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DEMON SLAYER |
原作(Original Story): 吾峠呼世晴(Koyoharu Gotōge) 鬼滅の刃 第177話ネタバレ |
第177話 弟 | |
配信日 | 2019年10月7日 |
ジャンプ | 2019年45号 |
登場人物 | 黒死牟 (継国巌勝) 継国縁壱 |
STORY | |
『人を妬まぬ者は運がいいだけだ。出会ったことがないだけだ。神々の寵愛を一身に受けた者に…全てを焼き尽くす程強烈な太陽の如き者に。私たちが生まれた時代、双子は跡目争いの原因になるため不吉とされていた。弟の縁壱には生まれつき不気味な痣もあり、父は弟を殺すと言った。けれどもそれを聞いた母が怒り狂い、手がつけられなくなったため、弟は殺されず十になったら寺へ行かせ出家させる手筈となった』
『私たち兄弟は部屋も着物も教育も食べ物さえ大きく差をつけて育てられた。そのせいか縁壱は母親離れができず、見るたびに母の左脇にぴたりとくっついていた。そんな縁壱を子供ながらに可哀想だと思った』 『縁壱に与えられた三畳の小さな部屋へ私は父の目を盗んで遊びに行った。自分の持ち物をやると父に気付かれるので笛を作って渡したが、縁壱は赤子の頃からにこりと笑うことすらなく、七つになるまで喋らなかったので耳が聞こえないのだと思われていた』
『違うとわかったのは七つになった頃、私が庭で素振りをしていると、縁壱は音もなく松の木の影に立っており、それだけでも内心肝を冷やしたものだ』 継国縁壱「兄上の夢はこの国で一番強い侍になることですか?」 『初めて口を利いたと思えば流暢に喋りかけられ息が止まる程驚いて私は木剣を取り落とした。それから突然、己も侍になると言い始めた。そもそも縁壱は十になったら寺へ追いやられる。侍でなく僧侶になると決まっているのだ。わかっているのかいないのか縁壱はこれもまた初めて顔を綻ばせ笑った。気味が悪かった』 『命を懸けて戦う侍は母親を見ればすぐしがみつきに行くような者がなれる筈もない。しかしそれ以後縁壱が稽古中、教えて欲しいとうろちょろするようになったので私に剣技を指南していた父の輩下が戯れに袋竹刀を持たせた。持ち方も構え方も口頭で軽く伝えただけだった。それだけで、さぁ打ち込んでみよと父の輩下は構えた』
『私がどれ程打ち込んでも一本取れなかった父の輩下は瞬きする間に縁壱から四発叩き込まれ失神した。七つの子供に打たれた首・胴・腹・足は骨こそ異常はなかったものの拳大に腫れ上がったそうだ。縁壱はその後、侍になりたいと言わなくなった。縁壱にとって人を打ちつける感触は耐え難く不快なものだったからだ。だが私は何としても縁壱の強さの秘密を知りたかった。食い下がって詰め寄ると、話をしている内に縁壱は不可解なことを言い出した』 継国縁壱「打ち込んでくる前に肺が大きく動く。骨の向きや筋肉の収縮、血の流れを良く見ればいい」 『縁壱には生き物の体が透けて見えるのだと理解するまで暫くかかった。生まれつきの痣と同じく生まれつきの特別な視覚。そしてそれに即応できる身体能力を持っている。今まで哀れんでいた者は己より遥かに優れていた』 継国縁壱「剣の話をするよりも俺は兄上と双六や凧揚げがしたいです」 『私は剣の道を極めたかった。剣の道は痛みと苦しみを伴うが、才覚を認められていた私は努力をすればするだけ力をつけた。しかしそれは亀の歩みに他ならない。類い稀なる神童の前では。望む者の下へ望む才が与えられればどんなに良いだろう。縁壱は剣の話をする時酷くつまらなそうだった。抜きん出た剣の才があろうと、爪の先程も嬉しくはなく、縁壱にとって剣の道は童遊び以下である』
『立場が逆転した。父の輩下の男は縁壱のことを報告しているはず。家を継ぐのは縁壱だ。私はあの三畳の部屋へ押し込まれ三年後、十になったら寺へ追われる。侍になる夢は叶わない』 継国縁壱「兄上」 継国巌勝「…何だ」 継国縁壱「母上が身罷られました」 継国巌勝「何だと?」 『寅一つ時に縁壱が来た。母の死は寝耳に水だった』 継国巌勝「何故突然そのような…何があった?」 継国縁壱「申し訳ありません。仔細は側務めの“いと”にお聞きください。俺はこのまま寺へ発ちます」 継国巌勝「発つ?今からか?」 継国縁壱「はい、別れの挨拶だけさせていただきたく…この笛を」 継国巌勝「笛?」 継国縁壱「いただいたこの笛を兄上だと思い、どれだけ離れていても挫けず日々精進致します」
『縁壱は外れた音しか鳴らないがらくたの笛を宝物のようにして布にくるんで懐にしまい込んだ。また笑っている。そんながらくた何がそれ程嬉しいのかわからない。気味が悪い。私は何も言葉を返さなかったが、縁壱は満足した様子で頭をさげた。そしてそのまま殆ど荷物も持たず、てくてくと何処かへ行ってしまった。母の日記によると、縁壱は己が後継ぎに据えられると気づき、予定より早く家を出ることにしたらしい。母の病も死期も縁壱はわかっていたようだ。母は何年も前から左半身が不自由になりつつあり、苦しんでいた。左半身…左…』
『縁壱は母にしがみついていたのではなく、病で弱っていた母を支えていたのだった。私はその時、嫉妬で全身が灼けつく音を聞いた。縁壱という天才を心の底から憎悪した』 | |
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