楽巌寺嘉伸「夜蛾、アレは何だ」 楽巌寺嘉伸「人工的な呪骸は他の操術より自立して行動することが可能だ。だが動力である呪力は術師から与えられたものを消費する。アレの呪力はアレのもので自己補完もできている。上は今、貴様を特級に認定し、無期限拘束を正式に下そうとしている。貴様がもしアレを意図的に造ったのであれば、容易に軍隊を所持できるわけだからの。答えろ夜蛾。貴様はアレの造り方を本当に知らんのだな」 夜蛾正道「…はい」
タケル「まさみち、みんな心配してるよ。元気がないって」 夜蛾正道「そうか」 タケル「だから僕言ってやったんだ。元気がなければ元気づければいいって」 夜蛾正道「そうか」 タケル「天才だろ」 夜蛾正道「そうだな」 夜蛾正道「タケル、すまないが暫く帰れない。皆にもそう伝えてくれ」 タケル「また出張?」 夜蛾正道「あぁ、長い出張だ。大丈夫。この森は天元様が守ってくれている。オマエのお母さんもまた会いにきてくれる。俺がいなくても大丈夫」
タケル「まさみち、まさみちがいないとさみしいぜ」 パンダ「…いいのか?日下部」 日下部篤也「俺が助けたって言うんじゃねーぞ。オマエが捕まってんのは夜蛾さんを誘い出すためだ。あの人には恩があんだよ」
夜蛾正道《本当にいいんだな。コイツはオマエの甥ではない。甥の情報を持った何かだ》 日下部篤也《いつまでも死人に拘ってちゃ未来を生きていけませんっちゅー話ですよね。でも、妹はもう過去が支えてくれなきゃ生きていけんのです》 タケル《まさみち、あの人、僕のお母さんじゃない?》 夜蛾正道《あぁ、よく分かったな》 タケル《へへへ、そうじゃないかと思ったぜ。天才だろ?》 《うぅ…ヴ~タケルゥ…タケルゥウ》 夜蛾正道《日下部、悪いが》 日下部篤也《分かってます。完全自立型の呪骸の存在は公にできない。妹と一緒には暮らせない》 夜蛾正道《すまん》 日下部篤也《何謝ってんですか。ありがとうございます、本当に》
「呪骸も連れずに何処へ行くのですか?夜蛾学長殿」 夜蛾正道「息子に会いに」 「死罪となったアナタが唯一助かる方法を教えましょう。完全自立型人工呪骸、その製造方法を今ここで明かせ」 夜蛾正道「悟がいなくなった途端に強気だな」 「強気にもなりますよ。こちらには歴戦の術師がついている」 夜蛾正道「楽巌寺…学長!」
「学長殿」 楽巌寺嘉伸「後は儂に任せて下がってよい」 「御意」 夜蛾正道「肉体の情報から魂の情報を複製するんです。その情報を呪骸の核に入力する。それだけでは駄目なんです。相性の良い三つの魂を宿した核を一つの呪骸に…お互いの魂を常に観測させるんですよ。そうすることで初めて魂が安定して自我が芽生える。生後3ヶ月を過ぎたあたりで呪力の自己補完を始めます」 楽巌寺嘉伸「何故…今更話した。何故もっとはやく、何故生き延びなんだ…!」 夜蛾正道「呪い…ですよ楽巌寺学長。私からアナタへの呪いです」
パンダ「まさみち…!」 楽巌寺嘉伸「何故戦わん。儂が憎くないのか」 パンダ「人間と一緒にすんな。パンダはそんなものには囚われん。アンタ、まさみちと仲悪くなかったもんな。どーせ上に命令されてやっただけだろ。俺にとっちゃアンタは落ちてるナイフみたいなもんさ。だが、これだけは覚えておけ。パンダだって泣くんだ」 |