運命「D2の気配は感じられません」
アンナ「コゼットがそう言うなら大丈夫ね。今日はゆっくり買い物ができそう」
運命「冗談です。マエストロのことですから音楽の話でしょう」
朝雛タクト「お前…まさか僕の言いたいことを理解したうえでふざけた冗談まで入れてきたのか?会話のキャッチボールか?いつの間にそんな芸当を覚えたんだ?」
運命「私は日々成長してるのです。毎日毎日音楽音楽とそれ以外なんの進歩もないマエストロとは根本的に違います」
朝雛タクト「僕はお前の成長がねじ曲がった方向にいかないか心配してやってるんだ。ポンコツのうえに言動まで残念になったら救いようがないじゃないか」
運命「つまりマエストロは音楽以外はすべて残念である事実は認めると」
アンナ「じゃあ私達は買い出しに行くけど…来るわけないか」
運命「マエストロは荷物持ちもちゃんとできませんからね」
朝雛タクト「だそうだ」
アンナ「その辺にしといてあげて」
運命「はい。お姉ちゃん」
アンナ「あんたもおとなしくしててよ。勝手にどっか行かないでね」
朝雛タクト「僕はガキか?」
朝雛タクト「ん…はぁ~」
朝雛タクト「どこまで行ったんだあいつら?」
朝雛タクト「ん?」
バーテン「坊主、意外なとこにいくな」
バーテン「ケンジ・アサヒナか。リクエストならワンドリンクで受け付けるぜ」
バーテン「普段はジャズが多いんだけどな。クラシックだって嫌いじゃないぜ」
バーテン「ケンの指揮は特にいいな。肩ひじ張らずにスーッと入ってくる感じがよ」
バーテン「どうした?」
朝雛タクト「いや、少し意外だった。アサヒナの名前は嫌われてると思ってた。特に音楽を好きな人間には」
バーテン「ボストンの惨劇か」
朝雛タクト「音楽を愛する人間にとっては迷惑この上なかったはずだ。こっそり聴くことすら許されない空気になって」
バーテン「俺達はこっそりと聴いてたけどな。ここでずーっと」
バーテン「音楽は人の心を照らす光ってな」
バーテン「知ってるか?ケンはこの街にも来たことあるんだぜ。Rhapsody in Blue!最高だった!ホールの天井がぶっ壊れんじゃねえかって拍手と歓声がいつまでも鳴りやまなくてよ!」
バーテン「ま、今はもうそのホールも跡形もなくなっちまったが、あの日の思いが消えることはねぇ。音楽には人の思いがある!築いてきた歴史がある!人生そのものだ!」
バーテン「音楽を聴いている間、俺達はその全てと繋がりひとつになれる!」
バーテン「ケンはそれを命懸けで伝えてくれた最高のマエストロだ!」
「はははは!いつもの奴が始まったぞ」
「子供相手に熱くなりおって」
「悪い癖だ」
「ははは!そうそう!ここでわしらの仲間入りじゃ」
バーテン「よく言うぜ!こっちはもういい加減帰れっつってんのに毎晩夜中までずるずるクダ巻いてやがるくせに!」
「しかたない、こうなったら兄ちゃんも一蓮托生、ここに骨をうずめてもらうとするか」
バーテン「朝雛ジュニアが弾いてくれるんならピアノも本望だろう、なっ!」
朝雛タクト「ここに調律の道具はあるか?」
バーテン「そこにいるジョーはチューバ奏者だったんだ。ケンの公演にも参加したことがあるってのが自慢でさ」
ジョー「昔の話だ」
バーテン「せっかくジュニアが来てくれたんだ。話してやれよ。古きよき黄金時代の思い出って奴をよ。酒もあるぞ」
バーテン「ラプソディ・イン・ブルーな」
ジョー「マエストロはピアノを弾き振りして俺はいちばん奥。端っこから彼を見てた」
ジョー「夢みたいな時間だった。マエストロは練習の時もずっと思いをまっすぐ伝えてくれてな」
バーテン「ルースターケンジ・アサヒナここにありって感じだな!熱いんだよな!ケンの音楽はさ!一直線な音楽バカそのものでいやだからそこが俺としてはさ…!」
朝雛タクト「わかったから、あんたは落ち着け」
バーテン「お前はクールだな、おやじさんと違って」
朝雛タクト「これが僕のスタイルなんだ」
ジョー「マエストロとやれて、プレーヤーの道を選んで最高だった。俺の人生は素晴らしいものだと、この瞬間のためにあったんだと、そう思ってた」
運命「私はマエストロのピアノが好きです」
アンナ「フフッ 私もよ」
運命「ブラウンさんのジャムはとてもとても甘くておいしいです」
アンナ「よかったね」
アンナ「でも私の分もちょっとは残しておいてね」
運命「あっ、はい、善処します、一応、できるだけ」
ジョー「今日のピアノのお礼だ。こんなものしかなくてすまないが」
天国「そちらで地獄からの報告はすべてとなります」
ザーガン「生きていた!ケンジ・アサヒナの息子が!」
ザーガン「しかもコンダクターとして覚醒を遂げて。あの悲劇の中でよくぞ生き抜いてくれたものだ。これこそ天の采配と言うべきだな」
天国「シントラー首席指揮官より本件についての対応策が提言されておりますが」




