薬屋のひとりごと | 第80話『事の始まり』ネタバレ | サンデーGX

KUSURIYA
原作(Original Story): 日向夏×倉田三ノ路
薬屋のひとりごと サンデー漫画 80話 巻頭カラー 壬氏 楼蘭妃 The Apothecary Diaries Chapter 80
薬屋のひとりごと〜猫猫の後宮謎解き手帳〜 第80話ネタバレ

薬屋のひとりごと 第80話

サブタイトル事の始まり
配信日2024年7月19日
サンデーGX2024年8月号
登場人物壬氏(ジンシ)
楼蘭(ロウラン)
子昌(シショウ)
神美(シェンメイ)
子翠/翠苓
先帝
女帝
安氏(アンシ)
大宝(タイホウ)

第80話 事の始まり

神美「私が質ってどういうこと、楼蘭…!」
楼蘭「これで邪魔は入りませんね。事の始まりは父さまと母さまの出逢いから」
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『父上子昌は、子(シ)一族の傍流の生まれでした。彼は傍流のままで終わらせるには惜しいほど聡明で、色の見分けがつかない“王母の眼”を持っていました。一族の者は彼を本家に迎えようと考えました。本家の娘の婿とすることで。その娘こそ、母様、神美(シェンメイ)でした』
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『しかしその頃、雲行きが怪しくなっていきます。女帝が子一族の稼業である奴隷交易をやめるよう圧力をかけてきたのです。子一族の当主であったおじいさまにこう迫りました。“娘を妃として後宮に入れろ”と』
子昌「神美、後宮に入るって…本当なのか」
神美「ええ、上級妃としてぜひにと文が」
子昌「君の父上は承知したのか。君は…いずれ私と…」
神美「その話は白紙ね。分からない?これは好機なのよ」
子昌「好機?」
神美「まだ主上には後継となる子がいない。今私が後宮に入り、子をなせば、皇后の座も夢ではないわ。こんな北の地の首長の妻で終わってたまるものですか」
子昌「そうか…君がそう望むなら」
『父様は一度は諦めました。しかし思いもよらないことが起こりました。それは先帝の幼女趣味。十六の母様より幼い、侍女の大宝(タイホウ)に手を出したことでした』
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神美「なんですって!?なぜお前が…私ですらまだ主上の通いがないというのに…なぜお前が!」
「おやめください神美さま!大宝は身ごもっております。主上が御子と認められたら…」
『大宝は女児を出産しましたが、先帝はそれを吾子(あこ)とは認めませんでした。いえ、体裁を気にした女帝が認めさせなかったのかもしれません。そのため女児は大宝と、当時、去勢せず後宮に入れた医官との子として追放され、大宝だけが後宮に留め置かれることになりました』
神美の父「大宝は後宮に残されたままか。大宝の娘はどうしてる」
子昌「医官とともに私のもとに匿っております」
神美の父「せめて娘ではなく男児であれば御子と認められただろうに。なんとも運のない」
子昌「神美からは何か便りはありましたか」
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神美の父「“なぜ私より幼い侍女の大宝が主上に気に入られ、私のもとには来ないのか。私のほうが血筋も貴く美しいはずなのに”……最近の娘からの書簡は、そんな恨み言ばかりだ。神美は己が質として後宮に入れられたことすら気づいておらん。一族の稼業が皇太后の不興を買わなければのう…」
『父様は考えました。神美が後宮に入れられたのは、奴隷交易を止める抑止力として使うため。女帝の信頼を得ない限り彼女は解放されない。しかしこのままでは彼女の精神はどんどん壊れてしまう。何かないか。子一族にとっても女帝にとっても益になる。そんな策が…』
子昌「あ、主上には、まだ御子がいない」
『主上はほかに兄弟もおらず、いまだ後を継ぐ男児もいない。女帝は焦っているはずだ。だったら』
女帝「後宮の拡大?」
子昌「はい。妃の数を増やすと共に、後宮内で働く女官や下女の数も増やすのです。主上により多くの花の中から選んでいただくために…そして、奴隷となるはずだった若い娘たちにとっては、新たな働き口となります。工事に関しても我々にお任せいただければ、この子昌、一族の不始末を身を賭して雪ぐ覚悟でおります」
女帝「ふむ。忘れるでないぞ、子昌。一族の娘がまだ我が手元にあることを」
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『父様が知恵を巡られている間にも、母様を追いつめる出来事が起こりました』
宦官「安氏さまが男児をご出産されました」
侍女「安氏さまが皇后になるわ」
侍女「まだ童女のような見た目をしてらっしゃるのに」
侍女「先に後宮に入っていながら通いのない方もいるのに」
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神美の父「皇后と東宮がきまったな。神美は後宮で相当荒れているようだ。予定通り、お前と結ばれておればこんなことには…」
『後宮の工事現場』
子昌「工事の具合はどうだ」
「つつがなく進んでおりますが…何か?」
子昌「一つ頼みがあるのだが」
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『神美の部屋』
子昌「開けてくれ、私だ」
神美「子昌…?一体どうやって」
子昌「抜け穴を作った。逃げないか私と」
神美「え…?」
子昌「君が望むなら…一緒に逃げよう」
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神美「後宮からの逃走は重罪よ」
子昌「分かっている。それを言うなら、抜け道を作った時点で重罪だ」
神美「なぜそんなことを」
子昌「君のためだ。やはり私は、君を諦められなかった…君以外の人を妻に迎えることもできず…また君に会いたいと抜け道まで作って」
神美「…いいの?私で」
子昌「もちろんだ。さあ」
神美「ふざけないで!この私に恥をかいたまま逃げろというの!?“侍女に先を越された上級妃”と言われたまま!」
子昌「違う!私は」
神美「帰って!負け犬のまま終われるものか!」
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『その後も、父様は母様のため働きました。地道に、女帝の機嫌を損ねぬように。先帝もまた、親身になってくれる父様のことを信用していました。追放した大宝の娘が気がかりで、父様の手引きで密かに会っていたそうです。そして母様が後宮に入って十九年後、子一族の長として重用されるようになっても、父様は妻帯することなく独り身を貫きました。それは母様を想ってのことでしたが、皮肉なことに、独り身の忠臣であることが、先帝にとっては理想の婿に思えたようで』
先帝「吾子を妻に迎え、一族の中で不自由ない暮らしをさせてやってくれ。子ができたなら、子一族の子として育ててくれ。そうしたら…お前の望みもかなえてやろう」
『そう言われて、父様は断れませんでした』
子昌「子翠と名づけました」
先帝「子翠か…子一族の娘にふさわしい名だ」
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子昌「主上…私の望みをかなえていただけるのですよね?でしたら、上級妃の神美を下賜していただけますか」
楼蘭「一族の子を冠した名がついた孫を見て先帝はようやく安心したようです。後宮の花をどうするか決定権を持つのは皇帝です。もう質をとる必要もない。…そうして、下賜されたのか母様なのです」
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神美「う…嘘よ…私が、質ですって…?…二十年よ。その二十年が、質のためだったというの!?」
楼蘭「母様も難儀ですよね。こんなことになるなら、最初から逃げ出していればよかったのに。抜け道まで作ってくれた男を信用できませんでしたか」
神美「あ、あんな男を信用できるわけないだろう!父様が倒れてすぐに家督を継ぎ、この女の母親をめとった男など!」
楼蘭「姉さま。失礼します。少し、お借りしますね。…先帝は罪悪感をお持ちだったようですね。追放され、身分も明かせない赤子にこんなものを託したのですから」
神美「鳳凰の簪…」
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楼蘭「ええ、母様もご存じでしょう?これを身につけられるのは、麒麟の意匠と同じく皇帝の血が流れている者に限られる」
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楼蘭「子翠と名づけられた姉さまは、結局皇帝の血を引いていることを他には知られなかった。先帝が認めた名すら、母様が奪ってしまったけれど」
壬氏「(先帝は愚かな男だ。手前勝手な頼みが子昌や娘たちの人生にどれだけ影響するかも考えずに)」
神美「でたらめを言わないで!」
楼蘭「でたらめですか?父様はずっと母様のためにやってきたのに。破滅しかない最期と分かっていたのに。ここに壬氏さまがいる理由も分からないのですか?父様の最期はいかがでしたか」
壬氏「…笑いながら逝ったよ」
神美「あの男は自分の権力が欲しかっただけ。私を娶ったのも当主としての座を誇示したかったのよ」
楼蘭「それでも一族の中で幅を利かせていたのは母様でしょう。母様に媚びを売る一族の者がどんな奴らだったか…連中が宮内で何をしていたか、ご存じでしたか?」
《私なら、もっと詳しくここ数年の流通を調べられます》
壬氏「それは国庫の横領の話をしているのか」
楼蘭「ええ、壬氏さまも気付かれていたのですね。横領を繰り返す愚かな一族の者は、母様に媚びておりました。宮中はともかく一族の中では母様が最も力を持っていましたから。苦言を呈すまともな者は追い出され、残るのは膿ばかり…父様はそれをあえて止めなかった。子一族の仕業と知られぬよう、工作することもできたでしょうに。父様は自ら国賊を演じることで子一族の膿もろとも破滅するつもりだったのですよ」
神美「そんな…お、お前はそれを知っていて…あの男と一緒に私を騙していたのか!?」
楼蘭「私は母様の言うとおりにやってきただけです。こんな国など滅びてしまえばいいと言っていたではないですか。甘言を吐く阿呆ばかりを囲って、そんな烏合の衆で禁軍に勝てると本気で思っていたのですか?」
神美「~~~楼蘭!そのためにこれを作らせたのではないか!これさえあれば…」
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楼蘭「母様の手には余ります、返してください」
神美「うるさい!……何がおかしい」
楼蘭「だって母様、まるで小物だもの」
神美「…楼蘭!」
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