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KUSURIYA | |
原作(Original Story): 日向夏×ねこクラゲ 薬屋のひとりごと 第67話ネタバレ | |
第67話 踊る幽霊 | |
単行本 | 第13巻 |
ビッグガンガン | 2023年 Vol.12 |
配信日 | 2023年11月25日 |
登場人物 | 猫猫(マオマオ) 壬氏(ジンシ) 高順(ガオシュン) 里樹妃(リーシュヒ) 河南(カナン) |
STORY | |
『金剛宮』 猫猫「(高順が来るなら壬氏がわざわざ出張る必要は無かったのでは)」 河南「お待ちしておりました。ご案内いたします」
猫猫「(相変わらず天女のような振る舞いをしているが…高順がはどこまで知っているのだろうか…それとも高順も実は宦官ではないのだろうか…考えても仕方のないことだな。すごい野次馬の数だ)」 河南「こちらが湯殿です」 猫猫「(幽霊だろうと呪いで人は殺せない。人が死ぬときは原因がある。もしそれを呪いだというならば、気の病なるものだろう) 幽霊はどのあたりに?」 河南「こちらです。この窓から隣室を覗き込んだときでした」 里樹妃「部屋の奥で奇妙な人影が躍っていたの」
侍女「まだそんなことを言ってらっしゃるのですか?何かの見間違いでしょう?里樹さまはそうやって皆の気を引きたがるのですわ。大したことではありませんよ。なのにこんなに人を巻き込んで…それをいさめるのが本来侍女頭の務めと思いますのに」 猫猫「(あの偉そうな侍女が元侍女頭か…たかが毒見役にその座を奪われて日常的に嫌味を言いたくなるほど悔しいのだろう)」 侍女「そうは思われませんか?♡」 壬氏「そうですね。しかし妃の話を聞くのも私の務めです。その仕事を取らないでいただけますか?」 侍女「は…はい」 壬氏「ふぅ…少し喉が渇くな」 「では私が水を」 「いえ私が!」 「私が!」 「私よ!」 「私が!」
壬氏「さて里樹妃、詳しくお聞かせ願えませんか」 里樹妃「あれはいつも通りに湯浴みを終えたときでした。いつも侍女たちが熱いお湯を用意するからお湯の冷めた少し遅い時間に入るのが日課で、侍女たちは私のことをあまり好ましく思っていないし、尼寺にいた時からお風呂は一人で入っていたからここでもそうしていて、着替えだけ河南に…ええっと…侍女頭に手伝ってもらっていました。体を拭いている時、暑いと思って御簾を上げてみたんです。そしたら閉め切られていて風は通らないはずなのに、ゆらゆら揺れるものが見えたのです。それは帳を衣にしてゆらゆら踊る人影でぼんやりと浮かんだ太い顔はずっと私を見て微笑んでいたのですわ」
壬氏「誰か周りにいたというのは考えられませんか?」 里樹妃「近くにいた河南も同じ幽霊を見たのです」 河南「周りには誰もいませんでした。正体を確かめようと近づいてみたら幽霊はいきなり消えて帳も動かなくなって」 猫猫「(閉め切った窓と風通しのない部屋…しかし帳は揺れていた。窓の向こうに見えるのは隣室の白い壁。水晶宮や翡翠宮では湯殿の隣室は湯上りにのんびりできるくつろぎ空間を作っていたが…変な間取りだな)」
猫猫「向こうの部屋は以前から物置だったのですか?」 河南「いえ、前は物置ではありませんでした」 猫猫「ではどうして物置に?」 河南「…それはこちらをみていただければわかると思いますが」 猫猫「(ああなるほど…酷い黴だ。風呂場が近く湿気がこもりやすいのだろうが、こうなると擦ったくらいでは落ちないだろう。まあ、まめな掃除や黴の生えない工夫を金剛宮の侍女に求めるのは難しいだろうな。結果、物置にしてごまかしたと…黴どころか、もしかするとこの壁、土台から腐っているのかもしれない) こちらはそんなに古くない建物ですよね」 河南「はい。里樹さまが入内されたときに建てられました」 猫猫「(数年でここまでに?里樹妃はこの帳が揺れていたと言っていた)」
猫猫「…あった (湯舟の底にある湯を抜くための小さな穴、その先は後宮の水路へ繋がっているはずだ)」 猫猫「里樹さま、幽霊が出た日に間違えて風呂の栓を抜きませんでしたか?」 里樹妃「…ええ、うっかり間違えて」 猫猫「(やっぱり)」 猫猫「高順さま、この棚を動かすのを手伝っていただけますか」 高順「はい」 猫猫「(体重をかけると踏み抜きそうだ。壁と床の間に隙間ができている。ということは…) この下に水路が通っているか確認できませんか?」 高順「すぐに金剛宮の設計図を用意しましょう」
猫猫「やはり建物の壁を沿うように水路が通っていますね。温かい湯が流れた時の湯気がこの壁の腐敗を進めているのでしょう。そして腐敗した壁の隙間から湯気が漏れて帳が揺れてたのではないかと」 里樹妃「じゃああの丸い顔はなんだったのよ!」 猫猫「(あれか)」 里樹妃「あっ、それは…それは大事なものだから大切に扱ってくれる?」 猫猫「わかりました (綺麗な銅鏡だ。この黴だらけの部屋でまだ輝きを失っていない) これはいつからここに?」 里樹妃「以前よく使っていたの。特使の持って来た鏡が来てからこちらに置いているのだけど」 『特使の鏡は大きな玻璃製で銅鏡の何倍もよく映る。仕舞い込むのも仕方ない。それでも曇りやすい銅鏡がここまで綺麗に保たれているのは手入れをしているからだ』 猫猫「毎日磨かれているのですね」 里樹妃「ええ、母様が残してくれた鏡だから」 猫猫「久方ぶりに使われてみてはいかがでしょうか。明るいところで使うとより見やすいと思いますよ。こちらを向けるとよく映るやもしれません」
里樹妃「鏡に顔がある!?」 猫猫「(なるほど…こう映るのか)」 壬氏「これはどういうことだ?」 猫猫「魔鏡ではね。本物を見るのは初めてですが」 壬氏「魔鏡?」 猫猫「透光鑑(とうこうかん)と呼ばれることもある、跳ね返した光が絵や文字になる摩訶不思議な鏡です。作る際に表面に凸凹を作るようですが、かなりの技術が必要だと親父から聞いたことがあります」
里樹妃「この顔…死んだ母さまに似ている気がする。母さま鏡を替えちゃって怒ったのかなあ…だから出てきたのかなあ…踊るのが好きだったらしいの。私を産んだ後、体を壊して踊れなくなってそのまま死んじゃったから、幽霊になって踊ってたのかな」 猫猫「幽霊なんていませんよ。窓の隙間から入った月明かりが布の落ちていた鏡を照らして湯気で揺れていた帳の上に顔の像を作っただけです (って聞こえないか…鼻水を垂らして涙を流す姿に妃としての威厳はない。しかしそれが里樹妃らしいとも言える。本来ならもっとのびのびとしていい歳頃だ。母親の形見を毎日磨くことで後宮での日々を慰めていたのかもしれない。母親を想う気持ちはよくわからない。けれど里樹妃にとっては慕情を抱くに値する存在なのだろう)」
侍女「あの、お茶が用意できました♡ まあ里樹さま、何を泣いているのですか?皆さまの前で恥ずかしいですよ」 猫猫「(一見、妃を敬う侍女のような嗜め方だが、本性を端々で見ていると今更な猫かぶりだ。殿方の前以外で襤褸を出すのは三流の侍女と同じである。そういう女ほど相手の逆鱗に触れてしまう)」 侍女「あら、その鏡まだ持っていらしたのですか?せっかく特使さまにいただいた物があるのですからこれは誰かに下賜してはいかがでしょうか」
里樹妃「……して」 侍女「なんですか?」 里樹妃「返して!」 侍女「まあ!来客の前でなんてはしたない」 猫猫「(ここだけを切り取れば悪いのは癇癪を起した里樹妃に見える。しかし)」 |
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