禪院扇「刀身を折り、間合いを縮めたと判断し深く踏み込んだな。だから、オマエは駄目なのだ。私は剣士ではない。術師だ。出来損ないの物差しで私を測ろうなど笑止千万。何度でも言うぞ。私が前当主に選ばれなかったのはオマエ達のせいだ。兄の術式は歴史が浅く、相伝であるか否かはそこまで争点ではなかった。術師として唯一つを除いて兄に遅れをとったことはない。唯一、子供の出来のみ。子が親の足を引くなど、あってはならない」 禪院真依「知らないの?この国では足の引っ張り合いが美徳なのよ」
禪院扇「ここは訓練と懲罰に使われる部屋だ。2級以下の呪霊を無数に飼っている。今は私に怯えているが、じきオマエ達を喰いに這い出てくる。天与呪縛…フィジカルギフテッド、それが何だ。我々術師は日々鍛錬した肉体を更に呪力で強化して戦う。真希、オマエの力など皆手抜かりなく持っているのだ。さらば、我が人生の汚点」 禪院真依「流石しぶといわね。いつか…こうなるんじゃないかって思ってた」 禪院真依「最悪」
禪院真依「私の術式もう大体分かってるでしょ。でも、大きい物とか複雑な物は作れないのよ。あの人に斬られた傷もあるし、これ作ったら私死ぬから。じゃあね、後は一人で頑張んなさい」 禪院真希「!?おい!真依!待て!何言ってんだ。とにかく…戻ってこい」 禪院真依「私、随分前から分かってたのよ。何で呪術師にとって双子が凶兆か。何かを得るには何かを差し出さねばならない。これは縛りだけの話じゃないわ。痛い目みて強くなるのだって理屈は同じ。そういう利害がいちいち成立しないのよ、双子の場合ね。だって一卵性双生児は呪術では同一人物としてみなされるから…分かる?アンタは私で、私はアンタなの。アンタが血反吐いて努力して強くなりたいって願ったって意味ないのよ。私は強くなんてなりたくないから。アンタが術式持ってなくたって私が持ってちゃ意味ないのよ。私がいる限り真希、アンタは一生半端者なの」 禪院真希「分かったから…!戻れよ!」 禪院真依「これだけは置いてくわ。他は捨てなさい。呪力もなにもかも私が持っていってあげるから…一つだけ約束して。全部壊して。全部だからね、お姉ちゃん」
禪院真希「真依、起きて…真依、起きて」 禪院扇「(呪霊の消滅反応…!?何だ…?体が覚えている。忘れるよう努めたあの、恐怖)」
禪院扇「術式解放“焦眉之赳(しょうびのきゅう)” 」 禪院扇「いいだろう!今一度この手で骨の髄まで焼き尽くしてくれる!来い!出来損ない!」
禪院真希「真依、始めるよ」 |