宇髄天元「逃げろーッ!!」





竈門禰豆子「うー」
竈門炭治郎「禰豆子…」
竈門炭治郎「禰豆子が助けてくれたのか、ありがとう」
竈門炭治郎「(体が…動かない…いや…そもそもなんで動けるんだ?なんで俺は生きてる?毒を喰らったのに)」
我妻善逸「炭治郎ー!炭治郎ー!」
竈門炭治郎「善逸の声だ!うっ…」

我妻善逸「炭治郎ォ!!起きたら体中痛いよおおお!俺の両足これ折れてんの!?何なの!?」
我妻善逸「誰にやられたのコレ!痛いよおお!怖くて見れないい!」
竈門炭治郎「無事か!?よかった」
我妻善逸「無事じゃねえよ!」
我妻善逸「俺も可哀想だけど伊之助がやばいよォ、心臓の音がどんどん弱くなってるよォ」
竈門炭治郎「伊之助どこに!」
我妻善逸「あそこにいるよお、あそこ」
竈門炭治郎「伊之助!伊之助!しっかりしろ!」
竈門炭治郎「(心音が弱くなっていく…毒を何とかしないと!そうだ陽の光はどうだ?まだ夜は明けない。どうする!?どうする!?)」
竈門炭治郎「(しのぶさんに鴉を、いや遅すぎる!今何とかしなければ伊之助は死ぬ!何で俺は助かったんだ!何で俺だけ)」
竈門炭治郎「(毒で爛れた皮膚が治っていく!)」

嘴平伊之助「腹減った!なんか食わせろ」
竈門炭治郎「伊之助~~!!」
竈門炭治郎「うわああああ!よかった!よかった!」
嘴平伊之助「やめろ、気持ち悪ぃな」
須磨「いやあああ!死なないでえ!死なないでくださぁぁい、天元様あ!せっかく生き残ったのに!せっかく勝ったのに、やだあやだあ!」
須磨「鬼の毒なんてどうしたらいいんですか、解毒薬が効かないよオ!ひどいです神様!ひどい!」
宇髄天元「最期に言い残すことがある…俺は…今までの人生…」
須磨「天元様死なせたらアタシもう神様に手を合わせません!絶対に許さないですからあ!!」
まきを「ちょっと黙んなさいよ!!天元様が喋ってるでしょうがぁ!!」
まきを「口に石詰めてやるこのバカ女ぁ!」
雛鶴「どっちも静かにしてよ!」
宇髄天元「(嘘だろ…何も言い残せずに死ぬのか俺…毒で舌も回らなくなってきたんだが…どうしてくれんだ…言い残せる余裕あったのに…マジかよ)」



須磨「わあー!!何するんですか!?誰ですかあなた!?い…いくらなんでも早いです火葬が!まだ死んでないのに!もう焼くなんて!お尻をたたきます!お姉さんは怒りました!」
宇髄天元「ちょっと待て。こりゃ一体どういうことだ?」
宇髄天元「毒が消えた」
まきを・須磨・雛鶴「天元様~~!!」
宇髄天元「お前ら…心配かけたな」
竈門炭治郎「禰豆子の血鬼術が毒を燃やして飛ばしたんだと思います。俺にもよくわからないのですが…傷は治らないのでもう動かないでください。御無事で良かったです」
宇髄天元「こんなこと有り得るのかよ…混乱するぜ…いやいや、お前も動くなよ、死ぬぞ」
竈門炭治郎「俺は鬼の頚を探します。確認するまではまだ安心できない」
竈門炭治郎「禰豆子、向こうだ。鬼の血の匂いがする」

竈門炭治郎「(よし、もう攻撃してこない)」
「ニャーゴ」
竈門炭治郎「珠世さんの所へ」
竈門炭治郎「頼んだぞ」

竈門炭治郎「禰豆子こっちに!こっちに行ってくれ (鬼の匂いが強くなってきた)」
妓夫太郎「あんな雑魚二人なんかに頚斬られてんじゃねぇよ!」
堕姫「ちゃんと見てたんじゃない!何で助けてくれなかったの!?」
妓夫太郎「俺は柱を相手にしてたんだぞ!」
堕姫「だから何よ!何でトドメを刺しとかなかったのよ!頭カチ割っとけばよかったのに!」
妓夫太郎「行こうとしてた!」
妓夫太郎「耳に飾りをつけたガキが生きてたから先に始末しようと思ったんだ!そもそもお前は何もしてなかったんだから柱にトドメくらい刺しておけよ!」
堕姫「じゃあそういうふうに操作すればよかったじゃないアタシを!それなのに何もしなかった!油断した!」
妓夫太郎「うるせぇんだよ!」
竈門炭治郎「(まだ生きてる。しかも言い争ってるぞ。だけど少しずつ肉体が崩れていってるな)」
堕姫「アンタみたいに醜い奴が…アタシの兄妹なわけないわ」
堕姫「アンタなんかとはきっと血も繋がってないわよ!だって全然似てないもの!」
堕姫「この役立たず!強いことしかいい所が無いのに!何も無いのに!負けたらもう何の価値もないわ!出来損ないの醜い奴よ!」
妓夫太郎「ふざけんじゃねぇぞ!お前一人だったらとっくに死んでる!どれだけ俺に助けられた!出来損ないはお前だろうが、弱くて何の取り柄も無い…お前みたいな奴を今まで庇ってきたことが心底悔やまれるぜ」
妓夫太郎「お前さえいなけりゃ俺の人生はもっと違ってた!お前さえいなけりゃなあ!」
妓夫太郎「何で俺がお前の尻拭いばっかりしなきゃならねえんだ!」
妓夫太郎「お前なんか生まれてこなけりゃ良かっ」
竈門炭治郎「嘘だよ」

竈門炭治郎「本当はそんなこと思ってないよ。全部嘘だよ。仲良くしよう。この世でたった二人の兄妹なんだから」
竈門炭治郎「君たちのしたことは誰も許してくれない。殺してきたたくさんの人に恨まれ憎まれて罵倒される」
竈門炭治郎「味方してくれる人なんていない。だからせめて二人だけはお互いを罵り合ったら駄目だ」
堕姫「うわああああん!うるさいんだよォ!アタシたちに説教すんじゃないわよ糞ガキが!向こう行けぇ!どっか行けぇ!悔しいよう、悔しいよう、何とかしてよォ、お兄ちゃあん、死にたくないよォ、お兄ちゃあん、お兄っ…」
妓夫太郎「梅!」
妓夫太郎「(そうだ。俺の妹の名前は梅だった。堕姫じゃねえ。酷い名前だ)」
妓夫太郎「(いや梅も酷かったなあ、お前の名前は死んだ母親の病名からつけられたんだからなあ。羅生門河岸、遊郭の最下層で生まれた俺たち。子供なんて生きているだけで飯代がかかるので迷惑千万)」
妓夫太郎「(生まれてくる前に何度も殺されそうになり、生まれてからも邪魔でしかなく何度も殺されそうになり、それでも俺は生き延びた)」
妓夫太郎「(枯れ枝のような弱い体だったが必死で生きていた。虫けら、ボンクラ、のろまの腑抜け、役立たず)」
妓夫太郎「(醜い声や容貌を嘲られ、汚いと言って石を投げられた)」
妓夫太郎「(この世にある罵詈雑言は全て俺のために作られたようだった。俺は醜かったし汚かった。いつも垢まみれ、フケまみれ、蚤がついた酷い臭いで)」
妓夫太郎「(美貌が全ての価値基準である遊郭では殊更忌み嫌われた。怪物のように)」
妓夫太郎「(腹が減ったら鼠や虫を食っていた)」
妓夫太郎「(遊び道具は客が忘れて帰った鎌だった)」
妓夫太郎「(俺の中で何かが変わり始めたのは梅が生まれてからだ)」
妓夫太郎「(梅)」
妓夫太郎「(お前は俺の自慢だったなあ)」
妓夫太郎「(年端もいかない頃から大人がたじろぐほど綺麗な顔をしていた)」
妓夫太郎「(俺は自分が喧嘩に強いと気づいて取り立ての仕事を始めた)」
妓夫太郎「(誰もが俺を気味悪がって恐れた。気分が良かった。自分の醜さが誇らしくなり)」
妓夫太郎「(お前のように美しい妹がいることは俺の劣等感を吹き飛ばしてくれた)」
妓夫太郎「(これから俺たちの人生は良い方へ加速して回っていくような気がした)」
妓夫太郎「(梅が十三になるまでは)」
妓夫太郎「(客の侍の目玉を簪で突いて失明させたので、その報復として梅は縛り上げられ生きたまま焼かれた)」
妓夫太郎「(俺はいなかった。仕事から戻ったらお前は丸焦げになっていた)」
妓夫太郎「わあああああ!やめろやめろやめろ!俺から取り立てるな!何も与えなかったくせに取り立てやがるのか!許さねえ!許さねえ!元に戻せ俺の妹を!でなけりゃ神も仏もみんな殺してやる!」

「こいつで間違いないか?」
「はい。そうでございます。感謝致します。厄介払いができて良かった」

「本当に凶暴でねぇ、取り立て先で大怪我させたり最近ではもう歯止めが効かなくて…梅のことは残念でしたけど、可愛い子を見つけたらまた紹介しますので、あの、お金の方を…」
「まぁ待て、止めを刺してからだ」
妓夫太郎「お前いい着物だなあ、清潔で肌艶もいい、たらふく飯を食って綺麗な布団で寝てんだな、生まれた時からそうなんだろう、雨風凌げる家で暮らして、いいなあ、いいいなああああ」
妓夫太郎「そんな奴が目玉一個失くしたぐらいでギャアギャアピーピーと」

妓夫太郎「騒ぐんじゃねえ」
妓夫太郎「(誰も助けちゃくれない。いつものことだ。いつも通りの俺たちの日常。いつだって助けてくれる人間はいなかった)」
妓夫太郎「(雪が降り始めた。どんな時だって全てが俺たちに対して容赦をしなかった。どうしてだ?禍福は糾える縄の如しだろ!いいことも悪いこともかわるがわる来いよ)」
童磨「どうしたどうした?可哀想に」
童磨「俺は優しいから放っておけないぜ。その娘、間もなく死ぬだろう。お前らに血をやるよ。二人共だ。あの方に選ばれれば鬼となる」
童磨「命というのは尊いものだ。大切にしなければ」
童磨「さぁ、お前らは鬼となり俺のように十二鬼月、上弦へ上がって来れるかな?」

妓夫太郎「(鬼になったことに後悔はねぇ)」
妓夫太郎「(俺は何度生まれ変わっても必ず鬼になる。幸せそうな他人を許さない。必ず奪って取り立てる妓夫太郎になる)」
妓夫太郎「(ただ…もし唯一心残りがあるとするならば…梅…お前は俺と違ったんじゃないかってことだ。もっといい店にいたなら真っ当な花魁に)」
妓夫太郎「(普通の親元に生まれていたなら普通の娘に)」
妓夫太郎「(良家に生まれていたなら上品な娘になっていたんじゃないか)」
妓夫太郎「(染まりやすい素直な性格のお前だ。俺が育てたためにお前はこうなっただけで)」
妓夫太郎「(奪われる前に奪え、取り立てろと俺が教えたからお前は侍の目玉を突いたが、従順にしていれば何か違う道があったかもしれない)」

妓夫太郎「(俺の唯一の心残りは…お前だったなあ)」
妓夫太郎「なんだ?ここは…地獄か?」
堕姫「お兄ちゃあん!やだ!ここ嫌い!どこなの?出たいよ、何とかして!」
妓夫太郎「お前…その姿…」
堕姫「そっちが出口?」
妓夫太郎「お前はもう俺についてくるんじゃねえ」
堕姫「なっ、なんで?待ってよ、アタシ」
妓夫太郎「ついて来んじゃねえ!!」
堕姫「さっきのこと怒ったの?謝るから許してよ!お兄ちゃんのこと醜いなんて思ってないよォ!悔しかったの!負けて悔しかったの!アタシのせいで負けたって認めたくなかったの!」
堕姫「ごめんなさい!うまく立ち回れなくってアタシがもっとちゃんと役に立ってたら負けなかったのにいつも足引っ張ってごめんなさい!ねぇお兄ちゃん!」
妓夫太郎「お前とはもう兄妹でも何でもない」
妓夫太郎「俺はこっちに行くからお前は反対の方、明るい方へ行け」

妓夫太郎「おい!」
堕姫「嫌だ嫌だ!」
堕姫「離れない!絶対離れないから…ずっと一緒にいるんだから…何回生まれ変わってもアタシはお兄ちゃんの妹になる!絶対に!」
堕姫「アタシを嫌わないで、叱らないで、一人にしないで、置いてったら許さないわよ」
堕姫「わぁぁあん!ずっと一緒にいるんだもん!ひどい!ひどい!約束したの覚えてないの!?」
堕姫「忘れちゃったのォ!?」
妓夫太郎「俺たち二人なら最強だ。寒いのも腹ペコなのも全然へっちゃら。約束する。ずっと一緒だ。絶対離れない。ほらもう何も怖くないだろ?」
竈門炭治郎「仲直りできたかな?」
竈門禰豆子「ん!」


伊黒小芭内「ふぅんそうか、ふぅん、陸ね」
伊黒小芭内「一番下だ、上弦の、陸とはいえ上弦を倒したわけだ、実にめでたいことだな、陸だがな」
伊黒小芭内「褒めてやってもいい」
宇髄天元「いや…お前から褒められても別に…」
須磨「そうですよ!」
まきを「ずいぶん遅かったですね」
須磨「お…お…遅いんですよ!そもそも来るのが!おっそいの!」

須磨「キャーッ!こえー!!」
伊黒小芭内「左手と左目を失ってどうするつもりだ?たかが上弦の陸との戦いで、復帰までどれだけかかる?その間の穴埋めは誰がするんだ」
宇髄天元「俺は引退する。さすがにもう戦えねぇよ。お館様も許してくださるだろう」
伊黒小芭内「ふざけるなよ。俺は許さない。ただでさえ若手が育たず死にすぎるから、柱は煉獄が抜けた後空席のまま、お前程度でもいないよりはマシだ。死ぬまで戦え」

宇髄天元「いいや、若手は育ってるぜ、確実に、お前の大嫌いな若手がな」

伊黒小芭内「おいまさか…」
伊黒小芭内「生き残ったのか?」
伊黒小芭内「この戦いで…竈門炭治郎が」
産屋敷耀哉「そうか倒したか!上弦を!よくやった天元!炭治郎!禰豆子!善逸!伊之助!」
産屋敷耀哉「ゴホッゴホッ」
産屋敷あまね「耀哉様」
産屋敷耀哉「百年、百年もの間変わらなかった状況が今変わった」
産屋敷耀哉「あまね…ゴホッゴホッ…わかるか?これは兆しだ。運命が大きく変わり始める。この波紋は広がってゆくだろう」
産屋敷耀哉「周囲を巻き込んで大きく揺らし、やがてはあの男の元へ届く」
産屋敷耀哉「鬼舞辻無惨、お前は必ず私たちが私たちの代で倒す!我が一族唯一の汚点であるお前は」
産屋敷耀哉「ゴホッゴホッ」
産屋敷あまね「お前達湯を沸かしなさい。それから薬と手拭いを。早く!」

猗窩座「(異空間…無限城…)」
猗窩座「(ここに呼ばれたということは…)」

猗窩座「(上弦が鬼狩りにやられた!?)」
宇髄天元「ああくっそ!いってぇなあ」
須磨「でも…よかったです…天元様」
まきを「本当…生きていてくれて」
雛鶴「四人…欠けることなく帰れますね」
竈門炭治郎「みんな…生きててよかった…」