滅回游に総則を1つ追加できる》 九十九由基「追加…か…既にあるルールを消すのはなしかな」 伏黒恵「遠回しに否定ならいけるかもしれませんね」 《7、管理者は死滅回游の永続に著しく障る場合を除き、前項によるルール追加を認めなければならない》 脹相「これアリか?」 禪院真希「だよなぁ。判断基準がアッチ任せ過ぎる」 天元「いや、ある程度は公平な判断が見込めるハズだ。既にプレイヤーにここまでの総則を強いているんだ。呪術的にこれ以上羂索に利益が偏ることはない」 《8、参加または点取得後、十九日以内に得点の変動が見られない場合、そのプレイヤーからは術式を剥奪する》 虎杖悠仁「また…人を殺さなきゃいけないのか」 伏黒恵「いや…いくつか考えがある」 禪院真希「とりあえず情報は整理できたな。あとはそれぞれの役割…由基さんと脹相はここに残って天元様の護衛、私はまず禪院家に戻って呪具の回収。悟が封印されて間もなく、高専忌庫の呪具は加茂家と禪院家が持ち出してスッカラカン。だが、恵が禪院家の当主になった」 虎杖悠仁「お!?」 伏黒恵「後で説明する」 禪院真希「おかげで禪院家の忌庫は漁り放題…でもその前に天元様」 天元「分かっている。組屋鞣造の工房だろう?」 禪院真希「助かります。用が済んだらパンダ捜して回游の平定に協力する。憂太は?」 乙骨憂太「僕は早速結界に入って回游に参加するよ。津美紀さんや伏黒君が回游に参加する前に少しでも情報を集めたい。まだ単独行動だけど…万が一身内で潰し合うことがないように…それから津美紀さんに何かあった時のために近場の結界は避けるね。結界で電波が断たれるかもしれないから暫く連絡取れないかも」
虎杖悠仁「あ」 乙骨憂太「あっ」 《もし次俺が宿儺と代わったら迷わず殺してくれ》 (乙骨が虎杖の近くにいたほうが伏黒は安全だけど、戦力的には乙骨は単独で動いたほうが効率がいいと思っている) 伏黒恵「言ってる場合か、大丈夫だ。そん時は俺が死んだ後、しっかり殺してもらえ」 虎杖悠仁「いや、そうならないためにさ?」 伏黒恵「先輩」 禪院真希「あぁ、オマエらは予定通り金次のとこ行け」 虎杖悠仁「金次?」 乙骨憂太「秤金次、停学中の3年生だよ」 禪院真希「今はとにかく人手が足んねぇ。なにがなんでも駆り出せ」 虎杖悠仁「その人強いの?」 乙骨憂太「ムラっ気があるけど、ノッてる時は僕より強いよ」 禪院真希「それはナイ」 虎杖悠仁「脹相!ありがとう、助かった」 脹相「…死ぬなよ」 九十九由基「泣いてんの?」
髙羽史彦「…あっ、あざっした」 「髙羽ァ!いつまでそないしとんねん!やめーやこっちまで辛気臭ぁなるわ!」 髙羽史彦「…うす」 「オマエいくつやったっけ?」 髙羽史彦「35っス」 「ほなもうやめてまえ。この業界遅咲きの奴。よー分からんキッカケで売れる奴ぎょうさんおる。でも、そいつらは急におもろなったわけやない。元々おもろかったけど埋もれてただけやねん。オマエはちゃうやろ。東京があぁなってん。悪いことは言わん。オマエにできる向いてることをせぇ」
ケン「俺は嫌いやなかったで髙羽のネタ」 髙羽史彦「ケンさん…」 ケン「アイツもオマエも勘違いしとる。おもろなくても売れる奴は売れんねん」 髙羽史彦「一発屋的な話っスか?」 ケン「ちゃうわ。ずっと売れ続けるやつには二種類おんねん。ずっとおもろい奴と、ずっと自分のことおもろいと勘違いできる奴や。オマエはどっちや」 髙羽史彦「五分だ五分だと言うけれど、本当は七三くらいが…」 『死滅回游泳者 髙羽史彦』 |